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「で、飛び込みのアンタらは、さっき言った通り、の昔の友達でいいんだな?」 「・・・うむ・・・そうじゃ」 言葉数少ない女性は、レノの言葉に微かに目を開くが、すぐに伏せると小さく頷く。 妙な言葉遣いをする美女に、レノは変わった女だと思いながら、書類の裏面にメモをとった。 Illusion sand − 36 本社ビル到着後、レノの目には受付嬢を威圧しているこの4人の姿が飛び込んできた。 受付に助けを求められ、聞けばの知り合いだと言う。 ただならぬ雰囲気の彼らに、レノは内心面白そうだとほくそ笑みながら、今日の面接に誘ってみた。 返ってきた答えは当然イエスだ。 事前書類が無いのは面倒だが、暇つぶしが増えるのはかまわない。 それに、早く終ってしまえば自分はまたの病室に行く事になり、結果あのルーファウスからの差し入れの消化を手伝わなければならないのだ。 甘いものは嫌いじゃないが、流石にあの量は見ているだけで胸焼けがする。 老人と中年1人、三十代前半と思える男に、銀髪の美女。 詐欺師にしては奇妙であり、一般人にしてもおかしい。 神羅本社23階にある会議室で、レノは面白い玩具を見つけた時のような気持ちで、空いた椅子に腰掛けた4人を眺めていた。 空調の効いた部屋は程よい温度だったが、時折鳥肌が立つような寒気がして、レノは手元にあったリモコンで、エアコンの温度を設定しなおす。 手短に終らせてしまおうと考えると、レノは失格者に出した質問の紙を眺めた。 静電気のせいで、2枚も3枚もついてくる別の紙を面倒臭げに離すと、レノは改めて4人に向き合う。 「初めて会ったのは、何時ぐらいか、具体的に教えてもらえるか?」 「・・・・あれが、まだ20を過ぎたばかりの頃じゃ」 「今もそのぐらいだろ?」 「・・・・・・」 の実年齢は知らないが、見た目はまだ20代前半。 ならば、16の頃だとか、19の頃と言ってもらえなければ、信じるも何も無い。 レノの言葉に、微かに顔を険しくした女性は、言葉に詰まり、傍らの筋肉質な男を見た。 見た・・・というよりも、睨んだと言った方が正しいだろうか。 冷たい視線に、睨まれた男は微かに眉間に皺を寄せると、彼女の代わりという様に口を開く。 「我が初めてに合間見たのは、あれが赤子の頃であった」 「・・・・・・・・・・へぇ〜。どういう経緯で?」 「あれの父が我の元へ連れてきた」 「の親父さんとも、知り合いか?」 「・・・・そんなところだ」 「今ご両親は?」 「既に他界しておる」 「何時頃だ?」 「母親はあれが赤子の頃。父親はあれが16〜7の頃だ。兄弟もおらぬ」 「へぇ〜・・・」 自分が親と言えば通じそうな年だろうに、わざわざ友人と言う彼らに、レノは微かに口の端を上げる。 友であるならば、多少について知らない事があっても不自然は無かった。 両親が他界済みであるなら、多少親について間違った情報を口にしても、が記憶喪失と言う手前バレる可能性は低いと見たのかもしれない。 見るからに幅広い年齢層も、親を通じての知り合いというなら、納得できた。 ただ、それは本当にが記憶喪失だった場合にのみ有効になる。 確かにこの4人組は興味深いが、例えここでどれ程の情報を口にしたところで、が首を横に振ればそれまでだった。 設定温度が高すぎたか、男を話している中、レノは汗が出そうな暑さを感じた。 寒かったり暑かったり、風邪でも引いただろうかと、彼は内心首を傾げる。 だが、どうせこの後はの病室に行くのだから、ついでに診察してもらえば良いだろうと、彼は気にせずすぐに思考を4人に向けた。 「の父親の名前は?」 「・・ジュリアス・・む?ユリウスだったか・・・?」 「・・・・どっちだ?