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多少の心配はあったが、彼女に自由な時間を与えるのは悪くないと考えた。 社長息子と二人で行かせるのは、多方面からの心配もあったが、彼女なら何とかするだろう。 だから、今も心配はしていなかった。 ただ、万が一彼女がボロを出さざるを得ない時の弁明を考える必要があっただけだ。 ルーファウスの身は、彼女が守る。 彼女の立場は、俺が守る。 否、彼女の立場は、彼女自身が守るかもしれない。 俺の役目は、二人を探すだけだな・・・。 Illusion sand − 16 「ルーファウス様とが、何者かに拉致されたようです。 現在、レノとセフィロスが探しております」 既に時計の短針が8を指す頃、ツォンはレノからの連絡を社長へ報告した。 護衛無しで出かけたルーファウスに、その予測があったのだろうと止めはしなかったが、事が起きた今、流石に黙っているわけにもいかない。 レノが後から気付かれないように尾行するかと思っていたが、過保護なセフィロスが窓からでも出て行くだろうと言い、彼は自室へ戻っていた。 だが、当のセフィロスは自分達が部屋へ訪れるまで、ベッドの中で惰眠をむさぼり、尾行も何もしてはいない。 目立つ自分が行くよりも、レノが行くのが当然だろうと、言い返した彼にその通りと返したくなったが、冗談を言い合っている場合ではなかった。 会食の時間を大幅に過ぎても戻ってこない二人に、社長は忌々しげに食事をたいらげると、媚び諂うハイデッカーと談話を始める始末。 心配など欠片すら無く、大口を開けて笑いあう二人に、今更ながらツォンは内心溜息をついた。 だが、暢気にしているのは彼らだけではない。 本来護衛をしなければならなかったレノとセフィロスも、妙に落ち着きながら外へ出る準備をするのだ。 二人の性格を考えれば、非常時であろうと慌てる事はないのだと結論は出る。 が、自分達のミスで守るべき相手を危険な状態にしているというのに、彼らは普段と何一つ変わらない。 見つかるのは時間の問題だが、人質は2人で、片方は右も左もわからない女性。 正義を掲げて戦ってくるとはいえ、どこの集団にも馬鹿はいるものだ。 それでなくとも、の容姿は人の意識を惹きつけると言うのに、この二人は悠長に構えていて、何かあったらどうするつもりなのか。 ルーファウスも、隙をついて自力で逃げてきた事があるが、同伴者が居ればそうもいかない。 危険は更に増しているのだ。 尻に銃弾を打ち込むような勢いで、ツォンは二人をホテルから追い出した。 その後、すぐさま社長とハイデッカーに報告しに来たが、この二人を見ていると、レノとセフィロスを許してしまいたくなった。 流石大物だけあって、息子と客人一人が連れ去られても気には留めないらしい。 それどころか、どこの地方のワインが美味いだの、ここの料理はどうだの談笑している。 これが息子のルーファウスであれば、まだ反応は変わっていただろうに。 物騒な考えを持つ男だが、彼は成すべき事と人の心というものをわかっている。 でなければ、恐怖を使う支配など考えはしないのだ。 「大方アバランチか何かだろう。 まったく・・・私の予定は変えられん。明日は予定通りジュノンへ行くぞ」 「ガハハハハ!その通り。 社長はお忙しくていらっしゃる!後はお前達で何とかしろ」 「・・・・・承知致しました」 セフィロスに睨まれるまで、を見て鼻の下を伸ばしていたのは何処の誰なのか。 見事な掌の返し方に尊敬すら感じながら、ツォンは静かに部屋を出た。 廊下では、中の会話を聞いていたらしいルードが、早速携帯でレノに時間制限は無いと連絡していた。 電話越しに聞こえるレノの声は、潜めているわけでもなく普通にツォンの耳にも届いていたので、まだ手がかりを探している最中なのだろう。 二人もいるのに、何時もより手こずっているようだと考えながら、自分の立ち位置に戻ると、ニ〜三の会話を終えたルードが携帯を仕舞った。 「どうだ?」 「神羅のプライベートビーチまで二人と思われる足跡が。砂に銃弾が1発。 血の後は無く、そこから数人の足跡が森に続いていると」 「そうか・・・」 森に入ったのなら、暗くなった今追跡するのはキツい。 