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To dear friends - 10 −冬− アーサーが、自分の言葉の意味が分かると言った季節になった。 と言っても、ミッドガルよりアイシクルエリアに近いジュノンの方が、冬の訪れは早いのだけど。 今は、ミッドガルの士官学校の実習旅行が終って、2週間ぐらい。 だから、マスコミや学校側からの情報で、何が起きたのか、私ももう知っている。 と言っても、そんな情報は『概ね』でしかないのだけれど。 今日は皆が実習旅行に発つ日だ。 そろそろミディールエリアに着いた頃だろうか。 今頃エリアの何処かで野営してるかな。 モンスターは手強いかな? でもきっと大丈夫だよね。 そろそろ疲れが溜まってくる頃かな? もうミディールには着いたかな。 皆温泉で休んで、そろそろ寝てるよね。 遅れた班も、流石にもう到着してるかな。 今日はミッドガルに帰る日だね。 帰っても、レポートがあるんだよね。 何も知らなかった私は、そんな暢気な事を考えていた。 今日は皆休養日だから、誰かから連絡が来ないだろうか。 ジュノンに来てから、誰からも連絡が無くて、腹が立つの通り越して頭にきてるよ。 同じ?でも少し悲しかった。 綺麗サッパリ忘れるほど、印象薄いのかな? ガイは忘れてそうだけど。 私のパンツも綺麗に忘れたし。 アレンは携帯自体持ってないからなぁ・・・。 ジョヴァンニは携帯のボタンいじるの苦手だから、もっぱら手紙。 だから1通ぐらいよこしてくれると思ったのに・・・皆無。 カーフェイは、一度だけ電話がきたけど、その時は真夜中で出れなかった。 神羅の祝賀会で爆破テロがあった日。 次の日何度かかけなおしたけど、出てくれなかった。 その最中、ニュースでレナード先生が死んだって知った。 ロベルトは、携帯あんまり使わないタイプだし。 会って喋るってタイプだから、仕方ない。 アーサーは・・・これは私が悪いのかもしれないけど、連絡する勇気が無い。 何て喋ったら言いか、何て送ったら良いか全然想像つかなくて、そのままズルズル・・・。 話題が無いってゆーか・・・・花火した日の事思い出すと、ちょっと・・・・恥かしい・・・? それで、向こうからもずっと連絡無いって・・・・悲しいなぁ。 他の友達も、たまに連絡くれたりしたけど、実習前だからあんまり暇が無いみたいだった。 そもそも、特に親友とか相棒と呼べるだけ性格が合う人がいなかったし。 皆普通に、普通の友達って感じだったし・・・私自身、あんまり携帯使ったりしないタイプだったし。 お金勿体無いでしょ?毎日同じ学校で顔会わせてたんだから。 携帯を眺めながら、そんな事を考えていると、ジュノンで出来た友達に、いきなり実習旅行の事を聞かれた。 何か連絡は無いのかとか、何がどうなってるのだとか、意味がわからなくて。 問い質して、初めて、ミッドガルの士官学校の実習旅行を反神羅組織が襲撃したと聞いた。 聞いた瞬間、頭が真っ白になって、教室を飛び出した。 多分、よくわからないが、多分ミッドガルに行こうとしていたんだと思う。 でも、廊下に出た瞬間担任に捕まって、校長室に呼ばれて、少しだけ詳しい話を聞いたけど、それは本当に少し詳しいぐらい。 その奥にある事は、校長も知らないようで、神羅から情報を与えられていないのだと言っていた。 先生達もいるのに、その場で携帯から皆に電話をかけた。 でも、誰も彼も繋がらなかったり、出なかったり、誰がどんな風になったとか、怪我をしたとか、全然わからなかった。 実習旅行が携帯持ち込み禁止なのを思い出したのは、寮に帰ってからだ。 何でこんな風になったんだろうとか、何でアバランチがとか、何でマクスウェル教官がとか。 『何で』ばっかりで・・・そこで唐突に、アーサーの「そのうちわかる」の意味がわかった気がした。 その数日間自分が考えた「何で」も、全部合点がいって、悔しいのか悲しいのか、自分がどうしたいのかわからないぐらい頭の中がぐちゃぐちゃになった。 カーフェイは、きっと何も知らなかったんだと思う。 だって彼、一緒の班に〜とか言ってたし。 ああ、あの香水、いい匂いだったな・・・。 