あと苗字も頼むぞ、と」 「ぬぅ・・・確かユリウスだったはずだ。ユリウス・だ」 「ユリウス・さんね。仕事は何だった?」 「軍・・・いや、傭・・・・・・・うむぅ・・・」 「何だ?」 「うぬぬぬぬ・・・暫し待たれよ!!」 レノの質問に脂汗をかいて唸る男は、ブツブツ呟くと声を張り上げた。 男が叫んだ途端、レノは汗が滲む程の熱気を感じ、眉を上げる。 だが、彼はそれに気付かないまま4人を連れ、部屋の隅に走ると円陣を組んで相談を始めた。 いい大人が揃って、小声であーだこーだ言う様に、レノは呆れながらハンカチで汗を拭う。 実際のところ、が記憶喪失でないのだから、父親の話など聞く必要など無かった。 それ以前に、彼らとの間柄を聞く必要も無い。 故に、面接者全員が集まった時点で、レノは第一の質問で大きな篩いをかけた。 の体には何か特徴があるか。 あるならば何処に何箇所あるか。 それは何が原因か。 の体にあるものについて、レノは面接前にセフィロスに連絡を取り、教えてもらっている。 彼は、左腕と右の腿に爪で出来たような傷、背中は刀傷があると言い、ホクロや痣等は見当たらなかったと言った。 とはいえ、彼も彼女の体を見たのは洗うためだったのだから、そんな細かい所まで見ていたら変態だろう。 彼女の傷は、パッと見ただけでは解らない程薄れていると言う。 またその傷の事について知るのは、今のところセフィロスと彼女自身らしい。 もし彼女が他の誰かに言ったとしたなら、知る者がいるかもしれない。 だが、保護してから神羅関係者が常に同伴している彼女に、一般人が接触する機会など無いに等しかった。 そもそも、女性が他人に自分の傷跡について語ったりなどしないだろう。 とは恋人や家族と、近しい間柄と言う者達ならばその質問には当然答えられるものだろう。 だが、先だって連絡を受けた5人は揃って驚いた顔をし、数秒考えると様々な答えを出してきたのだ。 1人目のミッドガル在住の青年は、膝に昔転んだ傷跡があると言った。 2人目のスラム街在住の中年女性は、腰に小さな痣があると言った。 3人目のジュノン在住の中年男性は、彼女の体には傷も痣も無いと言った。 4人目のスラム在住ドン・コルネオは、体の体は傷だらけで、はそういうプレイが好きだと言った。 5人目のカーム在住の老人は、どちらかの足に、小さな頃に崖から落ちた傷があると言った。 当然彼女の体に5人の言うようなものは無く、その時点で彼らは脱落決定だ。 だが、今日飛び入りで参加し、今部屋の角で会議をしている4人は、彼女の体にある3つの傷のうち、2つを言い当てたのだ。 1つは、右か左どちらかの腿に、召喚獣イフリートと戦った時に出来た爪跡。 もう1つは、背中に1本斜めに出来た、刀傷。 他にも傷があるとしたら、それは自分たちが会わなかった時期に出来たものだと言う。 意表を突く4人に、レノは面食らいながらも、面白い事になってきたと口の端を吊り上げた。 彼らは傷跡を言い当てただけではなく、が戦闘経験があるという事まで当てたようなものだ。 そして、召喚獣と戦いながら生きていられる技量も。 妙な組み合わせだが、これはひょっとしたら、ひょっとするかもしれない。 そんな僅かな期待をしたレノは、すぐさま4人の言葉に正解と答え、失格者5人を追い出した。 が、一度突っ込んだ質問をしたらこれだ。 ドモり、唸り、回答者を変え、今は子供の作戦会議のようにボソボソ言い合っている。 暑さも収まり、常温に感じる部屋の空気の中、レノは彼らを眺めながらコーヒーを啜った。 4人の特徴とこれまでの現象に、漠然とその正体を感じ始めていたが、それにしては見慣れない者が1人いる。 髭の老人が喋り出したら、静電気でも起きるかもしれないと想像していると、会議を終えた4人が席に戻ってきた。 