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白い大理石の柱が並ぶ室内には、ゆったりとした旋律が流れる。
真紅の絨毯が途切れた先、冷たい床石には天井から吊り下げられた灯りが反射し、象牙色の光が室内を包む。
壁いっぱいの窓からは、淀んだ闇の下で地上の星達が輝き、遠い建物の影から大きな大砲の影が見えた。

貸しきられたレストランの中、唯一、人がついているテーブルの上には料理が並ぶが、彼らは会話もなくそれらを口に運ぶ。

そう。
何も会話無く・・・である。

2時間近くも待たされた社長は不機嫌そうに黙々とフォークを動かし、同じく不機嫌であるハイデッカーも社長の前であるため文句も言わず肉をナイフで切り刻む。

不可抗力だと言わんばかりのルーファウスは、最初こそ謝罪を口にしたものの、大人気ない二人の態度に会話を出す事も無かった。

触らぬ神に祟りなし。
此処は肩身狭く身体を縮こませるなど、怯えたフリをしつつ黙って食事するのが得策と、も黙って食事をする。

警護のため、4人の傍らに立っているツォン・レノ、セフィロスが言葉を発するはずもない。


それは既に会食ではなく、ただの重苦しい食事であった。




Illusion sand − 26





「社長も大人気ない事だ」
「当然の反応だと思うが・・・」

「不可抗力だろう。我々とて好きで遅れたわけではない」
「お忙しい方なのだろう?貴方だって2時間も待たされれば、腹も立つのではないか?」

「私ならわざわざ不機嫌な顔を見せず、会食ごとキャンセルする」
「五十歩百歩だな・・・」


当然のように言い放つルーファウスに、は呆れた笑みを浮かべながらボトルを手に取った。
彼女の最後の台詞が勘に触ったのか、彼は微かに表情を歪めながらグラスを差し出す。

深い赤が硝子の中で踊り、芳醇な香りが鼻腔を擽った。
注がれたアルコールを喉に流し込み、大きく息を吐くと、徐々に回り始めた酔いに拍車が掛かる。
自棄で飲むには勿体無いワインをテーブルに戻し、ソファに身を沈めると、自然と瞼が重くなった。

伏せた瞼を軽く持ち上げ、部屋の主の様子を見るが、彼女は別段気にしていないようにグラスの中を眺めている。
横目で眺めた時計は間もなく日付を変える刻を指し、窓から覗く夜景も段々と闇に変わり始めていた。
数分前まで聞かされていた社長の説教が耳に残っているようで、うんざりしながら大きく息を吐く。
腹の底に残る棘を紛らわせる事も出来ず、自然に溶けていくのを待つには、彼女の持ってきたワインは最適だった。


夕食後、室内で寛いでいたの元に、案内をしたホテルの支配人がやってきたらしい。
『是非ルーファウス様とご一緒にどうぞ』と、満面の笑顔で貰ったワインは明らかに彼らからの媚である。
いくら苛ついているとはいえ、ルーファウスの元へ持ってくるならば、いつも通り断っていただろう。

だが、を経由して渡されては断れない事を知っているのだから、彼らも底々悪知恵が働くものだ。

ルーファウスが普段、そんなサービスを断っている事など、が知るはずもない。
そんな彼女が、さも当然のように進められ、受け取ってしまうのは当然と言える。

その上名指しで共に飲んでほしいと言われれば、もそうせざるを得ないのだが、幸い彼女が気分を悪くした様子はなさそうだ。

無知な子供を使ったような悪戯も、今回ばかりは悪くないと思った。
但し、には次回から断るように言っておいたので次は無い。



「む・・・・・ふんっ・・・・ぬんっ・・・・・クソ・・・・何故だ・・・」



何処か切羽詰ったような小さな声に、ルーファウスは夢に落ちそうな意識を引き摺り上げ瞼を開けた。
何かが起きた訳でもなく、起きても平然としているの何時に無い声に目を向ける。
見つめあった瞬間口を閉じた彼女は、何食わぬ顔で視線を逸らしながら手に持っていたものを菓子受の中に戻す。
そのまま注意を逸らすようにワインのグラスを手に取るが、ルーファウスの視線は戻された菓子に注がれていた。