それに加え、そこを抜けて遠くまで連れて行かれた可能性がある。 「朝までには連れて帰れるそうです」 「・・・・何?」 「ビーチから森の中まで、二人が連れて行かれたと思われる道を辿るように、氷の道が出来ていたそうで・・・」 「・・・・・何だそれは?何故そう言える?」 何をどうしたら、そんなものを作れるのかわからない。 それに、モンスターでもない二人に、何故そんなものが作れるのかと、ツォンは首をかしげた。 対するルードは、小さく咳払いをしながらネクタイを直し、小さく息を吐くといいにくそうに口を開いた。 「セフィロスが、に護身用にと氷マテリアを持たせたそうです。 彼女は魔法の使い方を良く知らないようで、今回の作戦の前の奇襲の時も魔法を暴発させたと」 「・・・・・・」 「前回はファイアを失敗して炎の壁を作りMPを空にしたそうで・・・ 今回はブリザドでも使おうとして、別の形で失敗したのではないかと・・・・」 「・・・・・そうか」 暴発させるような人間に、マテリアを持たせるセフィロスの神経がわからない。 結果は良い方向に向いたのだと考えれば悪くは無いが、万が一彼女自身に魔法がかかったらどうするつもりなのだろうか。 いや、そもそも、どうやったら魔法を暴発できるのか、という女性の技量がわからない。 相当才能が無い人間でなければ無理なのではないだろうか。かなり貴重な資質を持っているに違いない。 ルードもまた、ツォンと同じ考えらしく、二度目の咳払いをすると姿勢を正して見張りの仕事に戻った。 その姿を横目で見ながら、護衛に囲まれる中で護身用のマテリアを渡すセフィロスの保護者ぶりに、大きく溜息をついたのだった。 「こんな失敗の仕方、見た事ないぞ、と」 苦笑いを浮かべながら、踏みしめるたび砕ける凍った草の上をレノは歩いていた。 数歩前を歩くセフィロスは、それに答える事も無く、ただ黙って氷の上を辿っていく。 闇に閉ざされた森に、木々の合間から、微かな月明かりが肌を青白く照らす。 その僅かな光を反射する見事な氷の道は、暗闇の中に出来た光の道のようだった。 森に入って十数分。 迷わず先に進めているのは、が作ったに違いない、この道のお陰だろう。 他に、こんな芸当が出来る者がいるとも思えない。 浜辺の足跡を辿り、森に入った瞬間靴の裏で砕けた氷に、手間が省けたと大きく感謝した。 弁明は、レノからルードに伝えられたとおり。 もっとも、セフィロスはにマテリアなど渡した覚えは無いが、先のファイア事件を混ぜて説明したらすぐに納得した。 彼女も、自分がそれに似た虚言で誤魔化してくれるとわかっていたのだろう。 雷や炎で道を焦がしても、暗い森では見失う。 それに比べ、光を反射する氷ならば、わずかな月明かりでも見る事が出来るので、追跡は難なくできた。 考えながら振り返り、来た時同様溶ける事無い氷の道に、簡単の息を漏らしかけた。 昼から比べて幾分かマシになったとはいえ、南国の夜は暑い。 今日もそれは変わる事無く、熱帯夜の中で長時間保ち続けられている氷点下の道に、どれ程の魔力を持っているのかと、考えずにいられない。 その上を歩くこちらとしては、涼しくて快適なのだが、彼女が自力で逃げ出すという事はないだろう。 ルーファウスという目もある。 恐らくこの道は彼女達が捕らえられている場所の近くまで続いているはずだ。 それ以上の事はしないので、無力な人間を助けるが如く駆けつけろと言う意味だろう。 その方が、セフィロスも助かるというもの。 自分達を攫う者達の根城を潰させるつもりか・・・という考えは、果たして行き過ぎなのかどうか・・・。 「そういやぁ・・・軍の中で兵に剣の稽古してたらしいな」 「何処で聞いた?」 「情報網は広いもんでね」 ニヤリと笑うレノに、セフィロスは内心小さく舌打ちをした。 確かに、それを見ていた者は軍の中でも大勢いただろう。 口を閉ざすように根回しはしていたが、やはり届く所には届いたらしい。 「何者なんだ?」 「さあな。俺は、俺が居ない間自分の身を守る術を教えただけだ。 その兵より、彼女の方が遥かに才能があったという事だろう」 「・・・ほー。ま、そういう事にしといてやるぞ、と」 「・・・・・」 「心配しなくても、他言はしないぞ、と。