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明日の午後に……と言っていたのに、元教え子3人は昼食前に部屋を訪ねてきた。
ドアを開けるなり中に身を滑り込ませてきた彼らは、達が声をかけるより先に窓へ走り、自分たちの姿が見えないようにしながらカーテンを閉める。

そのまま床に腰を下ろし、深いため息をついた彼らに、とセフィロスは顔を見合わせて同時に肩を竦めた。


Illusion sand ある未来の物語 135話



「つまり、昨日から町に増えた赤装束は、お前たちのせいだったわけか。……セフィロス、外はどうです?」
「今も、武器をしまいもせず通りを歩いている。治安維持機関とぶつかるのは時間の問題だな」
「セフィロスさん、あんまりカーテン開けないで~。部屋バレちゃうから~」
「俺たちのせいじゃないッスよ。勝手に追っかけてきてるんス。俺らはストーキングの被害者ッス」
「2人ともすみません、頑張ってはみたんですが、あちらの方が数も多くて、上手く撒けませんでした」

「謝るなアーサー。ホテルを知られなかっただけで上出来だ。旅の間も、ずっとこの2人のお守りは大変だっただろう?」
「体が若返ったとはいえ、気苦労は多かったはずだ。頭を下げるな」
さんとセフィロスさんて、本当アーサーには優しいよね~」
「差別っスよ~。俺らだって同年代なのに」
「俺はお前らと違って隠居した老人だったからな……」


旅の間に自然と若返った気持ちが、口調に表れているアーサー。
それでも、若い頃に10年ほど戦闘職だっただけで、その後はずっと教職だった彼には、2人との旅はかなり刺激的で苦労も多かっただろう。
ガイ達の無茶について行きつつ、時にストッパーをしていた彼には、もセフィロスも自然とかける言葉が優しくなる。

ずっとタークスとして活躍していた二人より、なぜか教職を経て隠居していたアーサーの方がレベルが高かったのだが、彼が住んでいる村が村なので納得できる。
それに、そんなアーサーだからこそ、安心してガイ達との旅に同行させられたのだ。


「それはそうと、これからの事を話し合うべきだな。ゴンガガへ来たということは、3人とも、これからアーサーの村に行く予定には変わりないな?」
「そのつもりッスけど、このまま行った迷惑かけますよね?絶対にあの赤装束もついてくるじゃないッスか」
さ~ん、何かいい方法あるんでしょ~?あ、赤装束と揉める以外でお願いね」
「お前らあんまりさんに無茶言うなよ。さんだぞ?」

「……アーサー、それはどういう意味だ?」
「大丈夫だってアーサー。さん、これでも大分常識的になってきたから、揉める間もなく殲滅するとか言い出さないって」
「カーフェイが言う通り~……あ、でもさんだからなぁ……」
「……あの、俺の娘夫婦と孫とか、この街にいるんで、あんまり騒ぎにならない方法でお願いします」

「…………」


教え子たちのあんまりな言い草に、は呆れた視線を向けるが、すぐに諦めて小さくため息をつく。
そんな彼女を慰めるように軽く肩を叩いたセフィロスは、クローゼットにかけていた服を出すと不安げな顔のアーサーにそれを差し出した。


「この服は……俺に、着替えろって事ですか?」
「何か、ちょっとジジくさい服ッスね。……まさか、セフィロスさん、さんのセンスうつったんスか?」
「え~?でも今の服は普通じゃん。違うでしょ。アレじゃない?アーサーは元の爺さんに戻すって事じゃな~い~?」
「カーフェイ、私の事はさておき、セフィロスの事をそういう風に言うのはやめなさい。それと、ガイが言う通り、アーサーは元の老人の姿に戻ってくれ。赤装束から身を隠すのも、村に帰るのも、それで十分のはずだ」


思ったことをハッキリ言ったカーフェイに、セフィロスがピクリと反応して動きを止めたため、は慌てて2人の間に立ち、後ろ手にセフィロスの手を握る。
一瞬、何故カーフェイのあのセリフで自分が間に入らねばならんのだと思ったが、そうしなければ2人から服のセンスをボロクソに言われそうなので、立ち位置を戻すことはしなかった。

「赤装束たちも、よもや人が一晩で老人になるとは思わないだろう。アーサー、かまわないな?」
「もちろんです。それに、娘夫婦から、村へ帰る前に顔を見せろと言われていますから、丁度良い。村へ戻る前に、1日時間をもらっても?」

「もちろんだ。1日と言わず、2~3日ゆっくり過ごすといい」
「ありがとうございます。ですが、何日もとなると、逆に俺……私が疲れてしまいます。もうお爺さんですからね」


