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春期休暇が終わり1カ月を過ぎると、建物は殆ど出来上がり、後は内装の細かな部分と、備え付けの家具を設置するだけとなった。 セフィロスがいる学科の生徒と、建築の学科の上級生数人を残し、を含めた残る生徒は一端ジュノンへ引き上げる事となる。 最後に一緒に行った墓参りで、は何かあったら遠慮せず連絡するようアーサーに言ったが、彼は手に負えない魔物が出たら呼ぶかもしれないと言って笑うだけだった。 それより今、墓地の草刈りをしてほしいと言われ、他にも小さなお願いをいくつかされたが、それだけだ。 アーサーにも、この村の人々にも、己の力で生きている自負がある。 きっと、自分達で対処できない危機が訪れたとしても、呼ばれることはないだろう。 彼の墓に参るのが先か、自分がこの世界を去るのが先かと考えながら、2週間後に帰る予定のセフィロスを残し、は村を後にした。 Illusion sand ある未来の物語 125話 アーサーの村に行ったのと同じように各地を訪れ、その地方独特の家を建てながら、季節は廻った。 ウータイの山奥、ミディール東の離島、他にも、誰も名を知らないような地域の僻地へ足を運んでは、気候風土に則った建物の作り方を学んだ。 土地を移る度に、ともに学んでいた人間は減ってゆく。 卒業前に半分が脱落するといわれたが、たちの同級生は8割が残り、海洋の孤島で夏を迎えた後、無事に卒業した。 共に地元へ来ないかという同級生たちの誘いを断ったとセフィロスは、1カ月ほどジュノンで休養すると、ミディールの山奥に移り住んだ。 昔、隠れ家の一つとして用意したそこは、既に建物が朽ちていたが一応町までの道は通っていて、自然に湧いた温泉がある。 アイシクルエリアの家のような、街中から離れた場所だが、ルーファウスの家に行くにはいくつか山を越えるだけなので、十分便利な場所だった。 足腰が弱り、杖を使うようになったルーファウスの元へ毎週末顔を出しながら、2人は手に入れた土地に学んだ知識をもって家を建てる。 魔法を駆使し、召喚獣を使い、特にシヴァのところの氷の騎士を何体も使って作った平屋は、完成まで半年をかけ、少々不格好なところはあったが、新卒が初めて作ったにしては上出来だった。 後は、今後じっくりと経験を積んでいけば良いと妥協して、2人は再び自給自足の生活を始める。 自由な身になった途端、ルーファウスがどこからともなく極秘の魔物討伐依頼を持ってくるようになったが、それはそれで暇つぶしに丁度よかった。 今日もはカーフェイから依頼の連絡を受けたが、今回はメモはとらないでほしい事と、詳細は直接話したいと言われる。 仕事の不穏さについ溜め息を漏らし、依頼する側のくせに同じく溜め息をついたカーフェイを軽く慰めると、彼女は電話を切って畑にいるセフィロスの元へ向かった。 「セフィロス、カーフェイから急ぎの依頼がきましたよ」 「またか」 春の畑で雑草を燃やしていたセフィロスは、先週に続き届いた依頼に首を傾げる。 魔物討伐の依頼は、小銭稼ぎには丁度良かったので、頼まれて迷惑に思うことはなかった。 だが、北で雪が降り始めた頃から、週に一度は依頼が来るようになり、無駄に増えた魔物を狩りに行っている。 最初は食物連鎖の底辺に近い魔物が増えていたので気にしなかったが、最近では大型のドラゴンやベヒーモス系の異常繁殖が確認されていた。 WROは強力な魔物の駆除にかかりきりとなり、弱い魔物の増加は民間が引き受けていたが、中間以上の魔物を駆除できる人間は少ない。 その中で手に負えず零れていた依頼がセフィロス達にまわされている。 「表向きは、ミッドガル北部海岸で魔物の異常繁殖。WROは沼地とエッジ近辺の魔物駆除で手が回っていないから、と」 「厄介な案件か?