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Illusion sand ある未来の物語 127話 3階の確認をセフィロスに任せ、は2階にある警備室のドアを開ける。 駐車場から見えた小さな窓の間には真っ暗なモニターが貼り付けられ、その下には複雑そうな機械が埃をかぶっていた。 当然、中にはだれもおらず、遺体すらない。 だが、倒れた椅子やテーブルの上に残された珈琲カップ、散らばった書類と残されたペンが、置き去りにされた時の慌ただしさを思わせる。 魔法で室内を照らし、隠された通路を探しながら、はゆっくりと室内を確認する。 モニター下にあるボタンが並ぶパネルには一部電源が入っているが、点灯しているのは照明のスイッチぐらいだった。 よく見れば、他にもいくつかランプがついている所があるが、未だに機械が苦手なに、何のボタンか分かるわけがなかった。 部屋の一番奥の壁には、他より小さなモニターが並び、まだ電源が通っているいくつかの画面にはトンネルや施設内の様子が映っている。 トンネルにあった大扉付近以外にも、いくつか監視カメラは生きていたようだが、どの画面も既に確認し終えた場所だった。 モニターの下に並ぶボタンにも、いくつかランプがついているものがある。 多分、先ほどまで確認していた部屋や研究室の電源か何かだろうと考えると、は最後に一度室内を見回し、部屋を後にした。 階段の踊り場に出て、セフィロスを待つか、迎えに行くか、は少しだけ考える。 だが、彼の気配と魔力が、3階にある部屋の一点から動かなかったため、彼女は少しだけ嫌な予感がして様子を見に行く事にした。 静かに足を進めているのに、纏う鎧が自然と音を鳴らして存在を主張する。 昔は慣れていて気にしなかったが、金属鎧が廃れて久しいこの世界に慣れた今は、歩くたびに鳴る鎧の音が少しだけ煩わしく感じた。 綺麗だった1・2階と違い、3階の廊下は荒れ果てていた。 壁は銃撃痕だらけで一部剥がれ、むき出しになった中の配線はいくつか千切れている。 床には瓦礫と割れて落ちた照明のガラスが散らばり、端には神羅兵や白衣姿の遺体が転がっていた。 ただ、他の場所で見たものとはちがい、3階にあるそれらは干からびているが、まだ白骨化とまではいっていない。 それに、白衣の遺体まで手に武器を持っており、はわずかに首を傾げた。 だが、考えたところで何かわかるわけでもないので、すぐにそれらから目を逸らす。 奥の扉の先にいるセフィロスの気配は、相変わらず動かない。 彼が興味を持つものなど、神羅の遺物の中にあってほしくはないのだが、見つけてしまったものは仕方がない。 20年以上かけて、ようやく昔と同じくらいに回復した彼の精神を、今更乱されてほしくないのだが、一体どうなる事やら。 とはいえ、今の彼は、もう正気を投げ捨てて突っ走ってしまうほど弱っていないので、はあまり心配していない。 いや、正気どころか冷静に破滅を撒き散らせる今の方が、よりたちが悪くなったかもしれないが……。 彼がここで見つけて興味を持つというなら、が始末してきた研究に関するものの可能性が大きいだろう。 科学部が、の存在の異質さに気づき、セフィロスとの間の子を狙っていた事は、彼にも昔、話した事があった。 当事者の一人であるが今日まで忘れていたその話を、彼が覚えているかは分からない。 もし忘れていても、聞けば思い出すくらいには忘れがたい話だ。 思い出して嫌悪感や怒りがぶり返す事はあっても、怒り狂うことはないと信じたい。 彼が思い出さないままいてくれるならそれで良しと思い、合流した時に話をしなかったのは確かだ。 けれど、直接聞かされた研究の内容を、口にすることに抵抗があったのも間違いではない。 昔の朴念仁のままであったら、何も感じる事無く口にしていただろうが、これだけ長く惚れた男と一緒にいれば、いくらでもその辺の情緒は成長した。 