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Illusion sand 番外編もしもシリーズ Family Fanyasy 6 こんにちは皆さん。です。 前回に引き続き、今日は家族でコスタ・デル・ソルに来ています。 家族で楽しく夏休み・・・の、ハズだったんですけど・・・。 「ヤズー!ダメだって言ったでしょ!?」 「・・・だってコイツら、姉さんに悪い事しようとしたじゃないか」 「だからって喧嘩していいの?守ってくれたのは嬉しいけど、気絶しない程度にしなきゃダメじゃない」 「・・・だって・・・」 「皆が皆、ヤズーや父さんみたいに頑丈じゃないの」 「姉さんだって嫌がってただろ?姉さんは俺が守るって、いっつも言ってるじゃないか」 海の家の前で、数人の男を一瞬で倒した少年は、姉に怒られて頬を膨らませている。 的外れな説教をするは、素直じゃないヤズーに溜息をついて、彼の手をとった。 騒ぎで出来た人だかりから逃れるように、彼女は彼の手を引いて歩き出す。 恐れをなして道を開ける人々は、の心に暗い影を落とした。 だが、むくれる弟を前に、自分が感情的になってしまえば、彼は更にいう事をきかなくなるだろう。 「お姉ちゃんの事より、ヤズーが怪我する方が、お姉ちゃん嫌だよ。だから、もう無茶はしないで?」 「・・・・わかったよ」 ふて腐れた顔で答えたヤズーに、は眉間に皺を寄せ、溜息を飲み込む。 両親に頼まれた飲み物を買おうと店を覗くと、先程の騒動を見ていたらしい店員は、少し怯えたような笑顔を見せた。 客商売として失礼な反応だが、仕方ないとは諦める。 父と一緒に買い物する時よりはマシだと考え、飲み物を二つ買うと、ヤズーが何も言わずそれを受け取った。 「持とうか?」と聞いても、「男だから」と答えてくれる彼が、は彼が可愛くて仕方ない。 まだ小さな子供だが、小さいなりに背伸びをする姿は、いつ見ても微笑ましい。 それが姉である自分限定である事に、少々の不安を覚えはするものの、年頃になれば離れてゆくだろうとは楽観的に考えていた。 ヤズーはきっと、将来素敵な紳士になる。 彼の将来が楽しみで、同時に少し寂しく感じながら、は彼から片方のジュースをとりあげた。 ヤズーは不服そうな顔をしたが、彼女があいた手を繋ぐと、すぐに機嫌を良くする。 少しはにかんだ彼に、は釣られてニッコリ笑い返し・・・・・・彼が浮き輪をもっていない事に気づいた。 「・・・ヤズー・・・浮き輪は?」 「・・・え・・・」 「落し物は、これか?」 背後からかけられた声に、二人は目を丸くして振り向く。 目の前には先程購入したばかりの浮き輪があり、次に二人はそれを持っている人物に目をやる。 そこには、チョコボのようにはねた金髪と、青い瞳をした青年が立っていた。 同じ表情で呆ける二人に、彼はクスリと笑う。 ハッと我に返ったは、途端に笑顔になって声を弾ませた。 「クラウドお兄ちゃん!」 「やっと気づいたか」 「うわぁ久しぶりだね!お休みだったの?」 「ああ。の方も、家族で?」 「うん、そう。ティファお姉ちゃんは?」 「ホテルでエステだって。暇だから、俺だけ泳ぎに来たんだ」 苦笑いするクラウドに、も笑みを零しながら、久しぶりの再会を喜ぶ。 神羅戦争の折、彼はザックスに見出され、多くの任務で功績を残した。 新米兵士で頼りなかった彼は、新神羅側に入ると同時にや他のソルジャー達に鍛えられ、瞬く間に才能を開花したのだ。 英才教育のようなものだと言う者もいるが、同じように鍛えられ、脱落していった者は大勢いる。 どれだけの才があろうと、それを生かす事が出来なければ意味が無い。 彼の強さは、血を吐きながら積み重ねた努力の結果だった。 自ら血を吐く程の努力をしたのではなく、血を吐かずには済まない程の鍛錬内容だったそうだが、『血を吐いた努力』には変わらないだろ う。 力があれば、それだけ困難な任務を行う事になり、その経緯でクラウドはセフィロスとも親交があった。 ただ、それはザックス達のように、頻繁に家に遊びに来るほど深いものではない。 故に、とクラウドが会うのもかなり久しぶりで、こんな場所で出会うとはお互い思ってもみなかった。 にとって、良いお兄ちゃんは沢山いても、1から10までマトモな考えをするお兄ちゃんは、失礼ながらあまりいない。 クラウドはその中の貴重な一人で、彼女はザックスと同じぐらいに彼を慕っていた。