「・・・・・・・・ワインは久しぶりです」
「そうか・・・・」


グラスを掲げ、中で揺れる赤を楽しむように呟くは、彼の注意を菓子から離したいのがよくわかる。
だが、ルーファウスにそんな良い子な面があるはずもなく、その指は戻された菓子へと伸びた。

個包装されたそれは、カラを破って中身を取り出す一般的なチーズだったが、戻されたそれには他には無い戦いの跡が見える。
上手く破れなかったのか、それとも何処から破るのかわからなかったのか。
力任せに引っ張られた事実を語るように、カラは所々おかしな場所が伸びている。

モンスターは一撃のクセに、チーズ如きに奮戦し負けるは、マヌケというか奇妙というか・・・。

つい記念にとっておきたくなるそれを屑篭に投げ入れると、彼女は別のキャンディ包みされたチーズを口に運んでいた。


「・・・
「何ですか?」

「これが食べたかったのか?」
「・・・・・・・・」


ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべ、ルーファウスは彼女が惨敗したのと同じ包みを摘む。
図星をつかれて黙ったは、至極楽しそうな彼に腹立だしさと恥ずかしさを感じながら目を逸らした。

肯定しているとしか思えない態度をしながら、無表情で事を流そうというに、ルーファウスは小さく噴出す。
その瞬間、彼女の眉がピクリと動いた事で、ルーファウスは声を殺して笑い始めた。

口元を押さえ、肩を震わせるルーファウスに、は黙れと言いたげな視線を送りながら、彼のグラスに酒を注ぐ。
無知である事に少しは寛大になってもいいものを、ルーファウスは人の恥をフォローするどころか、動物観察する視線を向けていた。

こんな時、セフィロスであれば解りやすく説明してくれるだろう。
こんな時、ザックスであれば苦戦する前に開けてくれるだろう。
こんな時、レノであれば苦笑いしつつ、さり気無く見本を見せてくれるだろう。

堂々笑ってフォローのフの字もしてくれないのはルーファウスぐらいだ。

笑いはすぐに収まったものの、まだニヤニヤしている彼に、彼女は残る菓子を全て彼のグラスに突っ込んでやりたくたくなった。
だが、未だ楽しそうにする彼に、他に笑われる場所があるのだろうかと、は少々不安になる。

指先で軽く口元をぬぐってみるが、指先に僅かな口紅が写る意外何もついておらず、では何が面白いのかとは首をかしげる。
しかし、その瞬間正面の性悪小僧はそれすら面白かったらしく、またも小さく笑い始めた。


「・・・・お前は笑い袋か・・・?」
「くくっ・・・すまない。つい珍しい動物を眺めているようでな・・・」

「人間様が珍しいか。そうか。で、ルーファウス、お前は何て動物だ?」
「すまない。気分を害してしまったか・・・しかし、出来るならお前の部族の名を教えてくれないか?」

「カルナック王国家だ。血統証は無いが文句あるか?」
「まともに答える奴があるか。・・・・ところで、家名を思い出したのか?」

「レノのおかげでな」
「レノか・・・。だが、感謝しているようには見えないが・・・」

「カクカクシカジカ」
「フッ・・・大体予想は出来るが、無理には聞かないでおこう」


苦い顔をしてはいるものの、本気で怒ってはいないに、ルーファウスは目を細める。
彼女の行動自体、それほど笑いを誘うものではなく、他の誰がしても常の彼ならば気にもとめなかっただろう。
だが、それでも笑ってしまったのは、相手がだから・・・という、妙な理由である。
失礼極まりない。