「もういいのか?」 「うむ。待たせたな」 再び話し始めた長髪の大男に、レノはまた空気が熱くなっていくのを感じた。 この暑さや寒気の原因は、やはりこの4人かと微かに口の端を上げると、レノはちらりと寒気を出す女性を見た。 相変わらず瞼を伏せる彼女は、レノの視線にピクリとも反応しないが、この暑さに汗一つかかないのは羨ましい。 類は友を呼ぶという事か。 只者ではないの友人も、やはり只者ではないようだ。 考えてみればセフィロスもルーファウスもレノも、一般人から見れば只者ではない。 だが、この4人がレノの予想通りの者達だとするなら、そのスケールは自分達の比ではないかもしれないと思った。 「で、の親父さんの職業は何なんだ、と?」 「護衛だ」 「・・・・・誰の?」 「雇い主だ」 「そうじゃない。雇い主は誰だ?」 「それは知らぬ」 「大企業のお偉いさんか?」 「知らぬ」 「・・・・へぇ〜・・・」 「・・・・・・・・」 馬鹿なのか賢いのか、知らぬ存ぜぬ作戦を使い始めた男に、レノは気の無い返事を返した。 一応内容はメモしているものの、一気に面白くなくなった気がして、彼は時計を眺めた。 「じゃ、その親父さんの特徴は?」 「お主に似た赤毛であった」 「俺?」 「うむ。だが、どちらかと言うと、赤茶だったか。お主のようにボッボと燃える赤ではない」 「俺の髪は燃えてないぞ、と」 「見ればわかる」 「・・・・・・・・」 「穏やかな顔の作りだったが・・・能面のように厳しい表情ばかりしておった」 ちょっと・・・喧嘩売られた? 微かに口元を引き攣らせたレノに気付かないまま、男は腕を組んで喋り続ける。 これまで一度も口を開いていない金髪の男が、ちらりと黒髪の男を見たが、注意もせずに視線を戻すとはどういう事か。 含む所があるにしろ、怒った所で、丸焼きにされてはたまらないと、レノは口を噤んだ。 と、その時、会議室の扉が数度軽く叩かれた。 この後、此処を使うという連絡は入っていないのだから、恐らく自分に用があるのだろう。 火急のものかと考えながら返事をすると、尋ねてきた人物はゆっくり扉を開けた。 そこから顔を出したのは、都市開発部門の統括をしているリーブだ。 書類を片手に中を覗いた彼は、中にいた4人に少々驚きながら、小さく会釈してレノの元へ向かって来た。 「失礼します。この書類ですが、急ぎ目を通して・・・」 「ユリウス!?」 「は?」 突然叫び出した男に、レノもリーブも目を丸くする。 レノに書類を差し出すリーブに向かい、つい今しがた聞いたの父親の名を叫んだ彼は、信じられないという顔をしていた。 首を傾げるのは、彼の傍にいる三人も同じようで、男に向けられた視線はそのままリーブに向けられる。 その視線に、何の事かさっぱり解らないリーブは、困ったようにレノに視線を向けた。 「馬鹿な・・・お主まで生きておったのか・・・?」 「・・申し訳ありませんが、何方とお間違えになられているのでは?」 「この人はリーブ。ウチの社員だぞ、と」 「何と!?・・・うむぅ・・・そうじゃな。あれは黒髪ではなかった」 「・・・神羅カンパニー都市開発部門のリーブと申します」 「そんなに似てるのか?」 「むぅ・・・瓜二つ、まるで生き写しだ。見れば見るほど・・・」 「あ、あの・・・?」 「ふーん・・・・」 そこにいる全員に顔をまじまじ見られ、リーブは相当困った笑顔を浮かべる。 一体誰に似ているのか知らない彼は、凝視してくる黒髪の大男の視線に、暑苦しさを感じて額に汗を浮かべた。 「セフィロスが保護した女はわかるか?」 「ええ、お話は伺っていますが」 「このオッサンが言うには、彼女の親父とアンタがそっくりらしいぞ、と」 「おや・・・それは偶然ですね。ですが、私は娘も妻もいませんよ」 「知ってるぞ、と。書類はOKだ」 「ありがとうございます。