それは久しぶりだな」 嫌そうな顔をするでもなく、軍手をはずした彼に、は意外に思いながら片づけを手伝う。 駆除依頼は受けていたが、何だかんだで賑やかだった学生生活が終わって半年以上だ。 春の種まきも終わったところだったので、もしかすると、セフィロスは少し退屈していたのかもしれない 増えた駆除依頼、急激に武力を強化される人類に、古代種の力を持つ人間の爆発的増加。 もう少し経てば、世の中は今より騒がしくなりそうだが……と思いながら、はちらりと遠くの空に目をやる。 けれど、自分達の平穏に影響を与えるものなど、片手で数えるほどにあるかどうかだ。 会話の途中で逸れる思考に、自分も退屈していると理解しながら、はそっとセフィロスに身を寄せる。 自分達が住んでいるのは山の中なので、他に誰の気配も感じないが、依頼内容は極秘だ。念のため声を潜めるくらいは、形式定期に必要だろう。 「今回の依頼は、私も一緒に行きますね。依頼の大元は神羅。現場は、北部海岸にある神羅の隠し港。最近偶然発見されたそうです。そこの魔物の駆除と調査の極秘任務だそうですよ」 「……その前に、ルーファウスと話をしに行く」 「ええ。詳細は直接話すそうですし、そうしましょう。ルーファウスは港の事を知って、更に胃が弱ってしまったそうですから、心配です」 「だろうな。俺も頭が痛い」 あと数年で年齢が三桁になるのに、新たな負の遺産を発見されて、さすがのルーファウスでも体調を崩したそうだ。 いっそ思い切ってエッジあたりまで海に沈めようかと思いながら、はセフィロスと共に出かける準備をする。 ワンピースを着ていたは、セフィロスに服を選んでもらい、動きやすいパンツスタイルに着替える。 ベッドに腰を下ろして靴下を履きかえていた彼を見て、何となくその前に立ったは、首を傾げた彼のシャツを掴んで脱がせるとその頬に口づけた。 「、そのシャツは気に入らないのか?」 「いいえ?……おや、もしかして、着替えた後のシャツでしたか?」 「ああ」 「それは失礼しました。てっきり農作業中に着ていた肌着かと……」 勘違いで上半身を裸にしてしまった夫に、は詫びながら着用を手伝う。 呆れた顔で着替えを終えた彼に手を引かれ、引っ越しと同時に買いなおした古い車に乗ると、ルーファウスの家へ向かうべく細い山道を進んだ。 「忙しいだろうに、連絡から1時間も経たず足をはこんでくるとは。お前たち夫婦は、よほど私が好きなようだ」 「ええ、そうですね。大好きですよ、ルーファウス」 「……体調が悪いなら寝ていろ」 ソファに腰を下ろし、皺だらけの顔で悠然と微笑むルーファウスだが、 いつもと違い紅茶にもお菓子にも手を伸ばす様子がない。 普段の食事でも食欲が落ちているためか、顔色もいつもより芳しくなかった。 そのまま死ぬほどではなさそうだが、無理をさせない方が良いのは違いない。 とセフィロスから揃って労わられると、ルーファウスは皮肉気に片方の口の端を上げ、深く息を吐くと共に肩の力を抜いた。 「まさか、これほど月日を経た今、新たな負の遺産を見つける事になるとは、想像もしていなかった」 「隠された港ですからね。仕方がありませんよ。まして、奥まった岸壁の影にあったのでしょう?」 「ミッドガルの地下にあれだけの空間があったんだ。それ以上何かあるとは、普通は考えん。それに、もう神羅はお前の孫の代だ。今更何かを背負い込もうとはするな」 「背負うのは、棺桶の蓋だけにしろと?」 「え?ルーファウス、遺体は私に燃やして灰にしてほしいと言っていませんでしたか?棺桶はいるんですか?」 「、物の例えだ。それと……棺桶は、多分必要だ」 「その通りだ。