何故彼女ならばと聞かれても、誰もが納得する答えはで無く、相手への好感という言葉しかなかった。
どうでも良いと思える仕草に、つい笑みが零れてしまうと同時に、益々彼女を手元に置いておきたくなる。

半分は気に入った女を手に入れたいという、男としての否応無い独占欲と下心。
もう半分は、彼女に対する人間としての興味と、面白い生物としての興味。

もしかしたら、珍生物としての興味が大半を占めてしまっているかもしれないが、それは女性に対し流石に失礼と思い考えないようにした。
出会って4〜5日目にして、早くもに対する女性としての意識はギリギリである。



、お前ほど私を楽しませてくれる人間は初めてだ」
「ルーファウス、お前ほど私をからかってくれる人間も初めてだ」

「光栄だな」
「そりゃぁ良かった」

「しかし、これ程面白い人間をからかわずにいるとは・・・
 お前が今まで出会ってきた人間は、随分な損をしていたようだな」
「お高い身分だったものでね。
 それに、対等に接する人間も殆どいなかった気がする・・・多分」

「なるほど・・・」


彼女の元の身分がどれ程のものかは知らないが、それ故孤独に似た境遇があるらしい事に、ルーファウスは小さな共感を覚えた。
それがまた、彼女を気に入る理由の一つにも加えられたが、神羅副社長と一国の軍人の身分の差を考えれば、彼女は自分ほどではないのだろう。

忘れてしまっている過去を探すように、何処か近く遠い場所を眺めるの表情は、それほど心地良さそうなものではなかった。


「元軍人と聞いていたが・・・軍事国家だったのか?」
「たしか専制君主の世襲制だったが・・・どうだったろうな?」

「そうか・・・」
「家もそれなりの地位はあった気がするが、結局ただの没落貴族だ。私の代で途絶えたしな・・・」

「貴族・・・か。本当に別世界の話だな」
「・・・本当に別世界だしな」


家の身分がどう変わったとしても、結局の所、やはり彼女の育ちが良かった事は間違いない。
温室育ちでは無さそうだが、その身や行動から出る品に、ようやく納得の地を踏んだ気がした。
言葉を紡ぐ彼女の声は曖昧さが滲み、深いところは既に忘れているのだろうと、ルーファウスはその話を終わらせた。

3分の2ほど無くなったボトルを眺め、いつの間にか眠気が飛んでいた事を思い出しながら、全く顔色の変わらないを見る。
移動での疲れもある上に、久しぶりの酒だというのに、彼女には酔いの気配など微塵も感じられなかった。

平然としている目の前の女性に対し、既に酔いが回っている自分が、男として少々情けなくなる。
元々彼女は酒に強い方なのかと考えながら、日付が変わり始めた時計の針に、自室へ戻るべく腰を上げる。

出来ればもう少しをからかって遊びたい所だが、既に男が女性の部屋にいるべき時間帯ではない。
その上、明日の予定を考えると、そう長居はできそうになく、何より彼の身体は完全に休みたいと訴えている。



「私はそろそろ戻ろう」
「酒は?持って行くか?」

「いや、お前が飲んでしまってかまわん。全く酔っていないだろう?」
「ああ・・・ありがとう」



『今度は是非酔ったところを見てみたい』
そういい残して、ルーファウスは部屋を後にした。

閉じた扉に背を向けると、人が一人居なくなっただけだというのに、部屋の中がいやに静かに思えた。
ドアを隔てた廊下には、警護のソルジャー達がいると解っているが、自分一人だけの空間が狭間での日々と重なる。

少し意識するだけで大勢の気配も感じるし、耳をすませば遠くから人の居る音はするが、視覚的な情報というのはやはり大きいようだ。
数日前までは思い出さなければ意識する事の無かった孤独感が、今は妙に感じやすくなっている。