面白くなりそうだからな」 厄介な奴に絡まれたと、セフィロスは眉間に皺を寄せながら大きな溜息をついた。 彼がわざわざ他言しないと言うならば、口封じは必要ないだろう。 頭痛の種になるつもりはないようだが、恐らくの傍をウロつく事が多くなるのは目に見えている。 が、これ以上の弁明はボロが出るだけだと、セフィロスはそれ以上言葉を続けるのをやめた。 レノも解っているらしく、それ以上何も言わずロッドを取り出すと、遠くにある廃墟の群れを眺める。 氷の道は、木々の合間から微かに覗くの集落跡に続き、途中で途切れていた。 その先は所々木の枝が折れ、最近人が歩いた事が解る。 不気味なほど静かなそこに、今だ人の気配は感じられないが、恐らく何処かに見張りがいるのは間違いない。 こんな場所に、モンスターが居ないという事が、それを確証にする理由だった。 とルーファウスは、この廃墟の中の何処かに捕らえられている。 ちらりと目配せをすれば、レノは同意するように口の端を上げ、同時に二人は大きな木の陰に身を潜めた。 此処から先は敵のテリトリー。 副社長であり社長の息子であるルーファウスを捕らえたのだから、遅かれ早かれ自分達が来る事は解っているはずだ。 下手に近づけば蜂の巣になるだろうし、罠も仕掛けているに違いない。 二手に分かれるのが上策だと、セフィロスはレノに西から行くよう目で促し、彼が立ち去ると同時に東へ向った。 ルーファウスにはが居る。 レノはの技量を知らないので、二人を助ける事を優先するかもしれないが、セフィロスはそうではなかった。 セフィロスの仕事は、怪我をせず、騒がせず、二人を迎えに行く事。 彼女が傍に居る以上、ルーファウスの命は絶対的に保障されているし、自分達がヘマをしても彼女が上手く立ち回るだろう。 今更だが、本当に自分は彼女を信頼してしまっている。 ここまで信じさせるもだ。 そうさせてしまう何かを彼女はもっているのだろうかと考えながら、セフィロスは闇の中に身を潜めた。 冷たいコンクリートに囲まれた部屋は、長らく閉じられていた場所独特の埃臭さがした。 それに加え、地下室特有のかび臭さと湿気に、一つだけ付けられた明かりが不気味さを出す。 そんな、人質を閉じ込めるには打ってつけの部屋で、縄に縛られた二人の男女は何を話すでもなく座っていた。 時計の無いそこでは時間もわからず、閉じ込められてからどれだけ時間が経ったのか定かではない。 慣れているのか、余裕の表情で室内を見回していたルーファウスも、退屈から来る睡魔と格闘をはじめていた。 一方のは、いつでも脱出可能な場所にいるのなら、閉じ込められているうちに入らないと、夢の中に片足を突っ込んでいた。 ルーファウスの持っていた銃も、連行されている最中に取り上げられ、も武器など持って居なかったので丸腰状態だった。 が、残念な事にの場合、武器があっても無くても与えるダメージが常人の域を超えている。 セフィロスやザックスの前では、体術に関しては少々の覚えがある程度の力加減をしていた。 故に、この世界でその事を知るのは本人だけであり、お陰で縛るものが鎖でなく縄なのだ。 自由を奪う縄は、いつでも魔法で外せるし、彼女も縄抜けは不得意だが一応出来る。 そこに居る理由は普通の女性のフリをしているからであり、間違っても脱出できないからではなかった。 初めは、ルーファウスが巻き込んでしまった侘びを言っていたが、さして気にしていないという事を解ったのか、それから何を話すこともなかった。 部屋に入れられた当初、雑談を始めようとした途端、部屋の外にいた見張りが五月蝿いと怒鳴ってきた。 逃げる計画など無駄だと、大声で言う彼に、五月蝿いのはどちらだと聞いたに拳を上げる始末。 もちろん、受けてやるほども寛大ではないので、すんなりよけて彼の拳はコンクリートに直撃していたが・・・。 痛めた腕にもがき苦しむ男に同情していると、別の男達が入ってきて彼を何処かへ連れて行った。 代わりに来た見張りの男も、縄の緩みが無いか確認した後は部屋のそのに立ったままだ。 「、寝たのか?」 「半分だけ。いつでも起きられる」 「本当に肝が据わっているな。普通は怯えるだろう・・・」 「怯えて現状が改善されるならそうする。ルーファウス、遠慮せずに寝てもかまわないよ?」 「遠慮しておこう。