ガイは・・・どうなんだろう。 よくわからない。 アレンも、イマイチ想像がつかない。 そういう事を悟らせないのは、彼が一番得意だから。 ジョヴァンニは・・・・知ってても気にしなさそう。 何があっても自分の道を行くタイプだから。 ロベルトの言葉も、少しだけ、知っていたのかな?と思ったけど・・・よくわからない。 だって彼は、誰に聞くんだろう。でも彼は私に、ジュノンに行けと、実習旅行に行かせたくないようだった。 アーサーは全部知ってたんだと思う。 校長の息子だし、彼の言葉は、知らない人間が言う言葉じゃなかった。 だから私をジュノンに行かせたんだと思う。 皆で幸せになりたいと言った私の言葉を、彼は覚えているだろうか。 泣き笑いのようなアーサーの笑顔と、『皆が幸せに』と言った彼の声と、他にも沢山思い出して、そんな最後みたいな気持ちになりたくないと、校長室のど真ん中で思いっきり泣き出した。 誰かが怪我をしたと連絡が無いなら、皆無事かもしれないという先生の慰めに、アバランチと戦ってそんなはずがないだろうと言い返す事も出来ないぐらい声を上げて泣いた。 そのまま意識が途切れて、気がついたら寮のベッドで目を覚ました。 泣き疲れて寝てしまったのか、それとも耐え切れずに意識を失ったのかと、ぼんやり考えた。 後から聞いた話だと、体術の教官に手刀で殴られ昏倒させられたらしい。酷くね? その後は、ずっとベッドの上でボーっとしていた。 心配した先生や友達が様子を見に来ていたらしいが、部屋の戸を叩かれた記憶は全く無い。 そしたら、いきなり銃火器の教官に、小型のバズーカーで部屋の戸を吹っ飛ばされた。とんでもないよね。 そんなに時間なんか経ってないと思ってたのに、私が部屋に篭ってから4日経っていたらしい。 昏倒されて4日寝てたんじゃないかと思ったが、目覚めた時に日付なんか見なかったので分からない。 その後も、学校に行く気にも人に会う気にもなれなくて、3日程、新しく用意された部屋に閉じ篭った。 食事もとる気にならなかったが、シリアスになり切れない私の腹は普通に鳴っていた。でもやっぱり、殆ど食べれなかった。 閉じ篭って4日目に、友達に泣きながら出てきてくれと、扉の向こうから言われた。 5日目の朝、いい加減皆を心配させるのはやめようと部屋から出て、学校に行った。 皆の視線が集中していたが、どうでもよかった。 教室に行ったら、寮暮らしでない友達にまた泣かれたが、かけられた言葉はいつもどおりの「おはよう」だった。 皆気を使ってくれたのだろう。 実習旅行やミッドガルでの話をされる事は無かった。 だから、きっと皆が知ってるだろう、誰がどうなったかという話もされなかった。 誰か一人ぐらいは口を滑らせるかと思っていたが、それもない。 最近聞いた話だと、私の校長室での鳴き声は、全生徒が聞いていたそうだ。 臨時集会のため、校長室から真っ直ぐ廊下の先にある、大多目的ホールへ生徒が移動中だったらしい。 校長室は扉を閉めていたが、校長室と廊下の間にある事務室は扉が開きっぱなしだったから、余計聞こえたのだろう。 自分がどんな鳴き声をしていたのかはわからないが、ある程度受け入れられるようになった今となっては、できれば変な鳴き声でなければ良いと祈るばかりである。 でも、受け入れられるようになったのは、その時の自分であって、実習旅行の事じゃない。 『もし・・・俺がいなくなったら・・・ 』 そう言ったアーサーの言葉の続きは、頭も心も拒絶して思い出したくはなかった。 『もし・・・「いつか」とか、「今度」とか、 』 そう言って抱きしめたロベルトの言葉の続きも、思い出したくなかった。 逃げているのだと自覚しながら、彼らが言った『もし』に、口を開こうとする度恐くなった。 知らなければならないのだと思う。 知らずにいられるはずはないのだ。 アーサーは、全部知っていて私を逃がした。 校長先生は、息子じゃなくて私を逃がした。 アベル教官は、アレンじゃなくて私を逃がした。 誰もかれもが、私を生かそうとした。 そして私は、何の危険に脅かされる事も無く、此処でこうして生きている。 だから知らなくてはならないのだ。 今日こそは。 