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黄昏が遠い空の下には、まだ仕事途中の人々は日差しに目を細めながら歩く。
信号待ちで止まった車内で、行き交う人の波を眺めていたルーファウスは、車内のテレビを興味津々で覗き込むに苦笑いを零した。


「そんなに面白いか?」
「ああ。このテレビという物。これ程小さい上に移動しながらでも、乱れる事無く作動するとは・・・侮れん」

「フッ!」

画面に映っている子供向けの番組を食い入るように見つめ、心底感心したように言う彼女に、ルーファウスはたまらず噴出す。
顔を背けて肩を震わせた彼に、は微かに頬を染めると、仕切りなおすようにテレビから顔を離した。

「そう笑う事はあるまい。ホテルにあったのは大きいものだったのだ」
「ああ、そうか・・・・クククッ・・・」

「ルーファウス」
「すまない、これでも悪かったと思っている」

笑ったまま謝るルーファウスを、は軽く睨みつける。
だが、彼にはそれが益々愉快だったらしく、再び顔を背けて笑い出した。





Illusion sand − 43







テロの予告をされている事もあり、会場には武装した神羅の兵達の姿が目立った。
ルーファウスと連れ立って車から降りたは、スタッフに扮したソルジャーに付き添われて歩く。
開始からまだ数時間の会場では、神羅兵や会場の従業員達が慌しく歩き回っていた。

通された控え室には片手で足りるほどしか人がおらず、それも数人の神羅兵が警備にいるだけである。
最終リハーサルがあると、ルーファウスはを残して出て行き、彼女は近くにあった椅子に腰掛けた。


薄い青銅色の壁には、ランプを模したライトが付けられ、天井からは小さなシャンデリアが下がっている。
神羅の式典をやるに相応しく豪勢な内装をしているが、それらは何処か虚飾に見える。
恐らくは、その細工に職人の施す拘りのようなものが見えないからだろう。

漠然とした記憶にある祖国の王宮と比べても、日頃目にしていた物だけに、見る目は覚えているらしい。
とはいえ、国の威信に関わる大宮の広間と、上流とはいえ一介の宿屋を比べるのが間違っているのだが。
天井画も無い室内に下げる照明など、その程度で十分なのかもしれない。
要はそれらしく見えれば良いという事か。


手持ち無沙汰になり、テーブルの上の水差しに手を伸ばすと、その向こう側にある控え室の扉が開いた。
グラスを手に取った彼女は、入ってきた人物に何気なく視線を向ける。
だが、その姿、容姿に、彼女の思考も動作も、時を止めたように固まった。

黒のタキシードを着た男性は、呆然と見つめるには気付かないまま、近くにいた兵と話しはじめる。
彼が浮かべる微笑が、あれは他人だと脳裏で教えるが、生き写しとしか言い様の無い姿に、彼女の唇は震えていた。

静かな音楽が流れていた控え室の中、ガタリと響いた物音に、の心臓は飛び跳ねる。
音の元となった手元を見れば、手にしていたはずのグラスが、白いテーブルクロスの上を転がっていた。


「す、すみません・・・」


グラスを落とした己の手を見て、初めて自分が震えている事を知った彼女は、小さく詫びる声さえ震えている。
一瞬張り詰めた空気はすぐ元に戻ったが、の手には上手く力が入らず、立て直したグラスも僅かに揺れていた。

強張った体に震えは収まらず、喉はカラカラに渇いていたが、先の失敗を考えると水に手を伸ばす事も出来ない。
自身に落ち着けと言い聞かせるが、動揺する心中は何時に無く言う事をきかず、ロクに力の入らない手をようやく握り締めるのが精々だった。

叱咤の声が無い。髪の色が違う。
そう思い、その人物が亡き父とは他人なのだと言い聞かせる事で、真っ白だった頭の中にようやく冷静さの気配が戻ってくる。
今はただルーファウスの身の安全の事だけを考えろと己を叱咤するが、体はそれを知らぬように震えを止めない。
見間違いなのだと、近くで見れば似ても似つかないに違いないと戒めたは、震えた唇のまま静かに深呼吸した。


