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星を眺めて眠りにつくと、また皆の夢を見た。 でも、それは今までのとは違っていて、暗闇に佇む私と彼らの間には、見えない力の川が流れていた。 渡る事は出来ない。だが、声は届いた。 「何だこれは?」 聞いても皆曖昧に微笑むだけで、何も答えてはくれない。 「もう、此処を離れるんだね、」 言ったレナの頬に、一筋の雫が流れた。 「此処・・・?」 「大いなる規律に基づく流れの中で、歪みは留まる事などできないんだ」 「歪みを作り上げた力・・・、お前さんがここを離れれば、次元の歪は消えてゆくのじゃ」 「もう、私達にも時間がなかったから・・・。でもね、またに会えて良かったよ」 次元の狭間から歪みを作り上げ、この世界に出た私。 此処・・・歪みを作った砂漠、その近くを離れるから、その歪みが消えるのか? 「狭間への道が閉ざされる。故に、もうこうして会う事は出来ないと・・・?」 「そう。もうすぐ扉は完全に閉じる。俺達は、元の世界に帰らなきゃならない・・・。、また・・・・・・お前を置いて・・・・俺は・・・俺達はを置いて行きたくなんかない・・・」 「帰れ」 呆れて言い放てば、皆驚いて目を丸くする。 どんな答えが返ってくると思ったんだ? 「お前らの帰るべき世界はあそこだ。お前らは帰らなきゃならない。 自然の流れに逆らうな。 それは、神の領域を侵した『奴』と同じだ。それは願ってはならない事だ。 如何なる時も、進むべき道、取るべき道を見誤ってはならない」 「でも・・・・でも、俺達はずっと願ってた!に会いたいって!の声を聞いて、俺達の声に答えてほしいって!千年・・・千年だぞ!?その間、どれだけ願っても叶わなくて・・・やっと・・・夢の中ででもお前に会えたんだ・・・話が出来た・・・が答えてくれて、笑って、呆れて、怒って・・・でも、まだ千年の時には足りない・・・」 「相変わらず欲張りだな・・・」 呆れて言えば、バッツは俯き拳を握り締めた。 相変わらず、我儘で、欲張りで・・・何だってこいつは昔から私の事になるとこうなんだ? 「例え千の時に足りずとも、お前達に再び会えた事、私は何より嬉しく思っている。 私だけでは取り戻せぬもの、お前達は取り戻してくれた。そでだけで、十分過ぎないか? 心配しなくても、私は結構幸せだ。適当に生きてやる。 お前らもそうしろ。流れに身を委ね、生と死の繰り返す世界に生きろ。 永久の輪廻を繰り返し、あの世界を見守り、危機が訪れたなら剣を掲げ守り続けろ。 それが、私が身命を賭してお前らに託したものだ」 命を捨て、死を失い、絶望に生きて尚託し続けていた思いを 異世界に来て尚、願い続けている思いを 今また霞み始めた瞼の裏の情景を 「我が故郷、お前達に託す。私の・・・・『死』を無駄にするな」 Illusion sand − 13 積み上げられた衣服を前に、は腕を組んでそれを眺めていた。 用意されたものに、遠慮しているわけでもなく、不満があるわけでもない。 単に、着方、着こなしがわからないのだ。 がこの世界で目にしていた服装といえば、神羅兵の征服、ソルジャーの制服、セフィロスの・・・裸にコート。 ハイデッカーの軍服に、社長とタークスのスーツぐらいである。 今目の前にある服は・・・・まぁ、ヒラヒラフリフリではないが、はっきり言ってしまえば見たことの無いデザインだ。 生まれてこの方、が着た事のある服といえば軍服か稽古着、稀にドレスやジョブに合った服装といった所。 こんな簡易的な服装などした事が無かった。 「、平気か?」 「セフィロス・・・!」 扉の向こうから聞こえた、救いの神の声にはすぐさま扉を開けた。 部屋に入って数分、まだ何も着替えていない彼女に、廊下にいたツォンとレノは首をかしげる。 「まだ時間はあるが、あまりゆっくりは出来んぞ」 「サイズ、違ったか?と」 「すみません、そうではなく・・・ セフィロス、手伝っていただけませんか?」 「「?!」」 さらりととんでもない事を言い出したに、レノとツォンは信じられないものを見たような顔をした。 流石のセフィロスも、人前でそんな事を言い出した彼女に、どう返してよいのかわからない。 彼女が何に困っているのか、大体の予想は出来るが、ここで承諾の返事をしてよいものか。 「・・・・何がわからないんだ?」 「着方と、着こなしが・・・」 「「着方!?」」 小さな子供でも解る様な事に助けを求めるに、ツォン達はまたも驚く。 そんな事の記憶まで無くなったのかと、自分達の予想より随分重症な記憶喪失に、次の言葉も見当たらない。 そんな彼らを一瞥し、小さな溜息をつくと、セフィロスは部屋の中に足を踏み入れた。 