というか、心の中で頼りにしていた。 「エステかぁ。いいなぁ〜」 「も、そういう事言う年頃になったんだな」 「ふふっ。まだちょっと早いかもしれないけどね」 「でも、凄く大人っぽくなったよ。見違えた」 「や、やだクラウドお兄ちゃんったら、恥かしいでしょ!」 「そんな事無い。ナンパだって、取り付く島もないぐらいハッキリ断れるみたいだし、もう小さい子供じゃないって思った」 「え?さっきのはヤズーがやったんだよ?」 「そうじゃなくて、その前」 「前?」 首を傾げるに、クラウドは困ったように笑う。 今の男達以外、声をかけてきたような人間は思い出せない。 ならば、何処か町でそうなったのを見られたのだろうかと考えたが、クラウドはニブルヘイムに住んでいるので、そうそう目にする事は無 いだろう。 「さっき、ヤズーがいなくなった時に声かけたんだけどな」 「え・・・ああ!」 言われてみれば、確かにあの時後ろから誰かが声をかけていたような気がする。 まさかあれがクラウドだったとは。今更気づいたは、恥かしくなって頬を染めた。 「ご、ごめんね。夢中だったから・・・」 「ああ。見ててわかったから、いいんだ。それで、これから・・・?」 「うん、今からお父さん達の所に戻って、その後はヤズーと泳ぎの練習」 「そっか。じゃぁ、俺も挨拶しに行くよ。一緒に行っても?」 「勿論!」 「じゃぁ、行こう」 ふわりと笑ったクラウドは、二人の会話を退屈そうに見ていたヤズーを抱き上げる。 いきなり視界が高くなったヤズーは、少し目を丸くしたが、すぐにクラウドの髪に興味をもっていかれた。 彼の手から飲み物と浮き輪を取ったクラウドは、申し訳無さそうな顔をするにもう一度笑いかけ、ゆっくりと歩き出した。 「・・・何か、暇・・・」 クラウドをすっかり気に入り、姉そっちのけで遊んでもらっているヤズーを眺め、はポツリと漏らした。 あの後、両親への挨拶を終えたクラウドは、ヤズーに引っ張られて遊び相手にされてしまった。 年が離れているとはいえ、やはり男同士の方が楽しいのだろう。 お陰では一人仲間はずれ状態。 両親の元へ行ったりもしたが、暫くすると「せっかくなのだから遊んできなさい」と、温かく送り出されてしまった。 弟達の方へ向かおうにも、ヤズーはクラウドと二人の世界。 カダージュとロッズは、水着姿のお姉さんに囲まれて楽しそうにしている。 その上、自分の方は自分の方で、気を抜けば知らない男が代わる代わる声をかけてきて、ゆっくりする間も無い。 「つまんない・・・」 ダラダラしているのは時間が勿体無いと思う。だが、する事が無い。 意味も無く携帯を開いては閉じる動作を繰り返し、時折思い出したように写真をとったりするが、それだけで暇は潰れない。 アルヴァの店にあった土産用のアクセサリーを思い出して、覗きに行こうかとも考えた。 だが、さっき行ったばかりでまたお邪魔しては、商売の邪魔になるだろうと、結局足は向かない。 一人遠泳でもするかと考えたりはしたが、それはそれで寂しすぎる。 ビーチから離れ、大通りに戻ると、同じように海から戻って来た人たちが水着でベンチに座っている。 その中に紛れて腰を下ろしたは、暫く通行人を眺めていたが、それではすぐにナンパされるので携帯に集中しているフリをした。 先程とった写真を眺め、今頃ジュノンで仕事をしているアンジールに送ってみる。 同じように、ジェネシスにもメールをしてみたが、休憩時間とはズレていたのか返信は無かった。 普段ならそれぐらい気にしないのに、いざ孤独を感じるときは妙に気分が落ち込んでしまう。 ならば普段全くメールをしない人に送ってやれと、は一番いい写りの風景写真を、適当に選んだアドレスに送りつけてみた。 送信元 題 名 暇だよ〜 本 文 コスタ・デル・ソルに旅行中です。 でも、年甲斐も無くラブラブな両親とか、男同士の世界に入った弟達は、全然かまってくれません。 悲しい!そして、寂しすぎ。 うら若き14歳の乙女の休暇がこれでいいのか!?いや、よくない!! そんな私の心を慰めて〜! この孤独を貴方で埋めて〜v なんちゃって(笑) お忙しい中失礼しました〜! 南国の雰囲気に飲まれてしまったのか、いつもより5割り増しのアホさがあるメールを打つと、は何も考えず送信する。 さて、一体誰に送ったのか。 知るのは返信が来た時か、来なければ夜に確認しようと、は携帯を閉じた。 