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Illusion sand ある未来の物語 27.5 後編




肌を辿る唇と舌の感触が心地良い。
腰を掴む彼の手に触れて、緩く指を絡めると、彼の口に臍の下を吸われてしまった。
快感よりもくすぐったさを感じて、つい声を出さずに笑うと、その隙をつくように歯を立てられる。
硬い歯に皮膚を挟まれながら湿った舌にじっとりと舐め上げられる感触に、の口からは小さな声が漏れ、下の滑りがじわりと増した。

半月か、それ以上ぶりに触れるからか、の体は素直に反応し、教え込まれた感覚を求めていると内側から雫を溢れさせて教える。
彼の手が腰から尻の横をなぞり、腿の裏を持ち上げると、湿った音と共に彼女の中心が灯りに晒される。
まだそこに触れてもいないというのに、上の先から下まで濡らしている彼女の体に、セフィロスは微かに口の端を上げた。

これまで、何度も指を差し入れて少しずつ感覚を開いてきたからか、未だに男を受け入れていないにも関わらず、彼女のそこは薄く口を開いて入り口を見せている。
そのまま入り込みたくなる自分を抑え、彼女と絡めた指を解いたセフィロスは、糸を引きそうな程に濡れた彼女の先端に触れた。


「っぁ……待っ…」
「……待たない。好きだろう?」

「好っ……き、ですっ、けど……んぁっ……いきなり……っは……あぁっ」
「いきなりでもない。だが、今日はいつもより敏感だな」


親指の腹で先端をそっと押されただけで、の体は快感に跳ねた。
今日は大分焦らせてしまったし、もう達したのかと驚いたセフィロスだったが、の中心は口を閉じてはおらず、彼女の乱れた息と共に僅かに動くだけだ。
これで達してしまうなら、自分がの中に入り込む頃には泣かせているところだったと、彼は密かに安堵する。
けれど、触れただけで体を跳ねるのなら、どちらにしろ最終的に泣かせるかもしれないと思って、今のうちに心中で謝っておいた。

後から後から零れてくるぬるつきを指に絡め、セフィロスはの中心と周りを指の腹でなぞる。
それだけで、彼女は言葉を詰まらせて声を上げ、時折不意を突くように中に潜む芯を押せば腰を跳ねて嬌声を上げた。

本人はまだ認めたがらないが、は少し乱暴な方が悦ぶ。
このまま彼女の中に押し入ってしまいたくなって、セフィロスは気を紛らわせようと彼女の腿に歯を立てる。
その刺激に、が恍惚とした目で声を震わせたので、彼は逆効果だったかと反省すると歯形がついた脚を軽く吸って離した。


「っん……あの、セフィロスっ……っぁ……」
「どうした?もっと強くした方が良いか?」

「ぁあっ……はい、そ、れっ……良いです、あんっ……あの、そうでなく……待って、くださっ……」
「……どうした?」


いつもはされるが儘、言われるままに色々されたり、したりしてくれるに止められ、セフィロスは彼女の中心を弄んでいた指の動きを止める。
息を乱しながら大きく息を吐いたは、紅潮した頬を手の甲で押さえながら、既に先端が濡れている彼の下半身にちらりと目をやった。


「今日は、私は、何かしなくて良いんですか?さきほどから、貴方にばかり触れてもらっていて、私は何もしていないのですが……」
「そういう事か……。心配しなくても、後で……できなければ、今度頼む。気にするな」

「ですが……」
「俺も、失敗せずにお前を抱きたい。今お前に触られたら、上手くいかなくなりそうだ。だから、心配するな」

「わかりました。ですが、貴方も、あまり無理はしないで下さい。その……少し、辛いように見えますし……」
「ああ。わかった」


恥ずかしさから視線を泳がせながら話すに、セフィロスは小さく笑みを零して返す。
会話しながら、さりげなく閉じられた脚を笑顔で割り開いたセフィロスは、ハッとしたに見せつけるように自分の唇を舐めて見せると、固まる彼女の脚にゆっくりと舌を這わせた。