助けが来た時に人質が暢気に寝ているなど、無礼だ」 「瞼が重そうに見えるが・・・?」 「退屈だからだ」 「まぁ、この殺風景な部屋で愉快だと言う人もいないだろうな・・・」 「おい、静かにしてろ!!」 「・・・心の狭い事だ」 「苛ついても何も変わらないでしょうに・・・」 扉の外から怒鳴る番人に、二人は目を見合わせると大きく溜息をついた。 ほんの少しの世間話も許されないとは、なんて心の狭い番人だろう。 とはいえ、全く人質らしくない二人の会話が聞こえていれば、彼がイラつくのも無理は無いかもしれないが。 喚かれるのも面倒で、黙っているかと目で話し合った二人は、そのまま壁によしかかった。 わざと話し続けて番人で遊ぶのも悪くなかったが、五月蝿く怒鳴られるのは耳に痛い。 再び沈黙が訪れた部屋に、まだ来ない迎えを待っていると、やがて廊下が騒がしくなり始めた。 「神羅の奴らが来た。予定より早いが、計画はかわらん」 「OK」 思ったより早い到着だとルーファウスが考えていると、門番が鍵をいじり始め、厚い扉が開かれた。 何をするつもりなのか、2〜3の予想を立てて見上げていると、彼は見下す笑みを浮かべるとポケットからマテリアと銃を取り出した。 二人の手が届かない場所にあるテーブルの上にそれらを置くと、愉快そうに顔をほころばせて二人を見る。 「今からモンスターを放つ。せめてもの情けに、お前の銃返してやるよ。 それと、マテリアも1つくれてやる。俺達からの餞別だ。ありがたく思えよ」 「役に立たない情けだな」 「何もないよりマシだろうが。まぁ、鍵は開けといてやるよ。 縄から抜け出せれば、もしかしたら助かるかもな」 「なぶり殺しの上、自分達の手は汚さない・・・か。趣味が悪いな」 「お前ら神羅がいつもやってる事だろ?ま、そう心配するな。 このフロアに放たれるのはニブルドラゴンだ。痛いと思う前にあの世だからな」 「お前達に捕まえられるとは、大した事は無さそうだ」 「減らず口は今のうちだ。じゃぁな。 ライフストリームの中から、俺達が星を救う様を見てるがいい」 「お前達に、この星を統べる技量があるとは思えんな」 「星を蝕む寄生虫が・・・・星を統べるだと?大それた幻想を現実と取り違えてるのか?」 「随分な言われようだな。では、正義を掲げながら狂気に濁る瞳をしたお前達は何だ? 鏡で自分の目を見てみろ。その目には何が映っている?」 「お前達神羅は自分を正当化させたいだけだろう?俺はもう行くぞ。忙しいんでな せいぜいもがいて、これまでの行いを悔いればいい」 言い捨てて、男は部屋から出て行った。 罪の無い女性一人を巻き込んで、逃がすこともせずに殺すことの何処が正義なのか。 惨死を仕向ける狂気。 己の心の闇すら見えず、星を救うと言う矛盾した姿が、如何に滑稽であるかも気付いていない。 少なくとも、神羅は自分達の手の汚さを自覚していると、ルーファウスは男が消えた扉を冷たく見つめていた。 「行ったようですね・・・」 「そうだな。・・・・すまない。奴らがここまでするとは・・・」 「誤る必要は無いと、初めに言ったでしょう?」 「・・・・もうすぐモンスターが来る。 お前だけでも助けたかったが・・・タークスが間に合うかどうか・・・」 「ではモンスターが来る前に私達が逃げましょう」 縛られたままで逃げられるわけがない。 そう、ルーファウスが言おうとした瞬間、は勢いよく立ち上がり、縛っていたはずの縄がバラバラと床に落ちた。 何時の間に解いたのか、何故縄抜けなんてものが出来るのか。 目を丸くするルーファウスなど気にもとめず、はルーファウスの縄を解き始める。 「・・・・・・・どうやって解いたんだ?」 「縛り方が緩かったみたいで、いじってる間に結び目が解けた。3分くらい前かな・・・」 言っている間に、ルーファウスを縛っていた縄も解かれ、二人は自由の身となった。 まだ部屋の外は人が歩き回っているが、忙しそうな彼らは中の様子など見てはいない。 立ち上がったルーファウスは服の埃を払い、に差し出された銃を手に取った。 軽く握って感触を確かめ、細工がされていないか確認すると、弾が入っているか確かめる。 は、番人がくれたマテリアをポケットの中に仕舞い、軽い準備体操を始めていた。 「、戦いの経験はあるか?」 「・・・体術と剣を少々。