セフィロスに告げるとしても、少し時間がほしかったのだが、現実はそんな彼女の心情など慮ってはくれないようだ。 開けっ放しの扉を覗き込むと、室内は入り口付近だけ荒れていたが、奥は綺麗だった。 机の上に書類やカップが置きっぱなしで、埃が積もっているのは2階と同じだ。 セフィロスは、部屋の一番奥にある大きなキャビネットの前で、何かの書類を見ている。 いくつか照明がついているとはいえ、暗い中で、よく読めるものだと思いながら、はホーリーで辺りを明るくした。 「セフィロス、何をしているんですか?」 「……少し、気になるものがあっただけだ」 「情報は一切持ち帰るなと言われたでしょう?目を通すのは、やめたほうが良いのでは?」 「…………」 一縷の望みをかけて、軽く注意をしてみたが、彼は引く気がないようだ。 ちらりと視線だけを向けてくるセフィロスは、の予想より機嫌が悪い。 物言いたげに、しかし躊躇う様子の彼に、その手にある書類が予想通りのものだと彼女は確信する。 が近づくと、セフィロスはさりげなく書類の順番を入れ替える。 けれど、目が良い彼女には無駄な抵抗で、隠された書類ある顔写真が見えてしまった。 今、書類の一番上にあるのはセフィロスの顔写真いりの書類だが、二人の情報が揃った書類という時点で、もう間違いは無く、は小さくため息をついた。 「私の血の研究と肉体の復元、それに、貴方との間にできる子供の研究について……ですね」 「知っていたのか?」 「さっき下で始末した研究員が、その研究をしていました。すぐ報告すべきとは分かっていたのですが……自覚する以上に、私は不快に感じていたようです」 「……それで、言いにくかった……か」 「ええ。できれば、もう数十分程度は、落ち着ける時間が……いえ、もう済んだ事ですね。失敗に終わり、これから痕跡も消す研究ですから、今更言う必要もないとも思いました。それに……貴方は怒るでしょうけれど、正直、貴方が知れば、心に負担をかけるのではないか、と。貴方がこの研究を思い出さずに済むのなら、言わない方が良いのでは……とも」 「、お前は、過保護が過ぎる。あまり、俺をみくびるな」 「そうですね……その通りです。すみません」 もっともな言葉に、は大人しく謝罪するが、再び彼の目が書類に向くと、目を向けずにいた嫌悪感が形になってくる。 ああ、だから終わったことにして思考を囚われたくなかったのかと自覚するが既に遅く、兜と布で隠した顔が不快に歪んだ。 どうして警備室の奥などに研究資料があったのか。 研究資料が厳重に守られたデータではなく、紙に出せる保存の仕方なのは、雑巾白衣の研究が窓際を通り越して倉庫部署だったからだろうか。 下手に研究が注目されて面倒が増えなかった事だけは幸いだが、何故研究室の外に持ち出したりなどしたのか。 余計な事をしてくれなければ、この不快感も自覚する事無く過去の一つとして忘れる事が出来ただろうに。 そう考えて、は憎々し気に目の前にあるキャビネットの中に目をやる。 セフィロスによって開かれたらしいその中には、何かを抱える形で座り込んでいる白衣の遺骸があった。 3階の廊下にあった遺体と同じく、まだ白骨に至らないそれは、頭の半分がなく、手には銃を持っている。 キャビネット内部に残る飛び散った跡は錆び、黒く跡を広げていた。 その研究員が何を思って資料を持ち出し、命を絶ったかは分からない。 けれど、持ち出し隠すというのなら、いっそ燃やしてくれればよかったのにと、は内心でため息をついた。 の魔法で室内が昼間のように明るくなったためか、セフィロスは近くのデスクに腰を下ろし、本格的に書類に目を通し始める。 たまに数枚まとめて飛ばしているのは、彼にも分からない内容の部分なのだろうか。 研究員たちが何を作ろうとしていたのか。 