並べられた服や靴から、身に付け易い物を適当に見繕い、別に分けると隅に置かれた袋を傍に置く。 手際よく作業するセフィロスを、3人は扉の傍から黙って見つめていた。 「これを着ろ。下着は袋の中だ。それと、剣と荷物は後でザックスが届ける」 「ありがとうございます」 言って部屋を出たセフィロスに、は急いで着替えを始めた。 慣れない形の服に少々の違和感を覚えるが、着心地は悪くない。 防御力も素早さも考えていない作りである事が少々気にかかったが、戦う事がないのだから無駄な危惧だった。 ただ、一つだけ、どうしても気にかかることがある。 服のサイズは見た目で見当がつくにしても、下着や靴のサイズまで、何故知られているのだろうか。 セフィロスの指示で用意したといっても、それらは驚く程にぴったりだった。 相手のサイズを見抜く特技でも持っているのだろうか。 いや、助けられた時に、身体を洗ったときにでも医者が計ったのかもしれない。 どちらにしろ、些細な事だろうと、は残る衣服を鞄に詰めて部屋を出た。 「あれが・・・『ヘリ』ですか・・・」 大きなプロペラを回す小さな鉄の塊を、は唖然と見つめていた。 予想より半分以上も小さかったそれに、本当に空を飛べるのかと言う疑問と、途中で落ちるのではないかと言う不安がよぎる。 これならば、鳥形のモンスターを操って飛んだほうがまだ安心できるような気がしてならない。 父上様、私は今、空を飛べる黒チョコボがこの上なく愛しいです。 まだ剣を持ってこないザックスをヘリポートで待ちながら、は不測の事態に備えて思案していた。 壁に背を預けて遠くを眺めるセフィロスに不安はないようで、安心してよいものだと判断できるが、やはり不安は拭えない。 着替えを終える頃には居なくなっていたレノは、操縦席で何やらいじっていた。 ツォンは社長の所へいるらしく、まだ姿を見せてはいない。 「セフィロス・・・あれ、本当に飛ぶんですか?」 「ああ」 「落ちませんよね・・・?」 「心配するな」 「・・・・・はい」 「落ちた時は、全員仲良く死ぬだけだ。一瞬だから痛みも無い」 「・・・・・」 普通の人間は死ぬとしても、は『痛い』で済んでしまうのだ。 体が潰れたら、どうかは解らないが、はっきり言ってまだ死にたくなんか無い。 もっとも、落ちたとしても、自分が魔法を使って全員助ける事になるのだろうが、出来ればそうしたくはない。 それは、普通の人間には出来ない事なのだから。 よもや彼は、この世界の住人は、毎回死を覚悟しながらアレに乗っているのだろうか。 だとしたら、恐るべき度胸の持ち主達だ。 ・・・あまり見習いたくない。 「ー、荷物持ってきたぞー」 呼ばれる声に振り向けば、ザックスが剣と荷物を手にこちらに歩いてきた。 ヘリが起す風に黒髪を靡かせて、人懐っこい笑顔の彼からそれを受け取る。 「、そういう服も似合うな・・・ま、元が美人だからか?」 「ええ。自分の容姿は自覚してます」 「・・・普通そこは謙遜しないか?」 「じゃぁ・・・・・・・目玉腐ってますか?」 「どんな謙遜だよ・・・」 苦笑いを浮かべるザックスに、はニヤリと微笑む。 やはりこれぐらい転がして遊べる人間で遊ぶのは、楽しいものだ。 「先にミッドガルに戻るんだろ?それからどうするんだ?」 「それはまだ聞いていませんが・・・まぁ、適当に生きますよ」 「そっか・・・・あ、でも、戻ってきたら連絡するからな! また稽古してくれよ?」 「ええ。もちろんですよ」 「やった!!昨日のアレさ、死ぬかと思ったけどいきなりレベル5も上がってさぁ! よろしく頼みます、師匠!!」 「ははっ。では、次に私に会えるまで、言われた問題点をしっかりカバーしておいて下さいね」 多少声が大きくなっても、ヘリの音でかき消される為セフィロスは何も言わずそれを見ていた。 いっきにレベルが5つも上げるなど、優秀な指導者であってもそう簡単に出来はしない。 それを成して、どこが少々の指導なのかと、セフィロスは改めてという人間に驚いた。 「待たせたようだね・・・」 何処か生気の抜けた声に、二人は現れた社長を見た。 一体セフィロスに何をされたのか、見るも無残な程覇気の無くなった社長とハイデッカーがそこにいる。 傍に居たツォンがちらりとセフィロスに目をやるが、彼は何処吹く風で達に話しかけはじめていた。 「時間だ」 「そっか・・・まだちょっとしか話ししてないんだけどなぁ」 「またすぐに会えますよ」 「お前らの部隊は来月中帰還予定だ。それまで我慢しろ」 「来月〜!!?そんな・・・・あ〜・・・でも、丁度いいか。 その頃にはも落ち着いてるだろうし・・・な?」 「そうですね。