「大丈夫ですか?」
「っ!!」


時に流され失ってしまった記憶を据えたように、投げかけられた声はかの人と重なる。
弾けたように顔を上げた彼女は、あまりにも重なりすぎる面影で微笑む男に、声を失ったまま目を見開くしか出来なかった。


「隣、よろしいでしょうか?」
「・・・・・・っぁっ・・・」


これ程心臓の音が耳に響くのは何時以来か。
思考に満たない思考が記憶と混ざり合い、脳の中をかき回すようだった。
彼の言葉を理解するにも数秒を要し、気付くと彼女は慌てて返事をしようとする。
だが、他人だと言い聞かせる事も出来ぬ程に混乱する彼女は、まともに言葉を出す事が出来ず、無理矢理首を頷かせた。

その態度に、男は気分を害した様子は無く、を安心させるかのように微笑む。
静かに椅子に腰掛けた彼は、固まったままの彼女に向き合い、グラスに水を入れるとそれを差し出した。

震えでグラスを手に取れないどころか、ただ手を伸ばす事さえ満足に出来ない彼女の顔は、まるで死人のように血の気が無くなっていた。
握っていた手を僅かに開くしか出来ないの手を、男はそっと取るとゆっくりグラスを握らせる。
彼の腕に促されるままグラスを口元に運んだは、揺れる透明の液体をゆっくり喉に流し込んだ。
一口、二口とたどたどしく飲み込んだ彼女は、幾分か落ち着き小さく息を吐くと、残りの水を一気に飲み干す。
静かに深呼吸し、空のグラスをテーブルに置いた彼女の手の震えが収まっているのを見ると、彼は安心したように笑みを零した。


「私はリーブ・トゥエスティ。神羅の都市開発部門の者です」


ああ、やはり他人だ

途端に落ち着いていく心に、はようやく笑みを浮かべる。
目の前に居る顔が、父ではなかった事に安心するなど、何処までも親不孝だと脳の片隅で考えた。

急に余裕の出来たらしい彼女に、リーブは微かに目を開くが、気にしなかったように目を細める。


と申します」
「貴方が・・・・では、今日は副社長の・・・?」

「はい。お傍に・・・」
「そうですか・・・」



リーブの反応に、はただ笑みを浮かべた。
取り乱した本当の理由など、彼が知る由も無く、恐らく今日の予告のせいで怯えていると思われたのだろう。
人目もあり、『警護』と言葉にはしなかったが、心底心配そうな顔をする彼が言いたい事はわかる。
これほど動揺して、式典では平気なのか。警護できるのか。

動揺したのは貴方のせいだ、と言えば、話が面倒になるのは目に見えているので、彼女はそのまま口を噤んだ。
それ程か弱く見えるなら、今日の式典でも怪しまれる事はないと、彼女は楽観的な方向へ思考を向ける。
か弱いかどうかは別に、普通の人間は犯行予告された場所に来て怯えないはずはない。
それ以前に、そんな場所に来たりはしない。




「今日の警備の理由をご存知なのですね?」
「ええ」

「大げさな事にはなっていますが、ソルジャー達もついています。大丈夫・・・何も起こりませんよ。安心して下さい」
「はい・・・存じております」

「そうですか。では、私も安心しました」
「お気遣い、どうもありがとうございます」



忙しい中声をかけてくれたのだろう。
そう言うと、リーブは再び会場へと戻っていった。

副社長の同伴者が護衛だと知っているのならば、個別警護の対象には、リーブも含まれているに違いない。
雰囲気から察すると、恐らく中の上以上の地位はあるだろう。

予想外の出会いだったと思いながら、早速普段の平静さを取り戻した自分に、は我ながら切り替えが早い性格だと思う。
同時に、見て声をかけられるほど動揺した自分に、まだ修行が足りないと小さく息を吐いた。