それを貴方に知られる事も不快なのだ。 そう言って書類を取り上げたくなるが、その後彼に自分の口から言うのも気が進まない。 この体の所有権が、セフィロスにもあるという感覚になっているせいだろうか。 昔とは違い、受けた侮辱を理性的に受け止め、淡々と告げて処理できないのだ。 それで結局、何も言えず、何もできず、書類を見て研究内容を知っていく彼を見ているしかできないのだから、情けない。 傍らで見上げても、書類を見たままで振り向いてくれないセフィロスは、きっと何も言わず済ませようとした事を少し怒っているのだろう。 だがそれでも、子を成すための臓器を複製しようとされていたとこの口で言いたくないし、彼が資料を見ている今も、できればその部分だけ都合よく資料が欠損していてほしいと思っている。 胃や心臓を作ろうとしていたならこんな気持ちにならなかったのに、本当に神羅の科学部はロクでもない、と、は大きなため息をついた。 「……」 「すみません、煩かったでしょうか?」 「いや。それよりも、負担が大きいなら、隣じゃなく、下で待っていたらどうだ?」 「ありがとうございます。ですが、それもそれで、落ち着きませんので、ここにいさせてください。貴方の隣が、一番落ち着くんです」 「わかった。できるだけ、早めに終わらせる」 「ええ。おねがいします」 彼の腕にそっと頭を預けたは、視界に書類の文字が入らないよう、静かに目を伏せる。 鎧越しではセフィロスの体温も心音も感じられず、その事に少しだけ気落ちした彼女は、代わりに彼の魔力に感覚を澄ませた。 時折起きる彼の魔力の小さな絡まりをそっと解し、感情に釣られて乱れる魔力に、自らのそれを流して整える。 呼吸を重ね合わせるようなそれを繰り返している間に、いつの間にか時間は過ぎていった。 グシャッという紙を潰す音に、は微睡みから覚めるように瞼を開ける。 見れば、セフィロスが読んでいた書類は、彼の手の中で丸められている。 それなりに枚数があっただろうに、よく丸めたものだと思いながら眺めていると、彼は書類をキャビネットの遺体に投げつけ、ファイアで火を付ける。 「あ……セフィロス、それは……」 消火装置が起動してしまうのでは?と続けようとしただったが、火災警報が鳴り響く方が早かった。 といっても、そちらも故障しているらしく、警報音は妙な途切れているし、天井にあるスピーカーの殆どは無音だ。 天井にある消火装置が作動したが、水ではなく溜まった錆を噴出させて、赤茶色の水を吐き出したかと思ったら数秒もたず錆が詰まって止まった。 「鎧を着ていて正解でしたね」 「……」 お互いの兜の上に積もった錆をエアロで飛ばすと、は燃えている遺骸を見て少し考え、そのまま燃やすことにした。 「そんなに怒るのなら、読まなければ良いでしょう?」 「……お前と俺が関わる事だ。知らないままにしておく気にはなれなかった」 「……なら、仕方がありませんね」 「お前は、どこまで研究員に聞いた?」 「さきほど申し上げた内容くらいです。ああ、でももう一つ。私の臓器の一つを、熱心に復元しようとしていたのは聞きましたよ」 「……そうか。奴らは、他にも色々試していたようだが、聞きたいか?」 「……では、一応聞いておきましょう」 「わかった」 確認はしているが、セフィロスは多分、聞いてもらって少し楽になりたいのだろうと考えて、は何でもない顔をしながら頷く。 「奴らはお前と俺の間の子供を狙っていたが、お前が死んだ事で研究は一度頓挫。そこで偶然、お前の血から細胞の一部の培養に成功し、魔力と未知の力が宿っていた事を発見した。そこから、お前の肉体の復元を考えたらしい。 だが、その後に俺が死んで、当初の目的である子供の確保が不可能として、プロジェクトは失敗。その責任をとり、研究者たちはこの施設の研究所に追いやられた。 しかし連中は諦めず、今度はお前の細胞が持つ力に目をつけた。