無事お戻りになられるのをお待ちしております」 「そろそろ行くぞ」 「じゃぁな」 「はい」 先に行ったセフィロスに、はザックスと別れの言葉を交わすとすぐに追いかけた。 風に髪を遊ばれ、既に乗り込み始めたセフィロスに続き、中へ1歩踏み込む。 振り返り、手を振り見送るザックスに小さく振り返すと、セフィロスの隣へ腰を下ろした。 閉じられたドアを確認し、レノが操縦席のボタンを操作し始める。 ああ、まだ死にたくないぞ私・・・・。 落ちるな落ちるな落ちるな落ちるな・・・ 平然と窓の外を眺めながら、は心の中で呟いた。 やがてゆっくりと飛び始めたヘリは徐々に高度を増し、海から離れていく。 ザックスが居たゲルニカが小さくなり、陸に停まっていた軍が見えなくなると、はそっと視線を中に移す。 腕を組み、目を閉じているセフィロス。 憔悴したように、黙ったままのプレジデント。 とばっちりをくらい、騒ぐ元気の無いハイデッカー。 運転に集中してるレノ。 黒い板のようなものを耳につけて、誰かと会話するように独り言を言っている不気味なツォン。 ツォン・・・貴方はこの恐怖に勝てなかったのですか・・・ 落ちるのか?やはり落ちるのかこの『ヘリ』は。 あぁ、嫌だ・・・バハムート辺りに助けてもらおうか・・・。 コンフュをかけた後に召喚すれば、きっと大丈夫だろう・・・。 エアロとレビテトを併用して浮かせるという手もあるな・・・。 いや、待て。その後の説明はどうすればいいんだ? この高さから落ちて無事なんて、普通は有り得んだろう。 流石にここまでもてなしてもらって、そのまま逃げるわけにもいかない・・・。 ザックスともミッドガルで会うと約束してしまった・・・。 面倒だな・・・頼むから落ちるな。落ちてくれるなよ・・・。 あぁ、地上が愛しい・・・。 無事にコルデ・・ソリ?とかまで着いてくれ。 出そうになる溜息を飲み込み、は窓の外を眺めていた。 青く遠い空には千切れた雲が風に流され、遥か下には緑の山々が並ぶ。 まるで遠い日々をゆっくりと繰り返しているような景色を、はじっと眺めていた。 『・・・何で今日に限って皆無言なんだ?と』 ヘリが飛び始めて1時間程経った頃、レノは溜息交じりの小声で呟いた。 後ろの同乗者達には聞こえない程度の声量だが、隣にいるツォンにはしっかりと聞こえていた。 『社長がを愛人にと誘って、セフィロスに・・・・威嚇されたらしい』 『静かなのはいいが、内紛は勘弁だぞ、と・・・』 『睨まれていただけのようだ・・・・十数分程な』 『へぇ。そいつぁ厳し・・・・・・・・・・』 『?』 会話が途切れ、ミラーを見ながら唖然とするレノに、ツォンはそっと後ろを振り返った。 よもやセフィロス達に聞かれたのかと思ったが、そうでは無いようだ。 社長の前に向かい合って座っていたは、相変わらず外を眺めている。 セフィロスも、彼女の隣から動いてはいない。 が、彼は腕を組んだまま、彼女の肩に頭を預け、小さな寝息を立てていた。 この人が、今まで、こんな無防備な姿を見せた事があっただろうか? それを知らぬであろうは、さして気にする事も無く外を見ているが、真向かいにいる社長達はレノ同様呆然としている。 セフィロスの寝顔など、遠征に同行した班員も、夜の相手をした女達ですら滅多に見られないという噂なのに。 ただでさえ、今は社長もハイデッカーもいる。 その状況で、誰かの肩に頭を預けているなど、信じられなかった。 その愛刀のような、抜き身の刃の鋭さは何処にいったのか・・・ 戦慄を与える狂気にも似た冷たい空気は・・・ 『そよ風どころか、突風だな、と』 『・・・・・・・・・』 何を企んでいるのか、それとも[障害が多いほど燃える]と言った通り気力が湧いたのか。 騒動だけは起してくれるなと、ツォンは諦めの溜息をついた。 遥か前方に、太陽に愛された町の影が見える。 長く伸びる砂浜と、巨大な絨毯のようなエメラルドグリーンの海。 険しい岩山の合間を抜け、広がる平野に出れば、日の光を浴びて育った椰子が天に向って手を伸ばしていた。 この世の楽園と称される、常夏の町 コスタ・デル・ソル 漣と欲情的な水着姿の女性達に囲まれながら、遠くに見えたヘリに、ルーファウスは見下すような笑みを零した。 手を引く女性達に誘われるように、ビーチチェアから立ち上がると、掛けていた上着を羽織る。 「悪いな。時間のようだ」 言った途端、不満気に頬を膨らませる彼女達を置き去りにして、彼はヘリポートへと歩いていった。 |
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ルーファウス登場。 2006.05.07 Rika |
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