それだけ精神の根本が落ち着いてきたのだと考えながら、同時にこの数日の間、自分が随分浮かれていたのだと、改めて思う。
長い間繋がれていたのだから、それぐらいバチは当たらないだろうし、当たっては冗談じゃない。

だが、こんな高揚の後には必ず不安がついてくるもので、気を滅入らせるような焦燥感が溜息になって漏れた。

毎夜頭を過ぎり、だがそれ以上の喜びに覆われていた負の感情が、今日はやけに自己主張したがる。
いつもなら、目覚めたら狭間に戻っているのではと考えながら、明日また日が昇り変動する日々が来るという喜びが穏やかな眠りを誘ってくれた。
だが、今日という日は後者が前に出てはくれず、不甲斐ない自分が胸の内から辺りを探っていた。



「女々しい・・・」


自分が女である事を忘れ、は苛ただしげに呟いた。
悩まない人間も、不安を持たない人間も居ない事はわかっているが、考えても仕方の無い事に感情を煽られるのが気に入らない。


「・・・馬鹿馬鹿しい」


溜息混じりに再び呟くと、彼女は先程まで座っていたソファに腰を下ろした。
ザックスに『精神の鍛錬を』と助言出来る立場ではないと反省しながら、思考を掻き立てる沈黙を追いやるようにテレビをつける。
画面に映った金髪の女性は、今日起きた出来事を淡々と語り隣に座る中年男性があれやこれやと感想を語っていた。


『本日午後8時、ミッドガル4番街のバーで酔った男が暴れ逮捕されました。逮捕されたのは・・・』

「・・・何故この世界はわざわざ罪人の名を世界に広めるんだ?」

『幸い被害はグラスが割れるなどに留まり、怪我人はいませんでした』

「・・・・グラス割っただけで名前を晒されるのか?」


『・・・でゴボウで老人がモンスターを撃退するという事がありました。男性は元ソルジャーで数年前に引退。ウータイ戦争でも前線で戦っていたそうです。
 現在はカームで農業を営んでいるそうですが、現役を引退した今も日々の鍛錬は欠かさないそうで、現在のレベルは42。現役時代より強くなってしまっていると、笑って話していました。』

「42なら素手で勝てるだろ・・・ゴボウか?ゴボウがポイントなのか?」



真面目な顔を崩さず淡々と話し続けるニュースキャスターに、はポツポツと独り言を喋る。
他人には関係の無い報告までする事が、一体何の特になるのか全く理解できない。
これが文化の違いなのだろうと納得しながら、余程この世界は平和なのだろうかと、興味の湧かないニュースを眺めていた。

視界に入ったワインボトルを手に取り、ラベルを眺めてみるが知らない文字の羅列でしかない。
既に体中に回ったアルコールが感覚を鈍らせて入るものの、気持ち次第ではまだいくらでも平静は保つ事が出来た。

元来酒には人並み程度の耐性しかなかった上に、暫くぶりの酒なのだ。
3口目程で既に酔いは回り始めてしまっていたのだが、ルーファウスが気付かなかったのは顔にも態度にも出なかったからだろう。

昔の記憶を手繰り、自分が酔った時の事を思い出すと、は今更ながら平静を保っている自分に安堵した。
確かに昔、仲間と酒場に行き酒に酔って何か仕出かした記憶はあるが、今となっては一体何が起きたのか覚えていない。
だが、記憶を手繰ろうとする度に後悔や羞恥が燻る事から考えると、恥を晒した事は間違い無いだろう。

記憶の彼方で思い出すなと叫ぶ自分がいるのだから、思い出さないほうがきっと幸せに違いない。
とりあえず、酒はあまり飲むべきではないと自分にいいきかせると、まだ中が残っているボトルをテーブルの端に追いやった。



『次は、今最も注目を集めている女性。○日にゴールドソーサーエリアの砂漠で保護された、さんの話題です』


ボトルから手を離した瞬間、テレビから聞こえてきたアナウンサーの言葉に、は数秒思考が止まった。
聞き違いのような、間違いないような内容に、首を傾げながら画面を見ると、アナウンサーの姿と共に自分の顔が映し出されている。


『本日夕方、さんは保護したセフィロスさん、神羅カンパニー副社長ルーファウスさんと共にジュノンへ無事到着しました』

・・・・・・・誰が着こうが人には関係無くないか?