職人が燃やすことに涙するような、良い木材で棺桶を準備している」 「金属が混ざっていなければ灰に出来ますから、ご自由にどうぞ」 「ルーファウス、身辺整理は結構だが、流石に棺桶の手配を部下にさせてやるな」 台所で洗い物をしながら、複雑な表情で見てくるガイに、セフィロスは小さくため息をつき、ルーファウスは楽しげに笑う。 あからさまな死後の準備は棺桶の注文くらいのようだが、家の中は富豪の隠居先らしかった以前とは、随分様変わりしていた。 上等な家具なのは相変わらずだが、リビングに置かれているソファはルーファウスがすぐ横になれるものに変わり、杖での歩行を妨げないよう物が少なくなっている。 いつぞや買って皆を心配させた大型のハープは、1年ほど使われていたが今はリビングの隅に飾られていた。 ただの飾りと化しているようだが、週に一度は街から奏者を呼んで音色を楽しんでいて、時折とセフィロスも招かれる。 棚にコレクションしている酒類はまだあるが、開けられるのはとセフィロスが訪ねた時のみ。 ルーファウスは口をつけず、が食事の共に時折貰う程度だ。 因みに、ルーファウスの死後、その酒はとセフィロスが貰うことになっていた。 おそらく、細かく見れば、もっと色々なものが整理されているのだろう。 そんな、死後の準備をゆっくり進めていたルーファウスに、神羅の隠し港はまさに寝耳に水だった。 老体なのだから他の人間に任せろとセフィロスに重ねて言われ、部屋の隅に立ちながら何度も頷いていたカーフェイが説明を代わると言って、ようやくルーファウスは引き下がる。 「それじゃ、俺から代わりに説明しますね。さんとセフィロスさんは、忘らるる都の湖底から、白マテリアが発見されたのは……知らないみたいっスね」 「ええ。最近は、ラジオを聞き流すくらいですから」 「新生古代種が、過去の遺跡を調査しはじめたのは、何年か前にニュースになっていたな」 「そう。その調査ッス。その結果見つかったのが、白マテリア。最初は新種のマテリアかと思われたんですがね、ヴィンセント=ヴァレンタインが保管していた研究施設から盗もうとしたんですよ。で、存命中の元星を救った英雄さんたちから事情聴取して、謎のマテリアが、星を救ったあの白マテリアだって発覚したんですよ」 「あの赤マント、窃盗で捕まったのか」 「雰囲気だけでも不審者だったからな」 「あ、まあ、そこはどうでもいいんス。で、問題は今の世情です。ここ数年で、また各地で魔物が急激に増えてきました。その上、新生古代種の増加と、これは一応隠されてますが、新生ソルジャーも同じくらい増えてます。……ってことで、WROも他のとこも、また昔みたいな変種騒ぎが起きるんじゃないかって戦々恐々。そんな中発見された白マテリア。で、次は神羅の隠し港です」 「遺物として忘れら去られた力を、得られると浮き足立った……か?」 「今の世代は、過去を学んでいないのか?」 「学んでますよ。でも、喉元過ぎればってやつッスね。それに、当時を知る人間は、もう殆ど生き残っちゃいません。今の世代は、復活した古代種がいる事で、ちょっと自分達の正義を過信してるみたいッスね。昔の人間が扱えなかった力でも、自分達ならどうにもできる。人類が力を増す流れで発見された力なら、自分達の糧になるものだ。そう勘違いをし始めてる」 「幼子が、そうとも知らず地獄の蓋をあけるから、止めてくれという事か……」 「ルーファウスが胃を弱らせるわけだ」 奢り高ぶる結果怪我をするなら、それは成長に必要な糧ではないか? そう目で言うとセフィロスに、カーフェイは苦笑いをしてタブレットを見せる。 それは何処かで見たことがあるような、大きな機械が並ぶ部屋で白衣を着た人間達の姿で、の目が冷たく細められた。 「残念っスけど、あの時代をその目で見ていない世代には、何言っても分かんないんスよ。傲慢はどんな賢人も盲目にさせます。過去の栄光が偉大であるほど、その先の僅かな進歩を手にしてる奴は、歴史を軽く見る。