セフィロス達がどんな動きをしているのか、把握できればも動きやすい。
だが、ルーファウスの同伴という名目で来ている以上、そんな事が知れるわけもなく、彼らの仕事に口を出すのも無礼というものだ。

何かあったとしても、神羅の警備兵がいるなら彼らに任せるのが得策。
無闇に動いてまたボロを出しても、人目がある以上、今回ばかりはルーファウス達のようにはいかない。

世界を統べる神羅の技量。
今回はルーファウスの命が危ぶまれるギリギリまで、その軍事力に甘える事としよう。


手に持ったままだったグラスに気がつき、はそれを握らせてくれた手を思い出した。
その大きさも、温かささえ同じだったからこそ、余計に心乱れたのか。
再び小さく震え始めた手を見ながら、そんな事を思った。








扉の向こうが騒がしくなり、控え室の中も変装した警備兵らが目立ち始めた。
開始30分前を指す時計の針を眺め、丁度迎えに来たルーファウスに連れられるまま、は会場へ出た。

以前ジュノンでルーファウスの視察に付き合った時のように、彼に寄り添い目立たない程度に気配を抑える。
ルーファウスが来賓に挨拶する間も、その隣で作り笑顔を崩さず、時折投げかけられた言葉には当たり障りの無い返事を返す。
式典が始まる頃になると、壇上に近い場所に向かい、また彼に話しかけてきた人々に笑みを浮かべ続けた。

司会が何事か話し、社長が壇上で短すぎず、長すぎない挨拶をすると、会場内には拍手が響く。
ただ一人、片口を上げるだけの反応しか返さないルーファウスを横目で見ながら、は降壇する社長に控え目な拍手を送った。
だが、次いで壇上に上がった取引先の代表が、神羅への賛辞を交えた挨拶をすると、ルーファウスは笑みを浮かべて大きな拍手を送る。
露骨な態度が子供の意地のようで、は彼に知られぬように微かな笑みを零した。

神羅の総力を上げていると言っても過言ではない警備の甲斐あってか、社長らの挨拶は滞りなく終る。
建物の外でツォンらがどう動いてるかは分らないが、式典は問題なく終りそうな気配だった。
これで騒動が起きれば、神羅の面目は丸つぶれなのだから、当然の話だが。

乾杯の音頭を、と司会に紹介され、都市開発部門の統括がシャンパンを手に壇上に上っていく。
その後姿が、遠く記憶の隅に置き忘れた小箱を開いたように、彼とは違う人の幾多の後姿を思い出させた。
まるで恋に心奪われた少女のように、リーブの姿を目で追うを、ルーファウスはそっと見やる。
だが、向ける視線にさえ気付かず、幸せと感傷が混じる瞳をした彼女に、彼は何も言わぬまま壇上の男を見た。

神羅上層部の中で、唯一常識人であり、マトモな性格をしている男リーブは、一言の挨拶の後グラスを掲げる。
場内の皆が同じようにグラスを掲げる中、はそれも忘れて降壇するリーブを目で追う。
僅かばかりの不愉快に、ルーファウスは何も言わず彼女のグラスに自分のそれを重ねた。
その音で、ようやく気付いたは、我に返ったように振り返り、見下ろすルーファウスの瞳に小さく呻き声を上げた。


「・・・・すみません」
「・・・・・・・・・」


気まずそうに俯きかけた彼女に、ルーファウスは他者の重役と話し始めているリーブの姿を見る。
ちらりと振り向き、彼の姿を見るを視界の隅で見ると、ルーファウスは再び彼女と視線を交えた。


「気になるのか?」
「懐かしい人に、似ているんです」

「・・・・・・・・」
「ただ、それだけです」


それは惚れた男か?などと、野暮な事を聞くのも見苦しい気がして、ルーファウスはそれ以上言葉を出すのをやめた。
リーブの姿を追っていた顔が、自分の知らない彼女であった事にも、全てを知り合う仲ではないのだと目を伏せる。
互いにまだ知らない事が多すぎるのだと、今更ながらに思い出し、ルーファウスはムキになった自分を恥じた。