ニッコリと笑ったアーサーは、早速セフィロスから渡された服を持ってバスルームへ向かう。
その後ろ姿をちらりと見たは、旅の間にのびて首元で結んでいるアーサーの髪に、家族に会わせる前に散髪へ連れて行こうと考えた。

さて、問題はこの二人だ。
どの方法でも一度は文句を言ってくるだろうと思いながら、はガイとカーフェイへ目をやる。
すっかり自分たちも老化させられると思っている二人は、どんな爺になるのかとお互いの顔を見て笑い合っていた。

「ガイ、カーフェイ、お前たちについてだが……方法は二つある。どちらかを選んでもらうが、両方嫌なら自分たちで脱出方法を考えてもらわねばならん」
「まあ、そうッスよね。とりあえず、案を聞いてから判断します」
「アーサーの村が近いし、できるだけ手段は選んでほしいかな~」

「もちろん考慮している。一番良いのは、お前たちにミニマムかトードをかけ、私とセフィロスの鞄に入れて脱出する方法だ。もう一つは、一度お前たちを次元の狭間に送り、街を出たところでこちらの世界に連れ戻す方法。お勧めは前者だ。後者は……確実に人目にはつかないが、お前たちの精神力でも、かなりの負担になる」
「ミニマム一択じゃないッスか」
「その次元の狭間ってアレでしょ。昔言ってた、何かヤバイ場所でしょ?普通の場所じゃないよね?何でそこに俺たちを行かせようって発想になるわけ?ってか、アーサーみたいに老化で良くない?」

「お前たちの不老の体に老化魔法をかけて、どんな不具合が出るか想像ができん。私が以前自分にかけた時は、体の半分が死んだ状態になった。お前たちにも同じ不具合が出るとすれば……即死だろうな」
「じゃあしゃあないッスね。……そういやあ、俺、昔、小さくなって美女の巨乳の谷間に挟まれたいとか考えてたわー。あ、大丈夫ッス。さんには期待できないって見れば分かるんで」
「馬鹿な事言って……それ、まだカーフェイに夢と希望があった学生の頃でしょ~?ってか、もしさんが巨乳でも、俺は遠慮するかな~。ニブルドラゴンの巣でキャンプする方が安心できるじゃーん」

「なるほど。鞄ではなくタイタンの腰巻きに挟まれて移動したかったのか」
「すみません。もう二度と余計なこといいません」
「変な下心出さなくて良いって褒めてくれたって……ああ、はい、言いすぎました。すみませんでした」

不満を漏らすどころか言いたい放題な2人に、が素で舌打ちして言うと、彼らは大人しく頭を下げた。
こんな時は黙っているのが吉と知っているセフィロスは、素知らぬ顔をしながら携帯で調べ物をしているフリをする。

あと数日は街でのんびりするつもりだった達だったが、ガイ達は早々に赤装束と距離を取りたいようだ。
しかし、急いて行動しては逆に人目を引くし、アーサーが家族と会う時間も必要だ。

街からの出発を明日の夜に決めると、はアーサーの肉体年齢を元に戻し、セフィロスに付き添いを頼んで送り出した。
ガイとカーフェイは、とセフィロスの部屋に残り、詳しい報告をしながら時間を潰すことを選ぶ。

ソファでお茶を飲む二人に、冷蔵庫の中からお菓子を出してやると、彼らは遠慮なく手を伸ばした。


「それで……あの赤装束について、説明してもらえるな?」
さん、昔いた星学者って知ってます?」

「名前と、概要だけだな。遭遇したこともない」
「まあ、大体の人はそんなもんスよ。あの赤装束は、その星学者の中でも過激派のはみ出し者が作った組織が元になってます。星への信仰が強くて、英雄志向と救世主思想が強めの団体ッスね。メテオ災害の後に少し増えましたが、その後は事実上消滅。でも、新種騒ぎの辺りで蘇って、細々続いていたのが、今のメテオと、前にさんがやったミッドガル跡地消滅で一気に息を吹き返した感じっすね。ちなみに、他の星学者からは煙たがられてます」

「英雄志向と救世主思考か……。お前たち、悪い時期に外で遊んでしまったな」
「本当ッスよ。俺たちが強くてカッコ良かったばっかりに……」

「……………………うん……まあ、そうだな。ひとまず、セフィロスが戻ったら街の情報を聞く。それまでは、この部屋で休んでいるといい。場合によっては、私の名前で別の宿をとらねばならんな……」
「お世話んなりまーす」