くすぐったさと鈍い快感に困惑した顔で脚をもぞつかせるを眺めながら、セフィロスは彼女が言う通り我慢が辛くなったら無理せず遂げてしまおうと考える。
いくら以前から中に触って慣れているとはいえ、は処女だ。
初めて男を受け入れた状態で快感を得るのは難しいだろうし、多少は緊張しているだろうから、早く終わらせてあげるのも優しさだと思った。
幸い、彼女の中心は、受け入れても負担が少ないくらいには潤っている。

そう考えると、すぐに彼女の中に包まれたくなってきて、セフィロスは慌てて自制心だと言い聞かせる。
せめてが1度達してからにしてあげなければ、経験がある男としての沽券に関わる。

ふと、脚ばかり愛撫していたことに気づいて、セフィロスはちらりとの様子を窺う。
頬を赤くしてこちらを見ていたと目が合い、舐めていた脚に歯を立てて噛み付いてみると、彼女の口からは濡れた吐息が漏れた。
だが、先程まで敏感な場所に触れていたせいか、その顔は何処か物足りなくも見える。
当然だろうと少し冷静に考えると、セフィロスは再び彼女の中心に手を伸ばし、緩く口を開けたそこにそっと指を差し入れた。


「っん……ぅ……」
「少し解す。力を抜いて我慢できるか?」

「……ぁっ、はいっ……でもっ……」
「キツいか?」

「違っ……入り口が……あっ……気持ち、良……」
「そうか……それなら良い」


中指1本を飲み込んでは、引き出されたそれを恋しがるように食むの入り口を見ながら、セフィロスは忍耐忍耐と念仏のように心の中で唱える。
いつもより粘性がある水気は、彼の指に合わせて過剰なくらいの水音を立て、の羞恥とセフィロスの劣情を煽った。

芯に触れられるよりは鈍く、けれどじわじわと増していく快感に、の腰が自然と震える。
脚を掴んでいた彼の手が離れ、再び濡れた中心を指で辿られると、彼女は自然と腰を反らせてあられもない声を上げた。


「っう……ぁっ……ん、あっ……」
「脚を閉じるな」

「あっ……はい、っん!?……あっ……え、あんっ…ぅんんっ!あっ、待っ、そっ……あぁあっ」


自然と閉じかけていた脚を注意されて開いた途端、中心を温かな舌に舐め上げられて、の咽から一際高い声が出る。
柔らかく固い熱が、彼の指を飲み込む入り口の周りをじっとりと辿り、快感ともどかしさで彼女の奥から更に呼び水が溢れた。
熱を移すようにじわじわと這う舌が彼女の中心を包み、先端から顔を出した芯を解すように揉むと、は背を逸らして腰を跳ねさせる。


「ひっ……あうっ、ん……あぁっ、だめっダメです、これっ……あぁっ、もうっ、あっ……良すぎて、もう……っあぁっ」
「そろそろか……?」


軽く達したか、無意識に強く指を食んでくる彼女の入り口に、セフィロスは入り込む指を増やし、快感から逃れようとする彼女の腰を押さえる。
掌がぬめるほど飢えを訴えるの中を探り、指の腹で見つけた場所を押しては擦り上げると、舌での愛撫のお陰もあって幾分かの反応が見えた。

敏感な外側と違い、中で悦べるかは個人差と経験による。
今はこんなものだろうと思いながら、今後はより自分の好みに彼女の体が変わっていくのだと考えたセフィロスは、舌と指の動きに集中しなおすことで口の端が上がるのを誤魔化した。

脚の間に顔を突っ込んだ状態でニヤついている姿など見られたら、流石に引かれて続けられなくなってしまう。
浮かれすぎて逆に集中力がなくなってきたセフィロスが、一瞬だけ意識から外れてしまっていたの様子を窺うと、彼女は彼の様子を気に留める余裕もなく悲鳴のような嬌声を上げていた。