では、私はこれで」 ニッコリ笑って礼をすると、リーブは急ぎ足で会議室から出て行った。 面接最中に書類を持ってきた事といい、余程急いでいるのだろう。 わざとではないとはいえ、足止めをしてしまった事にレノは内心小さく侘びた。 黒髪の男は、ずっとその背中を目で追っていたが、扉が閉められると小さく息を吐いて姿勢を正す。 未だ驚きから抜け切れないその顔を眺めながら、レノは『リーブ似の赤毛』と、彼らの言うの父親像を書き留めた。 「よっぽど似てるらしいな、と」 「髪や髭の色を変えれば全く同じだ。だが・・・雰囲気は間逆だ」 「ほー」 「あれの父親は、今の男のように笑いはしない」 「なるほどね。じゃ、は母親似か?」 「髪の色はそうらしいが、我らはあれの本当の父と母の顔は知らん」 「アンタの友人夫婦の子なんじゃないのか」 「と父親とは血の繋がりが無い」 「・・・養子か」 「うむ。だが、あれの性格は間違いなく父親譲りだろう」 「・・・・・・・」 「女子であるというのに・・・哀れに思えるほど、あれは男らしい所がある・・・」 「無知な事よ・・・女の腹の内は男以上に男らしいものじゃ」 眉間に皺を寄せる男に、それまで黙っていた銀髪の女が馬鹿にしたように呟いた。 確かにそうだと思うレノの前で、男はピクリと眉を動かすと、冷たく見つめる女と睨み合いを始める。 こんな所で喧嘩をされても、レノにとっては迷惑極まりない。 だが、そんな彼の気持ちなど知らず、あの寒気と暑さが混ざるように押し寄せてきた。 生ぬるい空気に顔を顰めるレノと、相変わらず無表情の金髪の男。 見えない火花を散らす2人に、髭の老人が大きく溜息を吐くと、気付いた二人にこの温度変化が止んだ。 が、そう思うのも束の間。 乾燥している訳でもないのに、老人の長い髭が静電気のようなものでパチパチいい始める。 やはり静電気が出たと思うものの、万が一こんな所で雷を落とされては、ビルの中の電力がストップしてしまうだろう。 しかし、レノが制止をかけようとするほんの数秒の間に、老人の髭は静電気でどんどん広がっていく。 バツが悪そうに視線を逸らした女と、微かな焦りを見せる黒髪の男。 広がる髭に唖然とするレノと金髪の男など、気付いていないように、老人のそれはさらに広がりを増した。 既に別の生き物になりつつある姿は、異様でしかない。 細い目をうっすらと開けた老人は、大人しくなった二人をちらりと見ると、満足したように瞼を伏せた。 それにより、徐々に収まっていく髭を、レノも金髪の男はまたも凝視する。 「すまんのう若いの。この二人は水と油のようなものでな」 「誰が油か!?我はほの・・ぅっ・・・・・・・・・すまぬ」 噛み付く男は、ちらりと向けられた老人の視線に詰まると、大人しくなる。 その様子を、レノは唖然としたまま見つめ、同時に、呆れた顔をする金髪の男に小さな親近感を覚えた。 「で・・・が、養子なのは解ったぞ、と」 「うむ」 「じゃ、血が繋がってる方の親は何処の誰だ?」 「・・・風の噂だが、生んだ女は旅の踊り子という話がある。仕込んだ男までは知らん」 「し・・・あぁ、そう。旅の踊り子ねぇ・・・・今時聞かないぞ、と」 「昔の話だ。若造が知るはずもない」 「へぇ・・・じゃ、は何処の生まれだ?育った場所は?」 「・・・・地図には載っておらぬ」 「大体の地名でいい。どこら辺だ?」 「・・・・・・・・ぬ・・・・・・・・暫し待」 「作戦会議は無しだぞ、と」 「っ・・・」 また時間をとられるのは御免被る。 溜息混じりに冷たく言い放つレノに、男は言葉に詰まると、先程髭を広げた老人を見た。 その視線に目を開けた老人は、男を見て大きく息を吐くと、頬付けをつくレノに視線を向ける。 「そうさのう・・・何せ地図にも載らん辺鄙な場所じゃ。 