既に逃げ切ったも同然な気のカーフェイに、はやれやれと小さくため息をつくと自分の珈琲を入れる。
カーフェイと話している間、ガイはずっとお菓子に集中しており、食べきるとそのまま居眠りを始めてしまった。
それを咎める事も気にすることもなく、カーフェイは携帯とタブレットを並べて写真の整理をしている。

気を張ることも、武器を出して手入れすることもない二人の様子から、この1年の旅の様子が伺い知れて、は知られぬよう頬を緩めた。




アーサーの親族が粘った事で、ゴンガガへの滞在は1日増えてしまったが、それ以外は特に問題なく一同は街を後にした。
赤装束の集団は、街に入った後に行方を眩ませたカーフェイ達を探していたようだが、当の本人たちはそれぞれに姿を変えて悠々と彼らの隣を通り過ぎる。

3つ先の町を通り過ぎたところで、ガイ達にかけた魔法を解除すると、本人の希望でアーサーをもう一度若返らせた。
どうやら、村まで徒歩で1日を老体で歩くのは嫌だったらしい。
嫌なだけで不可能ではないんだな……という、一同の視線を物ともせず、再び若い肉体を手に入れたアーサーはサクサクと村への道を歩き始める。
知り合いに見つかっても、孫の一人が瓜二つなので誤魔化せるらしい。

近隣住民を混乱させるのは避けたいので、主要道路を歩く間は召喚獣の移動は控えることにした。
達とガイ達はすぐにこの世界と別れを告げるが、残されたアーサーと村人が迷惑を被る可能性がある。
もし召喚獣に乗っている姿を追っ手に見られ、あの小さな村まで追いかけてこられたら……。
そう想像したが、強者揃いの村なので、どうなるかちょっと見てみたくなっただった。
アーサーの村に迷惑はかけられないので、実行することはないが。


「今から歩いて……到着は遅くても夕方頃か……」
「え~?さん達がいるんだから、もっと早いんじゃないのー?」

「魔物との遭遇を考えるなら、そう間違っていないはずだ。私とセフィロスは、村の手前までは完全に気配を断つ。戦闘も、全滅寸前までいかなければ手出しはしないつもりだ。期待はするな」
「ふーん……そっか。ま、連携とか考え直さなくて済むし、いいけどね~」


魔物は出ても、がいるなら野生動物は出てこない。
それだけで十分だろうと考えると、ガイは双剣を出して腰に下げる。
大剣を背負うカーフェイと、長剣を腰に下げるアーサーの間へガイが自然と収まると、彼らは慣れた様子で辺りを警戒しながら舗装が割れた道を歩き始めた。

とセフィロスは、彼らから数歩離れて後ろをついていく。
3人の声は聞こえるが、会話を聞き取るには耳を澄ませる必要がある距離だ。

車通りもまばらな道を何事もなく数時間歩くと、村へ続く脇道に入る。
10分も進まないうちに舗装は無くなったが、道は昔よりも幅が広くなっていた。

鳥の声も聞こえない山道を暫く進むと、前を歩いていた3人が不意に足を止める。
まだ少し気づくのが遅いな……と達が考えている間に、茂みから飛び出してきた数体の魔物が、武器を構えた前列3人に襲い掛かった。


戦闘開始から終了まで、約5分。
十分早い部類だが、思ったより時間がかっているというのがの感想だ。
歩きながら武器についた血を拭っている三人を見ながら、はそっとセフィロスの裾を引く。
顔を近づけた彼の耳元に唇を寄せた彼女は、先ほどより3人との距離ができていることを確認しながら、声を潜めた。


「彼らなら、もう少し早く終われると思うのですが、貴方はどう思います?」
「……確かに、少し気が抜けている気はするが、道中の敵程度なら、十分だろう」

「気を抜きすぎて、今に一撃食らいそうに見えるんですよ」
「その時はその時で、勝手に反省して気を引き締めるだろう。お前は回復してやればいい。見守れ、

「……わかりました。そうします」
「心配しなくても、森の奥の蜘蛛でも出ない限り、あいつらが負ける事はない」


確かに、彼が言うとおりだ。
そう納得すると同時に、言われてみれば、そんな魔物がいたな……と、は少し懐かしくなる。
村には今も学者が住んで森の調査をしているらしいが、魔物の脅威を前にあまり進展はないらしい。
人類には難しい土地なので、仕方ないだろうと考えながら歩いていると、本日二度目の魔物の襲撃で再び前列3人が武器を抜いていた。