いつもより敏感な反応をしていた彼女は、余裕なくセフィロスの名を呼び、腰を捕らえる彼の手に爪を立てている。
出し入れする指に抵抗を感じたセフィロスは、つい擦り上げる力を少し強めてしまったが、彼女の声に少し苦しそうなものが混じって慌てて力を緩めた。
それでも、ゆるゆると指で擦り続けられるの入り口は、いつもはなかった快感を知ったためか彼の指を離そうとしない。

はやくこの中に入りたいと思いながら、赤く泣き濡れた彼女の芯を舌で責め続けると、いよいよの口から『無理』と『駄目』の単語が出てきた。
ならばそろそろ絶頂かと思いながら、中を擦る指を増やそうとすると、はしたない程に潤みぬるついていたそこは、入り込もうとしたセフィロスの薬指に抵抗を示した。
たとえ今日解し足りなかったとしても、のそこは指2本を受け入れられないほど固い場所ではない。
もしやと思い、唾液と体液に塗れた彼女の中心から口を離した彼は、口元をの腿にこすり付けて拭うと、それを咎めなかった彼女の顔を見た。
腰を抑えるセフィロスの手を掴んでいた彼女の手はいつのまにか離れ、代わりにその下にあるシーツにくっきりとした皺を作っている。
大きく胸を上下させて呼吸しているは、その目を涙で滲ませながら呆けているようで、既に何度か達してしまっているのが見て取れた。

、大丈夫か?」
「ぁい……少し、息が……っ、な、中……まだ、強く動かさないでください」

「悪かった。痛みはあるか?」
「いえ……それは、大丈夫です。いつもより、少し、中が……その……良かったです」

「気持ちよかったなら良い」
「……はい」

呼吸を整えながら答えるの様子を見ながら、セフィロスは締め付けが緩んだ彼女の中に指を増やす。
中に触れても圧迫感ばかりだった彼女が、そこで多少でも快感を得られたと知り、彼は頬を緩めて喜ぶと同時に『次は奥だな』と性懲りもなく目標を定めた。
考え事をして彼女の絶頂に気づかなかった事は何度かあったので今更取り繕うこともせず、セフィロスは素知らぬふりをしながら指で彼女の中を揺らして解しなおす。
そのまま入り込んでしまいたいところだが、それでは彼女に余計な痛みを与えてしまうので、少し気が逸れたとしても手を抜く気はなかった。

2本の指で解しながら中を擦られると、は鈍く痺れるような快さを臍の下に感じる。
初めは何も感じなかったというのに、彼に触れられる事で徐々に変化する体は、どこまで塗り替えられてしまうのか先が見えなかった。
中に入る指が3本に増えても、以前のような痛みを感じない自分に深く息を吐き、代わりに与えられる緩やかな快感に声が漏れる。
重く鈍い快感をもたらす場所を執拗に責められるが、今はまだそこで果てられるとは思えず、それよりも、早く彼にこの体を真に手に入れてほしかった。

被征服欲というものがあるなら、がセフィロスに持つのはまさにそれだろう。
指先一つ、髪の毛一本などと狂気じみたことは思わないが、少なくとも、ベッドで肌を重ねている間だけは、自分の全てを彼に支配されたいという欲が出てくる。
倒錯しすぎて、あまり深く考えたくはないが、セフィロスもまたが思い通りに変化して喜んでいるようなので、うしろめたさは少なかった。

愛しいから欲しいし、支配されたいから欲しい。
不純と純粋の判断などする由もなく、はそれらの欲を自然なものと思い込んで受け入れると、焦らすような快感で力が入らない手を彼へと伸ばした。

「どうした?」
「もう、大丈夫ですから、早く、私の中に入ってきてください」

「っ…………、それは煽りだ。次からは気をつ」
「早く……」

に乞われ、一瞬ギラついた目になったセフィロスだったが、すぐに目を閉じて堪える。
だが、この状況で説教じみたことを言う彼に、は彼の言葉を遮り、手を引いて先を求めた。