一瞬何事かと思われるかもしれないが、何だかんだで皆シャレが通じるので、きっと大丈夫だろう。 そんな御気楽な事を考えていた彼女は、すぐに鳴った携帯に慌てて画面を見た。 そこには『着信:ルーファウスさん』の文字。 「はぁあああああ!?」 何故ルーファウスから着信が・・・何故ルーファウスから?何故電話? まさか今のメールはルーファウスに送ってしまったのだろうかと考えながら、は恐る恐る通話ボタンを押す。 「も、もしもし?」 『おはよう・・・』 寝起きなのだろうか、電話から聞こえたルーファウスの声は、少しだけ掠れていた。 それが妙に色っぽく感じてしまい、彼女の心臓は一際大きく高鳴る。 顔に熱が集中していくのを感じながら、何て教育に悪い声をするのだと、的外れな事を考える。 それにしても、もう昼になるというのに、こんな時間まで寝ているなんて。 そう考える事で、自分を冷静にさせようとしただったが、時差というものを思い出して顔を青くした。 『?』 「は、はい。あの、ごめんなさい、そっちって、まだ朝なんですよね?夜中ですか?あの、時差の事、すっかり忘れてて・・・」 『気にしなくて良い。今日は・・・早めに起きる予定だった』 「でも、お休みの所お邪魔しちゃって・・・」 『目覚ましがなる5分前・・・と、言ったところだ。可愛らしいモーニングコールで、目覚めも良い』 「う・・・ありがとうございます・・・」 少し寝惚けているのか、それともが恐縮しているからか。 いつに無い程やさしい声をするルーファウスに、彼女は熱くなる頬に手を当てて必死に冷まそうとする。 先程からずっと五月蝿くなる心臓も、どうしたら静まるのかわからなくて、彼女は電話を持ったまま一人で慌てていた。 忙しい身のルーファウスが、殆ど休日を取っていないことは、も両親から聞いている。 たった5分だったとしても、彼にとって貴重な休息だろう。 それを邪魔してしまったのに、気にするなと言うほうが無理だ。 その上、この間ルーファウスが家に来た時、は彼に向かって暴言を吐いた。 それは、彼にしてみれば可愛いものだったのかもしれない。今、こうして割と上機嫌で話をしてくれているのだから、それは間違いないだ ろう。 だが、彼女にしてみれば、幾ら理由がどうあろうと、親しいとは言い難い大人の男の人へ悪口を言ったのだ。 ルーファウスが謝っていたと、母から聞きはしたものの、その後はルーファウスへ何の連絡もしていない。 仲直りもしていないのに、あんなメールを送って安眠妨害までして、が気まずく思わないはずが無かった。 「えーっと、その・・・」 『何だ?』 「こ・・・この間は・・・大嫌いなんて言って、ごめんなさい・・・」 『・・・気にしていない。あれは私が悪かった。すまない』 「いえ、その・・・私も言いすぎたので・・・色々と・・・ごめんなさい」 『・・・わかった。では、お互い様という事にしよう』 すんなり事を収めたルーファウスに、は少し驚きながら、大人しく従う事にした。 学校で見るクラスメイトの喧嘩は、休み時間中続いたりするので、口喧嘩はそういうものなのだと思っていた。 中高生と30歳前を同列に並べるのがそもそもの間違いだが、やはり大人は違うと、彼女は今更ながら感じる。 同時に、自分と彼との距離も感じた気がして、少しだけ寂しくなった。 それは、ザックスやアンジールと話している時、遊んでもらった時にも、何度か感じた事だ。 相手が大人なのだから、過ごした時間の分だけ距離があるのは仕方が無い。 それぐらいは、にも思う事が出来た。 大人には大人の、子供には子供の世界があるが、自分の年代の世界を上手く渡れないにとって、大人の世界はとても良い場所に思え る。 大人になれば、その距離が埋まって、もっと近い場所にいれると思った。 だから近づきたいと思う事は何度もあったし、今だってそう思う。 けれど、そう思えば思うほど、大人の世界はずっと遠ざかっていく気がする。 自分は子供で、相手は大人。 それだけで、子供な自分が凄く小さいものに思えて、可愛がられているのを分っていても、なんだか嫌な気分になった。 ザックス達へは、そんな気持ちは「好き」という純粋な気持ちが大きかったから、目の前にいて感じる事は無い。 だが、ルーファウスには「好き」や「嫌い」にならない、中途半端な気持ちでいるから、「大人と子供」を余計に感じてしまう。 