へ対する情が恋などというものでは無い事も、これからそうなる事が無いだろう事も、ルーファウスは漠然とだが感じている。
色恋ならざる好意と情は、それ以上愚かな焦燥を生まないが、だからと言って興味が無いなんて事はない。
だがわざわざ聞かずとも、彼女は後で律儀に説明してくれるだろうと考えると、ルーファウスはの腰に手を回した。


「疲れたら言え」
「私より、御自分を」


男が女にかける言葉としては当然なものへ、この返事だ。
やはり人の下に仕える気質なのだろう。
その垢の部分でも良いから、上層部の3馬鹿トリオにあってほしかったと、ルーファウスは小さく息を零した。


「こんばんは。ご機嫌いかがかね?」
「宝条か」


心を読んだかのようなタイミングで現れた3馬鹿トリオの一人・宝条は、水が入ったグラスを片手にルーファウス達の下へ来た。
慣れないタキシードを着て、綺麗に髪をまとめてはいるのに、その雰囲気は研究室でのそれと全く変わらない。
此処まで来ると記念物だと考えながら、とこの男を接触させた事に、ルーファウスは内心苦虫を噛む。


「そちらは・・・・確かさんと言ったかい?」
「ああ。。私の大事な友人だ。、我が社の科学部門統括をしている宝条だ」
と申します、宝条博士。ご存知いただけていたとは、光栄です」

「クァックァックァ!美人はすぐに覚えるのでね。しかし副社長の友人とはまた・・・」
「私とて友人ぐらいはいる。それと・・・その笑い方は止めたまえ」
「ルーファウス・・・」


幾ら部下あいてとはいえ、それは失礼ではないかと、は彼を見やる。
だが、彼はその視線を無視し、薄笑みを浮かべる宝条を見下ろしていた。
年上の余裕というものか、彼は若い副社長の言葉に特に気分を害した様子は無く、喉の奥で笑いを殺している。

以前セフィロスに、宝条には極力関わるなと言われ、その理由も教えられていたは、当たり障り無い笑みを浮かべそれ以上口を閉ざす。
ルーファウスと会話しながら、時折向けられる宝条の観察するような目に、彼女は引っかかりを覚える。
何処か屈折した興味を思わせる目に、セフィロスに聞かされた実験の事を思い出しながら、彼女は視線に気付かないフリをした。
それに気付かない程ルーファウスも鈍感ではなく、をそっと引き寄せると、宝条との会話を早々に打ち切る。

再び会場の人込みに紛れたルーファウスは、宝条には・・・と言葉を出そうとしたが、それを待たず頷いた彼女に口を閉ざした。

宝条が名を覚えるなど、嫌な予感を感じさせるには十分だが、これ以上かかわる事は無いだろう。
関わらせてなどやるものか。それは己の道にとって大きな邪魔になる。


「ルーファウス」


呼ばれて現実に引き戻された彼は、自分を呼んだ彼女に振り向いた。
と、眉間に触れる感触に目を寄せれば、少し呆れた顔だったが小さく笑みを零した。


「寄り目になってますね」
・・・」

「随分恐い顔をしていらっしゃったので」
「気にするな」


いつもの不敵な笑みを浮かべると、ルーファウスは彼女の手を額から下ろした。
人目も憚らず仲の良さを見せ付ける二人は、意図せず周りの視線を集めた。
それをすぐに察したは、ルーファウスに食えない笑みを浮かべ、周囲からの印象を根性曲がり同志のじゃれ合いへと変える。

その後、予告があった事など嘘のようにパーティーは滞りなく続き、予定時刻を僅かに過ぎた頃終了した。
警備の都合上、上層部は皆会場となったホテルに泊まる事となっており、ルーファウスはを連れて真っ先に部屋へ行こうとする。