言葉を理解するのに時間を要したか、一瞬無言でを見つめたセフィロスは、息を吐いて落ち着こうとしたが失敗し彼女の中から早急に指を引き抜く。
彼の爪の端が少しだけ引っ掛かったようで、は微かな痛みを感じたが、髪の毛1本が引っ掛かった程度の痛みだった。
いつもなら、そんな些細な指先の感触も気にしてくれるセフィロスが、今は指にまとわりついた潤いを拭う事もせず、けれど優しい手つきでの腰を掴む。
指についたぬるつきがの肌の上で伸びてセフィロスの掌を滑らせた。
けれど、彼はそのまま開いた手で彼女の片方の腿を掴むと、身を寄せながらその脚を開かせる。

弄ばれ、泣き濡れて乞う彼女の場所へ、押し付けるように触れた彼の熱に、の頬が自然と笑みを象る。
対するセフィロスは、彼女の柔く食むような感触に一瞬息を詰めると、僅かに先走るだけで乾いている自身を見下ろして堪えるように薄く唇を噛んだ。
彼に与えられるなら、痛くても良いのだと思いながら、けれどその言葉は今は正解ではないのだろうと考えて、はセフィロスが落ち着くのを待つ。
ゆるゆると顔を上げた彼の目尻はほんのりと赤く、口から洩れる息はいつもより少しだけ浅かった。

「俺のものを少し濡らす。動くぞ」
「はっ……ぁっ、んっ……」

が諾と答える前に、腰を掴むセフィロスの手の力が増して、触れた場所が擦り合わされる。
指とも舌とも違う固いそれは、彼女の下の唇から湧き出る呼び水を奪うように、角度を変えて不規則に擦りつけられた。
快楽よりもセフィロスと繋がることを求め、体の熱が静まりかけてい彼女の口から、再びの嬌声が漏れ始める。

未だ男を受け入れた事もない体でありながら、雄を擦りつけられて悦び声を上げ、弄られる場所からは粘つくような水音を立てる。
そんなの姿を見下ろし、十分な潤いを得た自身に目をやったセフィロスは、頬の横で揺れていたのふくらはぎにかみつくと腰の動きを止めた。

突然の快楽の停止と共に与えられた痛みに、の口からは弾みで大きな声が出て、その体もビクリと大きく揺れる。
その反応に、セフィロスは仄暗い欲に火を点けられた気がして、ハッと大きく息を吐きながら破顔した。
情欲に破壊衝動が混ざりそうになるのを慌てて抑えながら、自分の歯型がついたの足に頬を寄せ、礼を言うかのように一度だけ舐め上げる。
ふるりと震えたの脚に、セフィロスは腿を掴む手で少しだけ脚の角度をずらし、ぱくりと口を開けた彼女の中心に自身の先端を添えた。

再び敏感になった入り口に触れた彼の熱さに、の口から吐息交じりの声が漏れる。
視線だけを向けて様子を確認する彼は、意識してか無意識か、軽い口づけをするように何度も入り口を先端で軽く突いてきた。

「解しはしたが、狭そうだ。、無理だったら言え」
「分か……ぁっ……っうん……セフィロス、早くっ……」

「だから……煽るな。力を抜け。痛い思いをするぞ」
「痛くっ、ても……いんですっ……だから、もっと……近くに」

、お前……っ……覚えておけ」

絶対に泣かせてやる。だが今日は何が何でも自制する。
そんな地獄のような決意をさせたに、セフィロスは奥歯を強く噛む。
の腰を捕らえていた手を離し、ぬるつき滑る彼女の中心を指で開くと、その刺激で自由になった腰が逃げようとした。

宛がわれていた熱が離れて動きを止めただったが、それより先に彼女の脚を掴むセフィロスの手が、彼女の体を引き戻す。
少し乱雑な動きは、彼の余裕のなさの表れか。
確かめようか、詫びるのが先か。乱れる思考にそんな考えが過ったが、再び中心に触れた彼の熱への安堵が強くて、彼女は脚を掴む彼の手に触れながら笑みを浮かべた。