だから、無茶だと分っていても子供扱いをしてほしくなくて、同等の立場で接してほしいと思った。 「ルーファウスさん」 『何だ?』 「…………」 『?』 「ごめんなさい。何でもありません」 『そうか』 子ども扱いしないで。同じ立場で話をして。 そう言おうと開いた唇は、沈黙を紡いだだけで閉ざされた。 新神羅の社長に向かって、自分は何を言おうとしているのか。 一瞬過ぎっただけの考えだったが、それはが思っている以上に重い現実で、彼女にはそれを踏み越えるだけの勇気が無かった。 言って、どうなるのだろう? たとえ口にしても、ルーファウスは少しだけ考えて、「わかった」と言ってくれるのだろう。この人は意地悪だけど、同じくらい優しい・・・ような気がする。 けれど、それで何が変わるのだろうか。自分は彼に何て答えて欲しくて、どうしてほしかったのだろうか。 言ってみたかっただけなら、独り言だけで十分。 子供の戯言で悩ませていいほど、ルーファウスと自分は近い場所にいるわけじゃない。 『今度・・・』 「あ、はい!」 つい考え込んでいたは、ルーファウスの声に慌てて返事をする。 元気よく返され、ルーファウスは一瞬言葉を止めたが、すぐに受話器から笑ったような息遣いが聞こえた。 『新神羅の創立13周年を記念した式典がある。よければ、ご両親と一緒にくるといい。招待状を出そう』 「いいんですか?」 『見知った顔ばかりだとは思うが、退屈はしないだろう』 「はい!是非行きます!」 『楽しみにしている』 「私も、楽しみにしてます」 上機嫌で返事をするに、受話器の向こうからルーファウスの笑い声が聞こえる。 何が楽しいのだろうと首を傾げながら、は初めて聞く彼の笑い声に少し驚いていた。 数度しか会っていないのだから仕方が無いが、は彼の人を馬鹿にしたような笑い方しか見た事が無い。 笑顔を見た事はあっても、声を上げて笑っている姿など見た事が無かった。 今彼はどんな顔をしているのだろう。 そう考えると、たった今、会える約束をしたばかりだというのに、急に会いたくなってきた。 会おうと思って会える人ではないし、会ったからと言って同じように笑ってくれるとは限らないが、それでも、コスタとジュノンの距離が もどかしくなる。 『そろそろ時間だ』 「あ、はい。朝早くにすみませんでした。お仕事頑張って下さい」 『ああ。君も、せっかくの休みだ。羽を伸ばすといい』 「はい。それじゃあ」 彼が電話を切っても、は携帯を耳に当てたまま、聞こえてくる電子音を暫く聞いていた。 自分の行動に気がつき、慌てて電源ボタンを押した彼女だったが、何をするでもなく、そのまま画面を眺める。 電話を切って、少しほっとしたような気がするが、何処か寂しい気もした。 たった今したばかりの会話が頭の中でぐるぐる回り、叫びたくなるぐらい恥かしくなるが、どうしてか少しだけ恐いとも思った。 スッキリしないのに、嫌な感じがしない気持ちが、胸の中をムズムズさせる。 「うー・・・」 どうしてこんな気持ちになるのか。 そう考えると、ルーファウスの顔が頭に思い浮かんできて、急に気温が上がったような気がした。 頬に手を当ててみると、思っていた以上に熱くて、は慌てて日陰に入る。 南国に来て日焼けを気にするなんて、おかしい気がするが、日光の当たりすぎは肌によくないからだと自分に言い聞かせた。 開いたままの携帯を見つめ、着信履歴を開いたは、一番上にあるルーファウスの名をじっと見つめる。 何度も何度もその名前を視線でなぞって、その度に心がフワフワ浮かぶようで、嬉しくてたまらない気持ちになった。 ルーファウスが言っていた式典がいつかはわからないが、それが凄く待ち遠しくて、会ったらどうしようだとか、何て言ってくれるだろう かとか、そんな事ばかりを考えてしまう。 どうしてそんな気持ちになるのか。 心が浮かれるたびに思う言葉は、彼女の中に小さな不安と恐れを与えたが、それすら気にならないほど気分が高揚する。 たった今声を聞いたばかりなのに、今すぐにでも会いたいと思う。 その事が、ルーファウスが他の人たちとは違う存在なのだと、それだけを教えてくれた。 | ||
乙女モード突入(笑) いやーこの先どうしようかね。何にも考えてないんだよなぁ〜(苦笑) ええ、私は大概見切り発車です。 2008.09.15 Rika | ||
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