その力を宿し、使いこなす者が現れれば、新たなソルジャーを生み出せる。当然失敗続きだったようだが、ある時、研究員の一人が、俺が作られた方法を知り、お前の細胞をつかって同じ実験をしようとした。母体として選ばれたのが、その女研究員だが……科学者だが、多少はマトモな倫理観があったらしい。女は実験体にされる前に数人の仲間と研究室から逃げ出し、警備兵に助けを求めた。その時、このトンネルは既に瓦礫で塞がり、孤立していた。結果、この狭い穴の中で研究者と警備兵の間で争いが起きた」 「それで、潰しあいの結果がこれですか」 閉ざされた世界から、更に狭い空間に閉じ込められた狂人たちの末路に、は呆れを隠さない目で炎を眺める。 そこで科学者としての欲を優先したり、不遇な境遇と自己憐憫に酔って実験体になったりしなかった分、燃える遺骸の女はセフィロスを生んだ女よりマシかもしれない。 そういえば、セフィロスはジェノバについて口にすることはあるが、自分を産んだ女について口にしてきたことはないな……とは思った。 が、藪を突いて蛇が出るところかヘドロが噴出する結果になる可能性があるので、その女の事は黙っておくことにした。 砂になって世界を散歩していた頃、リヴァイアサンがお気に入りと言っていた場所の近くで、それっぽいのが封印状態になっているのを確認した事はあった。 一応セフィロスに関わる人物だからと思い、ルーファウスに頼んで色々な情報を貰ったが、調べれば調べるほどは首を傾げる事になった。 彼を生んだ女の思考回路と行動が、の考え方と違いすぎて、全く理解できなかったのである。 その上で、漏れ出る意識の声と感情を聞き、本質的に合わない人種だと感じたは、一切かかわらない事を決めた。 その後大滝の中のソレがどうなり、今どうしているかは分からならない。 蘇ってからこれまで、セフィロスすらその存在について口にする事はなかったので、も今の今まで思い出さなかった。 多分、今後関わる事も、思い出す事もないと思う。 「自分の死体を、この研究と計画された実験を知った人間への戒めにするため、資料を持っていたようだが……」 「本当に危険だと思っているなら、小細工せずに燃やすべきでしたね。見つけた者次第では、逆に興味を持って研究を再開するでしょうに……」 特に、新生ソルジャーを擁し、日々更なる増強を進めている今のWROは、失敗したとはいえ神羅の研究結果は良い参考資料になるだろう。 トンネルの内情は知らなかっただろうに、即座に自分達を送り込んだルーファウスの判断は流石だ。 神羅の時代を知らない世代ばかりになった今、WROの科学部門が、昔の神羅科学部のようにならない保証はない。 現に、この隠し港の情報を得て数日で、神羅からの立ち入り禁止要請を無視して調査団が到着していたのだ。 余裕があって結構なことだが、そんなものが長く続く事など、歴史を鑑みただけでもないとどうして気づかないのか。 その余裕すら無知と無力からもたらされていると気づかない呑気さが、は少しだけ羨ましくもあった。 「しかし、施設も研究も塵にして沈めますから、その死体の女の望みは叶いますね。丁寧に資料ごと火葬してあげていますし、成仏するでしょう」 「火……まあ、そうだな」 頭にきて燃やしているのを火葬と言うのはどうか。 そう思ったセフィロスだったが、弁解するほどの事でもないので、否定するのはやめておいた。 自分の体を研究対象として見られ、生殖器官の復元まで研究されていたというのに、は不快だと言った以外、態度はいつも通りだ。 昔、この研究の話を宝条からされたと言ったときも、は淡々としていて、感情らしい感情は見せなかった気がする。 考えすぎないようにしているのか、ただ狂人のやる事だと割り切っているのか。 恐らく両方だと思うが、はっきりとは判断できず、セフィロスは部屋の中を歩き出したの背を見る。 