乱れた二つの呼吸に交じり粘ついた水音が響くと、熱い塊が強く押し付けられ、体の中に割り入ってくる。
想像していた裂くような鋭い痛みはなく、けれど押し広げられる鈍い痛みと圧迫感、想像していなかった彼の熱の心地よさに、は自然と止めそうになった息を吐いた。
中心を押し広げていたセフィロスの手は、いつのまにかまた彼女の腰を捕らえ、逃さないように押さえつけていた。
僅かな快感にも跳ねて逃れようとするこの体には、それくらいて丁度良いと思いながら、は意識して大きく呼吸をする。
自分の中に感じる初めての圧迫感に、天井を見て息を整える彼女には、様子を見ながら腰を進めている彼を見る余裕はなかった。

彼女の中に彼の全てが収まると同時に、繋がる場所から湿った音が漏れ、しかしは彼の先端が入り込んだ最奥に鈍い痛みを感じる。
それが、真に純潔を差し出した証しではなく、彼の一番近い場所に来られた証しに思えて、それだけで全てが満たされる気さえする。
一瞬息を詰めて身を固くしたに、セフィロスは吐き出しかけた息を止め、自身が収まった彼女の腹をそっと撫でた。

、大丈夫か?」
「あっ……圧迫感と、違和感が……」

「そのうち慣れる。痛みはないか?」
「奥が、押されて……強く押されると、少し痛いです」

「初めのうちは、そういう事もある。心配するな、そのうち、そこも良くなる。丁度当たるなら、楽しみだ」
「セフィロス、なんだか、悪い顔をしていますよ……大丈夫なんですか?」

「……少し動く。辛かったら言え」
「っぅ……」

の問いに対し、微かに口の端を上げただけの返事をすると、セフィロスは慎重に体を倒し、彼女に顔を近づける。
姿勢を変えられると奥に痛みを感じて、小さく息を詰めただったが、同時に、角度が変わって押し広げられた入り口に快感を覚えて、体が反応しているのが分かった。
彼が求めるようにまたこの体が変わっていったら、次はどんな顔で喜んでくれるのだろう。
そう期待しながらセフィロスに目をやれば、身に持て余す熱を瞳に滲ませた彼が、そっと触れるように唇を重ねてきた。

その瞬間、急に彼の唇がもっと欲しくなったが、セフィロスがこんな口づけをした時は何かを言いたい時だ。
焦れる気持ちを抑えて、けれど彼をすぐに捕らえられるよう、その頬を両手て包んだは、彼と視線を重ねて先を促す。

、焦るな」
「……ま、またこんな時に名前を呼びましたね……!」

「っ……こんな時だからこそ、だろう?だが……俺に名を呼ばれるのが、そんなに嬉しいか。ただでさえ狭いのに、呼んだ瞬間、締め付けてきた」
「当たり前でしょう。それより……」

話したかったことは、そんな事じゃないはずだ。
いつもの会話のように、方向がずれ始めているのを感じて、はセフィロスに視線で話を促す。
彼女が言わんとする事を理解している彼は、一瞬だけ苦笑いを見せると、深く息を吐きながら彼女と額を重ねた。

「分かっている。だが……やっと、お前をちゃんと抱けたな、……っ……待て、今は、締めるな」
「そんな事言われてましても……」

「もう、いい。後で話す。もう動くぞ」


自分で名前を呼んで自滅をかけているセフィロスに、はどう反応して良いか分からず困惑する。
何かした方が良いのかと考えている間に、セフィロスは行為を続けると決めたらしく、ゆっくりと動き始めた。

ゆるゆるとした快感と、擦り合わされている場所に感じるじりじりとした鈍い感覚に、はたまらずセフィロスの唇を奪う。
答えて絡められた舌と、柔く暖かな唇の心地よさで、彼が奥に触れる痛みは気にならなかった。