何故わざわざそんな事を言う必要があるのか。
報じられる当事者となったは全く理解できないまま、画面の中に映されたジュノン港の映像を眺める。
船から見下ろした時とは違った角度から見るそれに、ここまで集まっていたのかと感心するが、しかしやはりそれは他人には関係のない事のように思える。


『港には、豪華な顔ぶれを一目見ようと集まった人々で、一時大混乱となり・・・』

・・・・・・・・・・。



さんは白いスーツ姿で、警備のソルジャーやセフィロスさんに守られながら車に乗り込みました。途中集まった人々に囲まれ、騒然となる事がありましたが・・・・』

セフィロスもソルジャーだろ・・・?



『しかし、今回は、ただの移動ではありません。かねてより噂されていた、さんとセフィロスさんの関係を裏付けるような瞬間がありました』

「は?」



突如嬉々とした声色に変わったアナウンサーの言葉に、は思わず言葉をもらしながら画面を見る。
別のカメラで捕らえた映像だと言われ流されたそれは、移動していた自分達を斜め上から撮ったもので、どうやら立ち往生した時のようだった。

状況を話していたアナウンサーが、『次の瞬間です』と言うと、テレビにはセフィロスがを引き寄せた瞬間が映し出される。
彼がソルジャーの背を支えた手は、狙い済ましたように別のソルジャーの影に隠され、知らぬ者には公衆の面前でイチャついているようにしか見えなかった。


「何だこれは!?」

『わかりますでしょうか。この時、押し寄せた人々で警備のソルジャーが体勢を崩し、さんにぶつかりそうになりました。それを、セフィロスさんが咄嗟に庇ったわけなんですが、このように抱きかかえるようにして、さんを守っています。本当に、仲がよさそうですね』

「仲っていうか・・・」

普通助けないか?


『セフィロスさんは、保護した時から殆どの時間をさんと共にいるそうで、軍でも只ならぬ関係と噂されていたそうです』

只ならぬって何だ只ならぬって・・・




『神羅カンパニーに問い合わせた所、お二人の関係については何も聞いていないという事でしたが、映像を見る限りでも、何だか良い雰囲気ですね』


状況が状況で緊迫してないか?この娘どこに目をつけている・・・?




『そうですねー。セフィロスさんは、ここまで人の世話を焼く人ではないそうなんですよ。さんがミッドガルに向かう時も、自ら進んで同行すると言ったそうで、これはちょっと目が離せませんねぇ』

「おい小僧、貴様も何を同意している!?」



『今までセフィロスさんには、スキャンダルが殆どありませんでしたし、人目も気にせず手を差し伸べる姿というのは新鮮ですね』
『そうですね。しかし、私としては、男の性分と言うか何というか、ついさんに目が行ってしまいますね』
『お綺麗ですよねー。同じ女性として羨ましい限りです。さんは保護された時から、一部で美人と報じられていまして、コスタ・デル・ソルに到着した時も、現地の方から同じような感想を頂いていました。本日初めてマスコミの前に姿を現したのですが、噂以上と、カメラマンからも思わず溜息が漏れていたそうです』
『小柄ですし、それに細いですよね〜。髪も綺麗ですし。つい守りたくなるセフィロスさんのお気持ちは、何だかわかる気がしますよ』


私はそんなに小さく無いし、細いんじゃなくてやつれてるんだ。頬骨が軽く浮いてるだろうが。
しかも他人に守られるほど弱弱しいフリなんかしてないぞ。むしろ堂々してるだろうがこの映像は。
大体セフィロスは私を守ろうとしたんじゃなくて私を止めてたんだ。憶測で物を言うでない馬鹿めが!