情がある相手には言葉と心を尽くすが、そうでない相手には思考を割く時間すら惜しむような、極端な彼女だ。 この一見興味のなさそうな態度が、嫌悪感の大きさの現れなのだろうか。 本当に何事もなければ隣で微笑んでいるが、背を向け、こちらを見ないのは、もう話題を振ってほしくないからかもしれない。 変なところで分かりにくく、それでいて分かりやすいのは、相変わらずだ。 そう思うと同時に感じた軽い空腹感に、セフィロスは気持ちを切り替える。 室内をもう一度見回し、の手法に倣って、隠れた通路の類がない事を魔法で確認すると、彼は部屋の入り口あたりのデスクで雑誌を見ているの傍へ行く。 「、ここの確認は終わりだ。そろそろ出るぞ」 「あ、ちょっと待ってください。貴方が載ってる雑誌があったので、少し待ってください」 「…………」 「ふふふっ。セフィロス、この写真、仕事の合間ですか?凄く面倒そうな顔をしていらっしゃいますよ?」 「場所は、神羅ビルの展示室だな。仕事の合間にねじ込まれた取材だろう」 「内容は武器についてで、貴方のコメントはありませんね。次のページ、貴方の昔のお仲間ですが、読みますか?」 「、仕事中だ。それに、メモ紙一枚の情報も持ち帰らないんじゃなかったのか?」 「おやおや……。では、ここまでにしましょう」 小さく笑うと、はあっさりと雑誌を閉じ、ダラダラと赤茶色の水を垂れ流す天井のスプリンクラーを氷で固める。 ブーツの裏に打たれた鉄の鋲が錆びないよう、錆が溶けた水たまりを避けて廊下へ出た二人は、来た時と同じく鎧と靴の音を響かせながら階段を下りた。 「お腹がすいてきましたねぇ……」 「そうだな。それに、早く帰って風呂に入りたい」 調べ物も終わり、後は帰るだけとなると自然と気が緩んでくる。 駐車場からトンネルへ戻り、港へ向かって歩いていた二人は、未だ遠い召喚獣達のお祭り騒ぎの音に、揃って小さくため息をついた。 「今、夜の6時ですから……ミディールに着く頃には、早くて日付が変わる頃でしょう。天井をブチ抜いて外まで近道しますか?」 「いい案だが、リヴァイアサンが囲んでいる海域の外は、WROの飛空艇が来ているはずだ。避けた方がいいだろう」 「ああ、確かにそうですね。流石に、これ以上彼らの戦力を削いでは、可哀想です」 「……、それは、調査船をボート一隻まで残さず沈めた奴の台詞か?」 「あれは駄目と言われているのに乗り込んでいた彼らが悪いんですよ。自業自得です。上に飛空艇がいたとしても、それはここへの進入のためではありませんから、直接攻撃するのはよくありません」 「……そうか」 そういう線引きなら、と納得したセフィロスは、兜の口元をずらすと、持っていた水筒かに口をつける。 もはやトンネル内の臭気には慣れて、水分補給も抵抗がなくなっていた。 それでも、空腹を感じているのに軽食をとろうという気にはなれず、体に染みついているだろう匂いも考えると早く帰りたくなってくる。 その感覚はも同じく、歩きながら適度に水分はとっているが、不衛生な臭気が残る空間で何かを食べる気にはなれなかった。 「セフィロス、飛空艇が来ているなら、施設の破壊の際も、身を隠しましょう」 「具体的にはどうする?」 「港に着いたら、装備をアイス系とクリスタル系に変えて、シヴァの騎士に紛れ込みます。その後、彼女と共に上空へ移動し、他の召喚獣と共に施設を陸地ごと破壊しましょう」 「それは構わんが、騎士に紛れたまま目立たず撤退は難しい。どうする気だ?」 「その頃には、WROの飛空艇は離脱していそうですが……。うですね、もしまだいたら、適度にこの辺りを破壊して、シヴァには海上に降りてもらましょうか。私たちはそのまま海中に潜ってシルドラに回収して運んでもらえれば見られないでしょう。他の召喚獣にはそのまま1時間ほど暴れてもらいます」 「口に入れられて移動になるのか?