指で中を愛撫されている時とはちがう、ゆっくりと刺激してくる彼の熱は心地よく、そっと揺り起こされているような気分になる。
けれど、重ねた唇は貪るようで、セフィロスの表情も余裕があるとは言い難い。
彼の動きと、その表情と、一体どちらのが本当なのだろうという疑問は、胸の先を愛撫する指に消えてしまった。
不意の刺激に上げた嬌声が、彼の唇に飲み込まれる。

絡めた舌を強く吸われ、たまらず彼の舌を口内に招いて同じように吸い返すと、胸の先を強く押しつぶされた。
刺激で腰が震えると同時に、彼の先端が奥に強く当たり、小さな痛みの感覚が蘇る。
唇を軽く吸われ、吐息を震わせる間に離れた彼の唇は、そのまま頬から首筋へと口づけを落とした。

まだ物足りない唇に、もう一度と口づけを求めようとしたが、喉の噛み跡と首筋を舐めあげられてしまう。
自然と顔が横を向いたところで、耳元に彼の呼吸を感じたかと思うと、大きな水音と共に彼の舌が耳に差し入れられた。


「っひぁ!……あっ、ぃっ…あぁ……んっ、ぁぅ……」
「っ……待て……悪かった、少し、待ってくれ……っ」


耳への愛撫に体が震えた瞬間、深く触れ合う場所に痛みを感じて、は僅かに眉を寄せる。
それは些細な痛みで、すぐに彼の熱に解されたが、対するセフィロスは眉を寄せると急に動きをとめた。
耳元で漏らされた堪えるような声に、の体は意図せず反応し、彼女の頬に額を押し付けていたセフィロスが息を詰めた。
体の中にある自分のものではない熱と、初めて感じる圧迫感と違和感に、はどこか呆然としながら、自分の上で息を整える彼を見る。
そっと顔を上げた彼の頬に手を伸ばし、そこに張り付いた髪を指先で払うと、そっと手首と掴まれて指と掌に口づけられた。

「……辛いか?」
「いえ、大丈夫……」

「悪いな。だが、もう少しお前の中にいたい」
「いいですよ。私も、貴方の温かさが、心地良い」

「そうか……痛みは?」
「少しだけ。でも、大丈夫」

「大丈夫ばかりだな……本当に無理はしていないか?」
「ええ。貴方の方こそ、少し辛そうですが……」

「無自覚か……お前の体は……俺の事をどれだけ好いて喜んでいるか、正直に訴えてくる。だから、俺も、焦らないように必死になるだけだ」
「セフィロス、貴方が私を傷つけないことは、分かっています。ですから、お辛いのなら、無理なさらないでください」

「…………ああ。そうだな。だが、今日は流石に、無理をさせろ。俺にも、恰好をつけたい時はある」
「ありがとうございます。中の圧迫感、さきほどより薄れてきました……」

「馴染んできたか。続けても大丈夫か?」
「ええ、勿論」

答えると唇が重ねられて、再び彼が彼女の中で動く。
セフィロスが深く入り込む度に触れる奥の痛みは変わらないが、互いの熱を交じり合わせ、分け合うような感覚は夢現に似た心地よさを思わせた。
もっと触れてほしいという欲のまま彼の背に手を伸ばせば、薄く滲む汗で肌が張り付くようで、そこからまた彼と溶けあえるようだった。

これまでセフィロスに教えられてきた、体の奥に染み込ませるような、時に責め立てるような触れ方とはまるで違う。
強く翻弄する快感ではなく、近くに触れる心地良さをもたらす触れ方は、どれだけ彼が理性と慈しみを持ってくれているか教えてくれる。

貴方なら手荒くても良いと言う事が正解か、恰好をつけたい彼を尊重するべきか、にはわからない。
彼なりの理想がきっとあるのだろうとは分かっていて、ならば自分はと考えると、今こうして彼が自分の奥深くまで来てくれているだけで十分だった。