その地方独特の呼び名じゃが・・・確かカルナックと言ったかの」 老人の口から出た言葉に、レノはメモを取っていたペンを止める。 その地名は、確かにが言っていた、彼女の祖国の名。 無表情を取り繕いながら、微かに驚きを見せる三人の視線を無視する老人は、皺だらけの顔でニッコリ笑っていた。 「・・・・カルナックねぇ。聞いたこと無い場所だぞ、と」 「旅人も知らん程田舎じゃからのぅ。 今は人も殆どおらんで、村というより集落みたいなもんじゃよ」 「どこのエリアだ?」 「何処じゃったかのー・・・ワシらは数える程しか行った事が無くての。 いつもが案内してくれたんじゃが・・・あの子の記憶が無いのではわからんの」 「そんな場所にいて、の親父さんはどうやってボディーガードなんかできるんだ、と。 護衛は雇い主の傍にいるもんだと思うけどな」 「ホッホッホ。田舎で老後を楽しむ元金持ちの護衛を頼まれる事もあるじゃろ」 「ふーん・・・なるほどねぇ」 「フォッホッホッホッホ」 声を上げて笑う髭の老人に、レノは感心したように息を吐いた。 何となくだが、この老人はどんな質問も軽く受け流しそうな予感がする。 年の功というものもあるのだが、それ以上にこの老人は悪知恵が働きそうな予感がする。 時計を見ると、面接を始めてからもうすぐ1時間を過ぎようとしていた。 途中彼らの作戦会議があったとはいえ、もう十分質問はしただろうと考えると、レノは彼らの顔を見る。 「そろそろこっちも時間なんでね。今日はこれまでだぞ、と」 「今日・・・とな・・・?」 「後でにアンタらの言葉を聞かせる。何か思い出すようなら近々連絡するぞ、と」 「ほう・・・では、が何も思い出せ何だったら、ワシらは会えんという事か」 「何だと!?」 「落ち着かぬか」 「・・・・・・・・」 レノの言葉に、黒髪の男は椅子から立ち上がり怒りを露にする。 またも感じる熱気にレノが顔を顰めると、女性はすぐに男に制止の声をかけた。 今まで一度も声を発していない金髪の男に腕で制され、髭の老人に視線を向けられると、黒髪の男はバツが悪そうに椅子に坐りなおす。 男のお陰で汗でベタベタになった体に、レノは大きく溜息をつくと、湿っぽくなったハンカチで汗を拭った。 これはの所へ行く前に、一度着替えなければならないだろう。 「最初から、今日会わせるなんて一言も言ってないぞ、と。 最近物騒なんでね、念には念を入れてるんだ。悪いな」 「ふむ・・・まぁ仕方ないの」 「我らを疑っておるのか?!」 「念には念を入れると言っておるだろうが」 「・・・暑い」 逐一怒鳴る男に、レノはまたも熱気を食らい、ハンカチを投げつけたくなった。 今になって初めて口を開いた金髪の男に、レノは激しく賛同して大きく頷く。 持っていたペンを握りなおし、文字で埋まった書類に、レノは別の書類を引き寄せて裏返した。 4人の特徴を適当に書き入れ、線で仕切ると、彼は再び彼らに視線を戻す。 「アンタらの名前と住所。それと職業は?」 「ワシはラ・・・ラオウじゃ」 「イ・・イ・・イ・・・イストリーだ!」 「・・・・・シルヴァ」 「・・・・・・・・・・・・・・グンニグル」 「・・・・ふーん・・・」 自分の名を出す事に、随分考えるものだと言うように、レノは怪訝な顔で4人を見る。 その視線に、4人は平然としているものの、最後に名乗ったグンニグルという金髪の男を責めるような目で見ていた。 怪しむ素振りを見せているものの、実際レノは彼らの名乗りに内心声を上げて笑っている。 恐らく彼らの正体は、レノの予測で間違いないのだが、誤魔化しきれない彼らは目が必死だった。 どれもこれも、元の名前を少し変えただけに過ぎないだろう。 ただ、三人がせっかく偽名を作っているというのに、グンニグルとやらは本当の名を名乗っているも同然だ。 