シルドラは嫌いじゃないが、俺はあの移動方法は嫌だ」 「安心してください。今の私たちは相当匂うでしょうから、シルドラだって断わるでしょう。私たちが海へ潜る際、氷の箱を作って中に入り、シルドラにはそれを運んでもらいます」 「ならいい」 「シルドラはあまり高速の移動には向いてませんから、一先ず最寄りの……ゴブリンアイランド辺りに運んでもらいましょう。こちらの破壊が一段落したら、バハムートを呼んで運んでもらいます」 「わかった。……風呂に入るのは、大分先になりそうだな」 「では、今日はアイシクルエリアの家の方へ帰りますか?もう集落には誰も住んでいませんから、人に見られる事もありませんし」 「……そうだな。なら、そうしよう」 昔住んでいたアイシクルエリアの集落は、生活の便や子供達の学校を理由に、一昨年、全員が別の集落へ移り住んだ。 それに伴い、WROの出張所も無くなり、今はとセフィロスの家を管理する業者が、月に一度集落を訪れるだけになっている。 2人は年に数回、夜中にこっそりと訪れて、集落へつながる道の整備をしていた。 それ以外にも度々訪れるが、集落に人がいなくなったおかげで、北の家は以前より住みやすそうだ。 見た目が変わらない事を不審がられないように……という移住の理由もなくなってしまっている。 ただ、今のミディールの家は、近くにある温泉から自宅の風呂まで湯を引いているので、わざわざそれを捨てて北に引っ越そうとは思えなかった。 それに、いよいよ足腰が弱ってきたルーファウスから今更離れるのも気が引ける。 これまでも、北方での仕事が遅くまでかかった時は、アイシクルエリアの家を使っていた。 今回もそこで風呂や食事を済ませながらカーフェイたちに報告を入れ、後の指示を待ちながら休憩することにした。 「、召喚獣たちは、まだ暴れているのか?」 「ええ。こちらの魔力を好きなだけ使って良いと言っていますからね。誰が一番強いか決めると、息まいていましたよ」 「人の魔力を使って勝負した結果に、信憑性はあるのか?」 「その時、相手を倒せれば、何でもいいのでしょう」 つまりは遊びだ。 ならば思う存分楽しめば良いと、は一呼吸ごとに減っていく自分のMPに目を瞑る。 召喚獣を殆ど呼び出して遊ばせているので、MPの減りは早いが、同じくらい回復も早い。 とはいえ、回復速度はの疲労によって変化するので、MPが3割を切る事があったら召喚獣は半分帰すつもりでいた。 目算で、夜明けまでは問題なさそうだが……。 暫くトンネルを歩いていると、魔法でぼんやり照らされた道の先に黄色い影が見えてくる。 行ったときから全く動かないデブチョコボは、眠っているのか顔を体に埋めていて、天井との隙間から外の音が良く聞こえてくる。 「賑やかだな……」 「よく飽きないものです……。では、とりあえず、チョコボは私が襲われる可能性があるので、先に帰してしまいますね」 「襲う?あのデブチョコは動くのか?」 「信じられないかもしれませんが、私が油断すると、奴はあの巨体で回転しながら向かってきます」 「すぐに帰せ」 「はい」 もしが言う通りデブチョコボが襲ってきた場合、セフィロスも間違いなく巻き添えを食って圧し潰される。 ただでさえ鼻が麻痺するほど色々な匂いがついているのに、チョコボ臭までつけては、何度体を洗えば良いかわからないではないか。 即座に指示したセフィロスに従い、はいびきをかいているチョコボを帰す。 港に氷の騎士の一団を確認した彼女は、セフィロスと共に装備を変えると、予定通り撤退を開始した。 |
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2024.11.06 Rika |
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