彼が深く吐いた息が耳元をくすぐって、または意図せず体を反応させる。
一瞬息を詰めたセフィロスは、けれど今度は動きを止める事無く、その頬に頬を重ね返した彼女のこめかみに口づけた。
少しだけ腰の動きを早めた彼に答えて、は汗ばむ背中をそっと撫でる。
律動の度に感じる痛みは変わらず、けれど繋がる場所の熱は交じり合いすぎて曖昧で、汗で張り付く肌からも体温が混ざっていく。
ずっと感じていたくなるような温かさに、自然と脚を絡めようとすると、繋がる場所から漏れる水音が今更思い出したように耳に届いた。

ああ、今日はいつもより濡れてしまっていたから……。
そう内心で呟いてやり過ごそうとしたが、響く音はそこにある羞恥心を嘲笑うように大きく響き、彼女の耳を朱に染める。
意図せず響いてしまうその音に、セフィロスはちらりと彼女の顔を見て、眉尻を下げて涙目な様子に小さく笑みをこぼすと、もの言いたげな唇を自分のそれで塞いだ。
軽く触れるような口づけを繰り返し、緩く体を揺すられていると、彼を受け入れる口に少しずつ感覚が戻ってくる。
自然と食むように動いた下の唇を許すように、一度深く口づけた彼は、彼女の唇から漏れ始めた声にゆるりと目を細めた。

まだ痛みを感じる奥に触れてしまう事を詫びるように、セフィロスはの頬に口づけ、更に奥へと求めるように入り込んでくる。
僅かに眉を寄せながら、彼の体を引き寄せて続きを許すと、何度か強く奥を押された後にそれまでになかったほどの熱さが腹の奥に広がるのを感じた。
同時に、一瞬だけ動きをとめた彼は、何度も大きく息をしながら、緩く腰を動かし残る熱をすべて吐き出す。

暫くそうして呼吸を整えていると、頬にかかった髪を指で優しく払われた。
思いを遂げてもなお包み込んでくれる彼女の中を心地良く感じながらその顔に目をやると、彼女は何が起きたか上手く理解てきていないようで、少しだけキョトンとした顔でセフィロスを見ている。
その表情に、つい頬を緩めたセフィロスは、ゆっくりと体を起こし、熱を受け入れた彼女のお腹をそっと撫でる。
くすぐったさに身じろぎ、そこでようやく理解が追いついたは、彼が撫でる場所に目をやるとまた耳まで赤くして目を逸らした。

その反応にまた目を細めて笑ったセフィロスは、小さく息をつくとゆっくり彼女の中から抜け出る。
痛みか違和感か、ぴくりと体を反応させた彼女に、彼は噛み跡がついた脚を撫でて宥めた。
拭うものを取り忘れたと気づくと同時に、彼女に与えた熱がセフィロスの後を追うように漏れ出る。

「うひぇ!」
「大丈夫だ。今ティッシュで拭いてやる」

「自分でやります。うぅぐぅ〜変な感じが……」
「……そうか」

ドロリと滴る初めての感触に驚き、呻くような声をあげるに、セフィロスは風呂場に連れて行って綺麗にしてやった方が良いだろうかと考える。
が、彼女は一緒に風呂に入ることは嫌がるタイプなので、そこで更に中に指を入れようとすれば、かなりの拒否反応を示すだろう。
彼女が自分で中まで綺麗にできるかもわからないし、多分無理そうだ……。

下着に適当な布を当てて、自然に出るのを待つのが良さそうだと結論を出すと、セフィロスは始末の仕方を教えて先に風呂に向かわせようとする。
だが、頷いてベッドを降りようとした彼女は、いつもは恥ずかしそうに閉じる足を今日は開いたままで、セフィロスの残滓を腿に伝わせていた。

「待て、。どうした?」
「ま……股が変な感じで……足が閉じられません」

「……一人で風呂まで……歩いて行けそうか?」
「ちょっと……時間がかかりそうです」

「…………」
「あの、何だか、まだ中に何かが挟まっている感じがするんですが、これは普通なのですか?何か固形物が残っているわけではありませんよね?」

「俺の体はそんなものを出せる仕様はしていないし、残っているのは液体だ。それも、今中から出ている最中だろう」
「そうですよね……でも何か残ってる気がするんです。挟まってるんです何かが……」