先人の地道な努力を我がものと勘違いし、大きな傷跡を目にしながら、想像の中にある栄光の続きに目を奪われ、己の過信に気づかない。だから、閉ざされた箱が血まみれの棺桶でも、財宝があると思い込み、伸ばしちゃあいけない手を伸ばす。後は、過去の後追い。同じ轍を踏んでいると気づかずに、周りを巻き込んで破滅していく」 「どこの世界も、そういう人間はいるもの。それもまた、人間らしい姿かもしれん。……それで、どうしてほしい?」 「隠し港の調査、生息する魔物の殲滅……ってのは、今の神羅へのポーズです。こちらからの依頼は、完全な破壊っス。昔の神羅ですからね。奥には色々あると思います。なので、メモ紙一枚残さないよう、徹底的にやってください。こっちは俺とガイしかいないんで、ロクに調査もできてません。発見から、もう5日経ってます。恐らく、隠れて入り込んでる奴らもいるでしょう。でも、情報は一つも持ち帰らせるわけにはいかない。そこにいるのが何処の誰だったとしても、必ず消してほしいんス」 「……ルーファウスの血縁がいたとしてもか?」 「神羅関係者なら尚の事、生かしておくわけにはいかないっスね。立ち入り禁止って言ってんのは現神羅社長っスから。それに、始末しろって言ったのは当のルーファウス様っスよ?」 「そうか……ならば私は引き受けよう。港の破壊には、召喚獣を使う。徹底的に潰し、海に沈めよう。地形が変わるが、問題ないな?」 「頼もしいっスね。ちょっと地形が変わるぐらい大丈夫っスよ。ただ、港がどこに繋がってるかの調査と、その先に施設があったなら、そこの破壊も忘れないでください。目的は、神羅の遺物の徹底破壊です」 「何か残せと言われる方が、逆に難しいんだ。お望み通りにやってこよう」 引き受けなければ、ルーファウスもガイもカーフェイも成仏できなさそうだし、レノあたりも化けて出てきそうだ。 断られるという前提もなく話したカーフェイに、は少々思うところがあったが、ここは飲み込むことにした。 それに、神羅関連の物の破壊は、いずれこの世界を去る前に、通る事になると思っていたのだ。 途中から黙ってしまったセフィロスが気にかかりはしたが、彼が気乗りしないならが一人でやれば良いだけの事。 因縁ある組織相手なのだから、そこは自主性に任せようと決めると、は急ぎの出発を求めるカーフェイと細かい点の打ち合わせを始めた。 件の隠し港まで、一緒に行く気ではあるが、その先は意見を求めてこないに、セフィロスはその意図を察して甘える事にした。 廃墟となったミッドガルや神羅ビルへ足を踏み入れる仕事は何度かしているが、神羅の痕跡を闇に葬る仕事は初めてになる。 仄暗い喜びを感じることはなく、いつもの依頼のように淡々と引き受けるでもない。 困惑も蟠りもないのに足を止めたくなったのが、この世界との別れが近づいた事に気づいたからだと理解するには、ほんの少しだけ時間がかかった。 それは、今の安穏とした暮らしや、慣れた文明、社会常識との別れであると同時に、晩年になってようやく友人らしい友人になったルーファウスとの別れでもある。 「ルーファウス、お前、今幾つになった?」 「もうすぐ97だ。セフィロス、お前は、とうとう100歳を超えたな」 「半分以上は死んでいたがな。……だが、確かにお前は、棺桶を準備する年だ」 「そうだろう?私自身、これほど長く生きる事になるとは、思ってもみなかった。皮肉なものだ。多くの人々から疎まれ、憎しみの対象にすらなった私が、結局最後まで生き残っている」 「が味方しているなら、簡単に死ぬ方が難しい」 「その通りだ。セフィロス……先月、クラウドが死んだ。知っていたか?」 「毎日ニュースになっていた。嫌でも目に入る」 「そうか……。不老のヴィンセント=ヴァレンタイン、長命種のレッドXIII。この2人は生き残っているが、クラウドの死は、我々の世代の終わりを意味している。