数人の警備兵に囲まれ、ルーファウスとを乗せたエレベーターは最上階へ向かう。
だが、目的の階に着いたと思った瞬間、扉の向こうから鈍い爆発音と衝撃が響き、エレベーターは停止した。
警備兵は驚いてとルーファウスを奥へやり、一人が二人の前に盾のように立つ。
二人の兵がエレベーターのドアをこじ開けに掛かると、ゆっくりと開いたドアの向こうに、漂ってくる黒煙と数人の警備兵が見えた。

きな臭さにルーファウスはハンカチを取り出し、へ差し出すが、彼女はそれを彼に着き返す。
今守られるのは自分ではなくルーファウス。
それを目で言うと、彼は数秒渋りながら、それを自分の口元に当てた。


「何があった!?」
「重役が使う部屋の一つが爆破された!仕込まれてたんだ」


大きく舌打ちしながら、興奮で息荒くなった兵は、僅かな煙を吸い込んで咳き込む。
エレベーターの外には左右と正面に伸びる廊下があり、黒煙はその正面の廊下の先にある一室から漂っていた。
それ程大きな爆破ではなかったのか、扉こそ飛んでいるものの、大きな火の手は上がっていない。
兵らは慌しく走りまわるが、統率はされており、それを指示する声が廊下の奥から聞こえた。

聞き覚えのある声に顔を上げると、額に小さな擦り傷を作って髪を乱したツォンが、ルードに指示を出している。
そのままルードは携帯で何処かに電話をかけはじめると、こちらに気付いたツォンが足早にやってきた。


「二人とも、このまま屋上のヘリポートへ向かってください」
「説明は後だな」


あれこれ聞かれるのも余計だろうと、ルーファウスは何も聞かず頷く。
ルーファウスを託すと言うように、ツォンは二人の盾となっていた兵とにそれぞれ視線を向けた。


「では、こちらへ」
「待った」


それぞれの役目へ向かおうとした3人だったが、兵が非常階段へ向かおうとした所をの声が止める。
振り向いた彼らに、彼女は視線を向けると、煙の出所である部屋の扉を眺めた。


「その程度は読まれている」
「何?」

「階段付近の兵は急ぎ退避しろ!!」


騒ぎの中でも聞こえるほどの声で出された指示に、兵らは驚くより先に従っていく。
それは、彼女の声に咄嗟の焦りがなく、統率と命令に慣れた者の、人を従わせる声だったからだ。
だが、そんな事を考える暇が兵らにあるはずもなく、彼らはただ本能に従うように従順に階段がある扉から離れる。

ルーファウスの腕を掴んだは、もう片方の手でツォンの腕を掴み、正面の廊下へと押し込めた。
エレベーターの左右へ広がる廊下にいた兵らも、指示を出した者の行動に従うように、同じ廊下へとなだれ込む。

避難し終えない兵らにプロテスをかけるが、爆発の規模次第では死傷を免れないため、僅かばかりの効力しか与えられない。
熱風に備え、廊下の先に微弱なブリザドで壁を作りながら、は当惑したままのツォンを横目で見た。
いつものポーカーフェイスがわずかばかり薄れた彼に、彼女はせっかく猫をかぶっていたのにと思いながら視線を合わせる。


「爆破があればエレベーターは止る。場所は最上階。逃げるなら、上しかない」
「・・・しかし、まだ他の部屋にも・・・」

「恐らく今の爆破は陽動。幾つもある部屋へ物を仕込むより、階段へ逃げ込んだ所をまとめて始末した方が効率が良い」
「本気で爆破するなら、全ての部屋を同時に・・・」


理解したツォンの言葉の直後、先程より大きな爆音がフロアに響いた。
逃げ遅れた兵の数人が、爆風で宙を舞いながら廊下の向こうへ飛ばされてゆく。
一瞬の地獄絵に、助からない者もいるかもしれないと考えながら、彼女の頭は次いで成さねばならない事を冷静に考えていた。

この身にある魔力を使えば拾えるかもしれない命を見捨てる、非情な自分を心の片隅で軽蔑しながら。






リーブさん、好きだ!!ってか、オチが無・・・(汗)
2007.05.18 Rika
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