「……わかった。、無理はしなくていい。風呂は、明日の朝にして、今日はもう休め。俺もこのまま寝る。下着だけつけて、シーツを変えるまで鏡台の椅子で待っていろ」
「ありがとうございます。お言葉に甘えます」


眉を八の字にしてベッドから這って出るに、セフィロスは苦笑いしながらティッシュとゴミ箱を渡す。
へっぴり腰でそれを受け取ったは、ベッドの端にある脱いだ下着を手に取るが、汚れたそれに着用を諦めると、ネグリジェで体を隠しながら彼の体液をふき取った。
鏡台の前にいるせいで、セフィロスには彼女がやっている事が鏡映して見えているのだが、それに気づかないくらいにはは消耗しているのだろう。

その締まりのなさが彼女らしいと苦笑いして、セフィロスは汚れたシーツを手早く替える。
拭っても少しするとじわじわ伝ってくる痕跡に困り顔のに、セフィロスはまた笑みを零すと、心地良い疲労感に身を任せるように彼女を抱き上げてベッドの上に下ろした。
ポカンとする彼女の横に転がり、ぬるつく足に惑うのも気にせず布団をかけると、その体を抱き寄せてさっさと電気を消してしまう。


「セフィロス、私はまだ下着をつけていません。このままでは寝ている間にまた出てきてしまいます」
「どうせこのシーツも明日洗う。気にするな。それより、今日はもう休め。疲れているだろう?」

「…………そうですね。そうします」
「ああ。明日には、違和感も少しはマシになっているだろう」

「はい。おやすみなさい、セフィロス」
「ああ。おやすみ」

混乱から、少し落ち着いて穏やかになったの呼吸を聞きながら、セフィロスはいつもとは少し匂いが変わったの前髪に口づける。
本来なら甘さがあるピロートークぐらいしてやるべきだとは思うのだが、多分彼女の頭の中は股への違和感でいっぱいで、それどころじゃないだろう。
今も、セフィロスに上半身を寄せながら、下半身だけ距離を取ろうとしているのが良い証拠だ。
脚をかけて引っ張ってやろうかと一瞬思ったが、下手な事をして休息を妨げるのも可哀想だったので、セフィロスは彼女の好きにさせる事にした。

初めて全てを受け入れた彼女を見て、2度目は無理だろうと予想したが、その通りだったと思ってつい頬が緩む。
とはいえ、セフィロスにも男としての欲はそれなりにある以上、次はいつにしようかとつい考えてしまう。
男を知る体の女なら、そのまま翌朝にでも事に至れるが、の様子を見ると少し様子見が必要な気がする。

昔、処女はかなり血が出る事もあると聞いたことがあったので、慎重に抱いたつもりだったのだが、血は出なくとも負担は大きいらしい。
ですらへっぴり腰になるのかと少しだけ驚いたが、しかし彼女の肉体自体は普通の女性と同じ、むしろ筋肉はあっても平均より細いくらいなので、当たり前だろうとも思う。
むしろ、そのステータスを考慮せず考えると、それなりに体格差がある自分をよく受け入れられたものだと、今更ながらに驚いた。
ようやくと肉体でも思いを遂げられたと喜ぶはずが、セフィロスは彼女の体が心配で今更ながら気が気ではなくなってくる。
動きがおかしいなどと思って、微笑ましく感じている場合ではない気がしてきた。

腕の中の彼女は既に寝息を立て始め、穏やかで満足そうな笑みを浮かべながらセフィロスの腕に頭を預けている。
これまで散々触れてはきたが、実際に体の中に受け入れるとなるのはその負担も違うはずだ。
暫くは、の体が慣れるまで無理はさせないようにしよう。
そう、数日後には揺らぐ気がする決意をしたセフィロスは、自分の跡が残る彼女の脚に自分の脚を絡めると、ゆっくりと目を閉じた。








2023.06.05 Rika
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