『長い黒髪が、セフィロスさんとセットみたいですよね。真っ白なスーツにが、よくお似合いです』

どっちと並べても喪中の色だろうが。せっかくならレノとセフィロスを並べろ。めでたい。


『二人ともお似合いですよね。しかし、さんは先日ルーファウスさんと拉致されてから、急速に仲が良くなったらしいという情報もありますよ』

いや、急速も何もあの日が初めてルーファウスに会った日なんだが?



『救出にはセフィロスさんも向ったそうなんですが、発見した時はお二人は一緒にいたそうです』

離れたら面倒だろうが



『セフィロスさん、やきもきしたんじゃないでしょうかね?』

いや、鳩が豆鉄砲食らった顔をしてた。



『船で数日間過ごしていたようですが、兵士の方に伺いましたら、ルーファウスさんがさんに猛アタックをしていたそうです』

シテナイ。友達宣言しただけだ。


『他にも、タークスのレノさん。この赤い髪の方ですね。その方もさんにアプローチしていたという話しも伺っております』

サレテナイ。からかわれただけだ。


『3角関係どころか4角関係ですか。凄いですねー』

友情のな。


さんは、明日ルーファウスさんとジュノン市内を観光するそうです。3人とも素敵な男性ですからね。これからどうなるのか、目が離せません』
『私としてはセフィロスさんに頑張って欲しいんですがねー。さんは誰が気になるんでしょうね。是非聞いてみたいです』

全員友人だ馬鹿めが。



全く持って理解できない文化でも、他人の恋愛に興味が湧くのは何処でも同じらしい。
画面の中で楽しそうに話し続ける男女に、は大きな溜息をつくとテレビの電源を切った。
他の3人がこれを聞いても、ルーファウスは面白そうに笑うかもしれないが、他の二人は聞き流すぐらいしかしないだろう。

真面目に考えてブツブツ独り言を言う自分が馬鹿らしくなって、は服を脱ぎ捨てた。

既に1時に向う長針に目を向けて、ベッドの中に潜り込むが、冴えてしまった頭ですぐに眠れるはずがない。



時間帯が遅いとはいえ、世界に発信された電波を見た人間は少なくは無いだろう。
こんなに大勢の人間に顔と名前を晒されたのは、主君に取り付いた奴に邪魔者扱いされ、謀反を企てたと濡れ衣を着せられた挙句、賞金を懸けられた時以来である。

女王からの言葉に部下だった兵に追われ、賞金欲しさに身の程知らずの賞金稼ぎに襲われ
初めて会ったバッツと、仕事柄顔を知っていたレナにはビビられたし、
久々に会ったファリスには馬鹿にされて海賊に誘われ、ガラフには町に貼られた紙を見て役人に引き渡そうと騒がれ
結局レナがタイクーンで大臣に指示してくれるまで必要以上に襲わていた。

そういえば、水のクリスタルを持つ国では、問答無用で牢屋にブチ込まれ、逃げたらシヴァがいる部屋に隠れざるを得ない状況にもなった。


主君を守る事が出来なかったと、己の力不足を責めた時もあったが、何だかんだでそれもこれも全部結局はエクスデスのせいだったのである。


・・・・・思い出したら・・・苛苛してきた・・・・。



今更考えても仕方が無い事と知りながら、当時の苦労を覚えている脳がジリジリと感情を呼び起こしていく。

その日はにとって、この世界に来て初めての寝つきが悪い夜だった。






ルーファウスと絡むお話を・・・と思っていましたが、良いネタが思い浮かばず。
オヤジのようにテレビに向って独り言を言うさんでした。(オイ)
とりあえず、世間の状況を皆さんにお伝え。
4人の知らない所で、世間は何だか盛り上がってます。
2006.09.28 Rika
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