にも拘わらず、我々神羅の遺構が発見された。その始末を、過去を知らず見くびる今の世代に押し付ける事は、決して許されない」 「ルーファウス、お前はもう死んだ人間だ。亡霊は亡霊らしくしていろ」 「残念ながら、私はまだ生きている。ならば、成すべき事から逃げるわけにはゆかない」 なるほど、こういう所がと似ているから、長く友人をやっているのか。 ……と、今更理解しながら、セフィロスはため息をついて冷たくなった紅茶に口づける。 ルーファウスは泥沼と知っても神羅を背負い続ける覚悟をして生きていた男だ。 神羅の泥は受け入れても、神羅の下で償い生きていた者達に、更なる汚泥を塗り付ける事は、許容できないのかもしれない。 今更セフィロスが何を言ったところで、投げ出す事も下の世代に託すこともないだろう。 自分の棺桶を用意しているくらい死にかけのジジイになった友人の頼みだ。 遺言と思って聞いてやっても良いだろう。 「セフィロス、私は他の誰でもない、お前にこそ、この仕事を頼みたい。お前の手で、我々神羅に、最後の幕を引いてくれ」 「…………」 この男を、神羅から解放してやったら、どんな風に生きられるのだろう。 もしも、再び若返らせて、が生まれた世界に共に連れて行ったなら、今度は自分のためだけに生きようとしてくれるだろうか。 そんな淡い夢を脳裏に過ぎらせながら、セフィロスは小さく息を吐いて頷く。 冷めた紅茶の最期の一口を飲み干し、皺だらけの友の手を見つめると、彼は静かに立ち上がった。 「この依頼を断っても、お前が死んだら、世界の半分は叩き潰す。神羅の施設がまだ残っていても、その時に消えて無くなるだろう」 「何とも物騒な話だ。年寄りを安心させてはくれないのか?」 「お前の一番の心残りを絶ってやるのだから、むしろ喜んでほしいものだ」 「世界の半分を犠牲に……か。最近、古い部下たちが恋しくなっていたというのに……」 「残念だが……その内臓の様子では、あと3年は平気だ」 もしかすると、もっと生きるかもしれないと思いながら告げると、珍しくルーファウスが驚いた顔をする。 最近の食欲低下が悪化すれば、もう少し短くなるかもしれないが、本人が思っている以上に体の中が健康なのは間違いない。 思ったより驚いている様子だが、部下2人がしっかり面倒を見ているので、ルーファウスの事は放っておいても大丈夫だろう。 そう考えると、セフィロスはルーファウスに別れを告げ、先に家から出たを追った。 「おやおや……これはまた大盛況ですね」 「神羅の力も衰えたという事か」 北の海上。バハムートに乗って目的の隠れ港へ向かっていた達の眼下には、WROと書かれたいくつもの大型船があった。 直接の入港はしていない様子だが、調査団らしき小型の船が白く尾を引きながら港へ向かい海を走っている。 「WROと事を構える事になる。念のため、カーフェイに聞いておいた方が良いか?」 「誰が相手でも消せと言われてますし、答えは変わらないと思いますよ?ですが、気になるのならどうぞ。私は顔が見えない装備に着替えますね」 対人戦闘が起きても、せいぜい鼠の駆除と思っていたセフィロスに対し、は相手の数も規模も全く気にしていなかった。 メモ紙一枚残すなと言われたのだ。それが人になり、数が増えたとしても、始末しなければならない事に変わりはない。 ただ、思ったより敵の規模が大きくなったな……と思いながら、はリヴァイアサンとシルドラを召喚し、海上で停泊している船を海水の壁で囲む。 慌てふためく船員や、脱出を図ろうと動き出す船は、シルドラが吐き出した強力なのブレスで容赦なく行動不能にされた。 こちらを補足されるのは、至極面倒。 慈悲もなく結論を出すと、は召喚獣を大盤振る舞いで呼び出した。 目くらましは派手な方が良い。 