以前滞在した時よりエンカウント率が極端に上がっている気がするが、それが異常あっての事か、単にとセフィロスが気配を断っているせいなのか……。

一瞬口出しを考えただったが、異常があっても、この3人なら大丈夫だろうと考え直し、落ち着くためにセフィロスの手を握っている事にした。
再び5分足らずで戦闘を終えた彼らと進んでいると、20分もせずに3度目の魔物襲撃だ。
3人もエンカウント率の高さに首を捻ったが、なぜかに疑いの眼差しを向けてきた。
心外である。


「言っておくが、私は気配を断つ以外何もしていないぞ」
「えー?本当ッスすかぁ?」
「魔物出すぎだね。アーサー、急ごうか」
「うちの村なら大丈夫だと思うが……そうだな。少し急ごう」

「村と街の中間を過ぎたら、バハムートを呼んで乗せてやる。そこまで頑張るといい」
「了解ッス。じゃあ、走るか?」
「俺はどっちでもいいかなー。アーサーに任せるー」
「そうか……悪いな。じゃあ、少し走らせてくれ。さんたちも、すみませんが少し急がせてください」


アーサーが軽く頭を下げてそう言うと、3人は武器を抜いたままで道を走りだした。
体が若いと気持ちも若いんだな……と暢気にそれを見送った
その隣にいるセフィロスは、仕方ないと納得しながら小さくため息をつく。


、行かないのか?」
「もちろん追いかけますが……一緒に走るのは少し面倒なので、シヴァを呼んで馬車に乗せてもらいます。追っ手もいないようですからね」

「あの3人は、文句を言うだろうな」
「走ると決めたのは彼らです。ですが……後ろから馬車では圧迫感があるでしょうか……オーディンのスレイプニルを借りて二人乗りの方がいいでしょうかね?」

「大して変わらん。普通に後ろを走ってやれ」
「貴方がそう言うのなら……。では、行きましょうか」


ちょっと面倒だが、セフィロスの静止を無視するほどではないので、は彼とつないだ手を離すと3人の後を追って走り始める。
彼らから数十メートル離れながら進んでいると、また魔物が現れたが、3人は足を止めることなく、すれ違いざまに魔物を切り捨てる。
ただ、速さをそのままというわけにはいかず、魔物の数が多いときは特に、倒す度に速度が緩み、達との距離が縮んだ。


さぁ~ん!魔物多いから手伝ってー!」
「かわいい元教え子に愛の手を差し伸べてほしいッス」
「お前ら本当、さんのこと便利に使いすぎだろ……」


便利に使われているのは今に始まった事ではない。
何なら蘇る前もタークスの人員が足りないときや、難しい情報収集の時は便利に使われていたので、はアーサーの申し訳なさそうな態度が逆に新鮮だった。

それはそうと、助けを求める判断が早いのは良い事だと考えて、はセフィロスと一度目を合わせた。
彼が了承して頷くと、彼女は少しだけ走る速さを上げ、前を走る3人を追い抜く。
普通の人程度に気配を漏らし、足音も消さずに走れば、先ほどの3人達のようにすぐ道の端から魔物が襲い掛かってきた。

剣を抜くまでもなく、魔物を氷で串刺しにしながら、は振り返らず走り続ける。
自分の後ろから敵が現れたとしても、それは3人に自力て対処してもらうべきだし、難しければセフィロスがフォローしてくれるだろう……多分。

普段なら、倒した魔物の死骸処理もするところだ。
けれど、無償で討伐をしているようなものなので、死骸処理は近隣の住民に任せることにした。



最初は良いが、30分、40分と続けていると、どうしても飽きてくる。

やはりシヴァを呼んで氷の馬車に乗せてもらおうか。
魔物は氷の騎士に対処してもらうか、馬車でひき殺せば良い。
だが、そうなると3人も馬車に乗せることになるし、シヴァに便利屋扱いするなと怒られそうだ。

あとどれくらい行けば村と街の中間地点だろうかと考えながら、はちらりと後ろを振り返る。
徐々に距離が離れ始めたガイ達は、既に息が上がっていて走る速度も落ちていた。
アーサーとセフィロスなんて、遥か遠くにいて、走るどころか暢気に歩いている始末だ。
多分、セフィロスは飽きたのだろう。
アーサーは、肉体年齢を戻した時に無茶のしわ寄せが出ないよう、セフィロスに止められたのかもしれない。