への良い土産話になると思いつつ、レノは彼らの名をメモすると、最後の苛めを開始した。 「名前はわかった。住所と職業・・・無いのか?」 「ワシらは旅をしておっての。住所というのも無いんじゃ。 職も無いのう。路銀はモンスターを倒して手に入れておるし」 「携帯は持ってないのか?」 「携帯?何を携帯するんじゃ?」 「携帯電話だ」 「・・・・持っておらんのう」 「それじゃ、連絡出来ないぞ、と。宿泊先は?」 「ふむぅ・・・今は野宿なんじゃ」 「・・・・・・・・」 「・・・・そうじゃ!一週間後のこの時間・・・午後3時じゃな。 この建物の前の広場にあるベンチに、ワシらのうちの誰かを待たせておこう。 もしが何か思い出すようなら、そこにいる者に連絡をくれんかの。 もし何も思い出さず、反応も無ければ、来ずとも良い」 「別にいいけどな・・・。俺じゃない誰かをよこしてもいいのか?」 「かまわんぞい。おぬしでも、他の誰かでも、でものう。 そうそう・・・もし、ワシらの言った事にが反応しなかった時。 その時は、試しに先程の若造をに会わせてみてくれんか?」 「リーブか?」 「そうじゃ。瓜二つと言うならば、記憶を戻す良いきっかけになるかもしれん」 「話はしてみるぞ、と。じゃ、もう終わりだ。帰っていいぞ、と」 仕方ないとはいえ、ほぼ強引に約束をする老人に呆れながら、レノは彼らが会議室から出て行くのを見送った。 旅をして、定住先も無く、職も無いとは、流石に如何なものか。 これでは、もしが本当に記憶喪失で、彼らが知り合いだったとしても、後の生活への心配を理由にお引取り願う事になるだろう。 突っ込まれない分には十分な嘘だが、余りに下手なそれは墓穴にしかならない。 召喚獣とは意外と頭が悪いのかもしれないと考えていると、部屋を出た4人に扉は閉まり、レノと沈黙だけが残された。 今の会話をどうに伝えてやろうか。 考えると楽しみなような、面倒なような複雑な気持ちになった。 だがその前に、汗をかいた体が寒気を訴え、レノは大きく溜息を吐く。 このまま外に出ては、家に帰る前に風邪を引く事になると、彼は書類を手にすると、会議室を出た。 ホールへ着くと、彼は上がってくるランプを眺め、気だるげに自分の更衣室がある階のボタンを押す。 丁度良く着いたエレベータのドアが開き、出てくる社員を見送ると、中に一人残っている人物に目を丸くした。 「よぉ。任務ご苦労さん、と」 「ああ・・・・」 相変わらず無表情で、腕を組み壁に背を預ける英雄に、レノは薄笑いを浮かべながら中に乗り込む。 相当汗臭いだろうに、文句も言わないセフィロスに、彼は内心感謝した。 「は、神羅総合医療センターの7階575号室だ。裏口からなら、夜中でも入れるぞ、と」 「・・・そうか」 「一緒に行くか?」 「その前に、お前は風呂に入れ」 「・っ・・・・・・レノさん・・・悲しいぞ、と」 「・・・・・・・・・・・・」 容赦ないセフィロスの言葉に、ちょっとだけ傷ついたレノは、軽口を叩きながら唇を噛む。 それすら、完全に無視するセフィロスは、鼻を啜る彼に目を向ける事も無く、窓の外を眺めていた。 |
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リーブさんは、さんの親父さんと瓜二つです。え?出来すぎな設定だって? いいじゃないですか夢小説の原料は妄想なんですよ(笑) 召喚獣出すぎ?だから原料が妄想なんですってば(笑) 妄想爆発支離滅裂夢小説なんで・・・テヘ(テヘじゃない)ウヘv(ウヘじゃない) そしてセフィロスさんがようやくミッドガルに帰ってきました。 2006.12.10 Rika |
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