先日神羅軍に奇襲をかけられた時も、それで・・・」 「相手は銃だ。お前は私の後ろに隠れていろ。奴らは容赦などない」 「・・・・わかった。が、いざとなれば私も前に出る」 逆の方が楽なんですが・・・とはいう事もできず、は仕方なく彼の言葉に従うことにした。 今守るべきはルーファウスの身であり、実際彼には傍観していてもらったほうが戦いやすい。 とはいえ、普通の女性はそんな芸当できるはずもないので、やはり彼の言う通りにするほかないのだ。 とりあえず、彼の身が危ぶまれる時に戦う許可だけはもらわねばならなかった。 「女性に守ってもらうのは、男としての沽券に関わるんだがな・・・」 「貴方が死んだら、必然的に私も死ぬんだが・・・」 「確かにその通りだ。離れるな」 「ええ」 段々と静まり始めた廊下に、暫し様子を見ながら話していた二人は、同時に部屋の外へ飛び出した。 脱走に驚きいたアバランチの数名が武器を構えようとするが、それより早く引き金を引いたルーファウスにより、胸から血を流してその場に倒れる。 応援がくるだろうと銃を構えなおし、を背に庇いながら歩くが、新たな敵が現れる気配は無かった。 最後の見回りだったのかと考えながら、だが油断はできないと、を背に庇いながらルーファウスは倒れたアバランチの元へ歩く。 仰向けになった死体の胸から、自分が扱える大きさの銃と弾を拝借し、別の死体から奪った小型の銃をに手渡した。 「念のためだ。持っておけ」 「はあ・・・・で、どうやって使うんですかこれは?」 「・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・記憶喪失なもので」 ルーファウスは考えた。 今ここで、に銃の使い方を教えても、それは悪くないかもしれない。戦える人間が増えるのは決してマイナスではないのだ。 が、彼女はルーファウスの後ろを歩く。彼女は銃の扱いは初心者。 という事は、遠くの敵より近くの自分が打たれる可能性がかなり大きいのだ。 近距離の攻撃はかなりのダメージを受ける。当たり所が悪ければ即死。 ここで彼女に銃を使わせるのは、このまま無事外へ逃げるよりも遥かにリスクが大きすぎる気がした。 「・・・・・・・」 「ルーファウス?」 銃口を掴み、首を傾げるに結論を出した彼は、彼女の手から銃を奪い、代わりに敵のポケットに入っていた回復アイテム手渡した。 「援護は任せた」 「はい」 渡されたポーションを懐に仕舞った彼女に、ルーファウスは一先ず安心と、物色を再開した。 新たに見つけたエーテルや、装備されていたマテリアを奪い、に手渡すと、暗い廊下を歩き始める。 つれてこられた時は、目隠しをされていてわからなかったが、そこは迷路のように入り組んでいた。 確かに、人質を監禁し、敵を出迎えるには適しているだろう。 既に人の気配は無く、敵を捕まえて出口を聞きだすことも出来ない。 壁伝いに歩けば間違いなく出口に行き着くことは解っていたので、ルーファウスは何も言わず歩き続けた。 恐らく、迎えに来るのはセフィロスと、他に誰か居るとするならタークスが1〜2人といったところだろう。 アバランチが言っていた、ニブルドラゴンと遭遇する前に、迎えと合流できればいいが。 そう、考えながら歩いていると、曲がり角の先から、丁度良く今一番会いたくない生物の影が見えた。 予想より大きい体は、壁いっぱいに影を広げ、近づく度に大きな足音が響いてくる。 尾を引き摺る音と、地響きのような足音に後ろを振り向けば、既には構えをとり戦闘体制に入っていた。 なかなかの反応だ。と、考えている間に、角から首を出したドラゴンが大きな唸り声を上げる。 口の端から零れる炎に、冷や汗が出るのを感じながら、彼は銃を構えなおした。 姿を現したドラゴンに、の目が本気の色に変わった事など、ルーファウスには知る由もなかった。 |
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普通の女性のフリをさせていると、戦わせるのも気を使いますね。 弁明役のセフィロスさんに頑張っていただきたい。 2006.05.21 Rika |
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