ラムウが起こした雨のような雷が船の機械をショートさせ、オーディンの斬鉄剣が甲板のヘリを両断する。 港に近づく船はシヴァの吐息で波ごと凍り付き、氷上を逃げようとする人間はカトブレパスの瞳で石にされた。 既に港に入り込んでいた人間達はゴーレムによって行く手を阻まれ、イフリートの炎にまかれながら、タイタンに踏みつぶされる。 船の上から逃げ出した兵士たちは、最北の海のように冷え切った海水のまれ、悲鳴を上げる事もできずに沈んだ。 運よく小舟に乗り込んだ者達も海面から襲い来るレモラに突き飛ばされ、全身を痺れさせながら溺れる。 暴れたがってうずうずするバハムートの背で、は竜を模した青銀の鎧を着ると、布で顔と髪を隠す。 もはやカーフェイに連絡するどころではない地獄絵図に、セフィロスも呆れながら諦めて、と同じく全身鎧を着た。 「入り口は、ゴーレムたちが確保してます。では、行きましょうか」 「バハムート、頼んだ」 荒れ狂う波の飛沫がシヴァによって氷の騎士団に変えられ、体勢を立て直し始めたWRO軍と戦闘を始める。 一足遅れてやってきたフェニックスの炎が空を赤く覆い、舞い落ちる炎の花弁が、敗れて砕けた氷の騎士を何度も蘇らせた。 雲を吹き飛ばすような咆哮を上げたバハムートが、空の上から急降下し、炎の天井を突き破って、最も大きな軍船の上に着地する。 鉄塊が悲鳴上げてひしゃげるのも構わず、嬉々として吐き散らかすブレスが、辺りの船に穴を開け、天に届くような波しぶきを作る。 炎の天井に突入すると同時にフェニックスに乗り換えていたとセフィロスは、舞い散る炎と花弁に紛れ、無数に生まれる氷の騎士に身を隠しながら、混乱続く港へ到着した。 「まだ食いついているとは……今の人類、思ったよりやりますね」 「それだけ手抜きしておいて、何を言っている」 わざわざ召喚獣を呼ばなくても、魔法一発で全滅させられただろうと、セフィロスは兜の中でため息をつく。 気配も魔力も抑えたは、それでは逆に補足されやすいと答えると、戦場を一瞬で駆け抜けてゴーレムの後ろに隠れた。 そこにあっただろう巨大な扉は既に破壊されており、2車線ほどの幅があるトンネルが口を開けている。 WROの兵が立ち入った痕跡はあるが、彼らは召喚獣たちによって躯に変えられ、瓦礫と混じりながら通路の隅で山にされていた。 通路の奥は既に非常灯すら電源が落ちていて、漆黒の闇が続いていた。 その先が何処へつながるか、どれだけ続くか。 相変わらず神羅の闇の深さに、が肩を竦めたところで、セフィロスが追いついてきた。 セフィロスが呆れる気配を感じながら、は召喚獣たちに戦線維持を頼む。 エアロガでトンネルの中に新鮮な空気を送り込むと、中から風が幾つもの空気が通る音が響き、次いで異臭が空気と共に奥から押し出されてくる。 鉄が錆びた匂いと、水が腐った匂いをはじめ、様々なものが混じる臭気に、は口元を覆う布を抑えた。 隣では、セフィロスが腕で口元を覆い、小さく咳き込んでいる。 ある程度新鮮な空気を入れ替えて匂いが薄れると、通路の中に足を踏み入れた。 数メートル中へ進み、デブチョコボを召喚して道を塞がせると、はホーリーで道を照らす。 長く閉鎖されていた道は鉄板の壁が一部錆びているが、崩れ落ちる様子はない。 今度は探知の魔力を含めてエアロで通路を探ったは、数百メートル先にある不自然な隙間を関知した。 やはりあったかと思いながら、デブチョコボで塞いだ道を更に氷の科壁で塞ぐと、天井の換気口から溢れ出てきた大きな蜘蛛の群れをホーリーで塵にした。 |
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2024.10.15 Rika |
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