言い出した以上、責任をもって走るのをやめないガイ達の律義さに小さく笑みを零すと、は足を止めて彼らが追いつくのを待つ。

ガイとカーフェイはすぐに追いついたが、肩で息をしていて喋れる状態ではなかった。
その間にも現れた魔物を始末し、2人に水を渡す。
10分も休憩していると、セフィロスとアーサーが追いついて、そのまま休憩を始めた。

「もう無理。マジ無理。さん、体力化け物すぎ。俺、今日はあともう歩くから。絶対走らないから」
「アーサー、村まであとどんくらーい?」
「山道で徒歩だからな……4~5時間くらいだ」

「…………」
さーん、バハムート出してー」
「バハムートが降りられる広い場所は、一番近くて30分先の沢だろうな。いや、魔物との遭遇率を考えると、1時間は……」

「みんな、俺、いい事考えた。もう一度さんにミニマムかけてもらおう。で、鞄かポケットに入れて運んでもらう。そうすれば1時間もかからずに沢までいけるはずだ」
「むしろそのまま村まで運んでもらったらいいんじゃないのー?」
「お前らそんな事ばっかり言ってたらカエルにされるぞ」

流石にそんな酷い事はしない。

そう言いたくなっただが、五月蠅く騒ぐなら置き去りにしようとは考えていたので、酷い事には変わりないと思い直した。
カーフェイとガイに呆れた視線を向けるの傍で、セフィロスも同じ目を彼らに向けながら水を飲んでいる。
道の端にある木々をなぎ倒して良いなら、ここでバハムートを呼んでも良いのだが、多分それはアーサーが嫌がる。

魔物との遭遇率の高さが気になるので、としては、出来れば村までは地上ルートから行きたかった。
だが、村人であるアーサーがバハムートでの近道を希望しているようなので、は自分だけのこだわりで時間をかけるのもどうかと思う。
もしかすると、アーサーは道中の状況確認を切り上げ、村へ急ぎたいのかもしれない。
口にしないのは、あの村人なら大丈夫だろうという考えがあるからだろう。
けれど、悠長にもしていたくないはずだ。

「休憩を終えたら、お前たちにミニマムをかけて沢まで走る。そこからはバハムートだ。上空から村の様子を確認し、状況に応じて着陸地点を変える。アーサー、それでいいな?」
「……さんとセフィロスさんがそれで良いなら、お願いします」
「俺は何でもいい。好きにしろ」
「ヨッシャー!楽できるー!」
「カーフェイ、残念だけど、多分かなり揺れるよー」

「それほど私に運ばれたくないのなら、ミニマムはかけずにスレイプニルの胴体に括りつけて運んでやろう。出発は10分後だ。どちらにするか決めておけ」


これ以上はつきあってられないので、はそう言い捨ててセフィロスの隣に腰を下ろす。
走る馬に括り付けると言っているのに、に運ばれるのとどちらが良いのか真剣に議論するカーフェイとガイの事は、放っておくことにした。
セフィロスが差し出した一口サイズの芋羊羹を受け取ったは、その甘さに肩の力を抜くと、友人達から離れてやってきたアーサーを見上げる。

「ん?何だアーサー、お前も食べたかったのか?」
「いえ、そういう訳では……ああ、すみませんセフィロスさん、どうもありがとごうざいます」

セフィロスが無言で差し出した芋羊羹を、アーサーは反射的に受け取ってしまい、素直にお礼を言う。
残る2人はまだ真剣に話し合いを続けているが、その内容は村に着いた後の戦闘……近隣の魔物の掃討についてに内容が変わっている。

わざわざ心配と口にはしないが、村が平和な状況でないことは、遭遇する魔物の数で全員が想像していた。


「アーサー、どうしたい?お前が急ぎたいと言うなら、そうしよう。これだけ道に魔物が出ている状況だ。ここで召喚獣を呼んで辺りが荒れたところで、不自然には思われないだろう」
さん、お気遣いありがとうございます。ですが、うちの村は今も昔も、防衛に特化させています。多少の犠牲はあっても、崩れることはないでしょう」


確かに、どの世代も猛者揃いのあの村が、普通の魔物の群れを相手に陥落するとは思えない。
それに、あの村人……特に老人たちは、犠牲が出れば悲しんだり驚いたりするより、戦意と殺意が溢れた戦闘狂集団になるだろう。

村人がそうなっている村に行くのは嫌だな……と思いながら、は水を一口飲んで立ち上がる。
村の近くでバハムートが降りられる場所となると、村の前の川か丘の上の墓地辺りだ。
どちらにするかは状況を見て判断する事に決めると、は未だ作戦会議をする元教え子2人にミニマムをかけて小人にした。









2025.06.21 Rika
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