「さん、ミッドガルの生徒さん達がいらっしゃったから、校長室まで来なさい」 「はい」 実習旅行が終って、向こうのゴタゴタも粗方片付いた今日、ミッドガルから生徒交流という名目で、何人かの生徒がジュノンへくる。 こちらに来た人数だけ、向こうにもジュノンの生徒が行くのだが、彼らは昨日ジュノンを発った。 面子は、私がジュノンへ来る前に決まっていたらしい。 だから、私は彼らの案内係という役を与えられた。 緊張と懐かしさに震える足を叱咤しながら、馬鹿デカイ校舎の廊下を担任と共に歩く。 期待と不安の比率で言えば、皆の安否という事実を知る手前、間違いなく後者の方が大きいだろう。 教室から校長室までは実際遠いのだが、慣れ始めた廊下が、自分が知るよりずっと遠くに感じられた。 ようやく着いた校長室の前で静かすぎる中と廊下に、自分の心臓の音が五月蝿いぐらい聞こえる。 この扉の向こうにいる、久方ぶりに会う友に、聞かなくてはならない。 皆無事だったのか、誰も怪我をしていないか、誰も・・・・いなくなったりしていないか。 軽いノックの後、校長の声がして、ゆっくり扉が開いた。 硝子テーブルの上には、いくつものコーヒーカップ。 そして、革張りの椅子には・・・・・・・・・ 「彼女が、お話していたさんです」 「・・・初めまして」 あの校舎で共に学んだ友との誰とも重ならない、けれど何処かで見覚えがある綺麗な女の子・・・・女の人?が一人、制服を着て座っていた。 短いスカートから見える組んだ足は、細くて綺麗だけれどしっかり筋肉がついていて、まさに理想形と言える。 足だけではなくその体全体も、細くて女性らしい線があるが、かなり締まっている様子が見てとれた。 胸元まである艶やかな黒髪が、会釈した瞬間さらりと揺れて、は同性でありながら思わず見惚れる。 が、そんな女性の眉間には微かに皺が出来、押し込めているだろう怒りは低い声色となって現れていた。 正直な感想は・・・・・美人なんだが、恐い。 校長も担任も、同様少しビビっているのが見て取れた。 しかし、自分の記憶が確かなら、この女性は確か英雄セフィロスと関係があったような・・・。 「あ・・・あの・・・」 「・・・この格好で生徒かとおもったようだが、気にするな。・・・・単なるバツゲームだ」 「はい?」 「私は彼らの引率として此処に来た教員だ。体術の教官と、剣術の補助講師を兼任している。3日間だけだが、よろしく頼む」 「あ・・・はぁ・・・」 「此度の交流において貴校にお世話になる我が校の生徒達だが、今少し席を外していてな」 「そう・・・ですか」 「掛けなさい。いい加減帰ってくる頃だと思うのだが・・・来たようだな」 ガヤガヤとしだした校長室の外に、引率の女性共感は顔を上げるが、その顔は先程より少し怒りが増した気がする。 騒いでいるからだろうと考えながら、が恐る恐る扉の方へ目をやると、軽いノックの後「失礼します」という、覚えのある声が聞こえた。 会えるのだ・・・と、期待と不安に、はゆっくり開くドアを見つめる。 少しずつ見えてくるその顔、そしてその後ろにから聞こえるよく知る声に、はそこが校長しつである事も忘れて走り出・・・そうとしたのだが・・・ 「お前達、ただのトイレに一体何十分かかっている!しかも人様の学校の廊下で騒ぐとは何事だ!!」 「ヒィッ!」 「す、すんません!!」 「ごめんなさい!」 それより先に、女性教官が扉の前に行き、彼らに怒号を飛ばした。 再会の言葉や目が合うより先に、彼らの怯える声と、謝罪の言葉がの耳に届く。 「失礼。少々お時間をいただきます」 反論を許さないような声で言うと、女性教官はまだ顔も確認出来ていない彼らを廊下に戻し、自分も校長室から出てしまった。 上品な仕草で、パタンと扉が閉められたかと思った直後、その教官の「並んで正座しろ!」という怒鳴り声が聞こえる。 それにビクリとした校長室の中にいる面子は、互いに目を見合わせるが、扉を開けて止める勇気は無かった。 感動の再会・・・・と思っていたのは一瞬だけか。 アベル教官をも上回るこの鬼教官の前に、ミッドガルから来た彼らは、挨拶より先に校長室の前の廊下に並んで正座させられた。 校長が恐る恐る扉を開けて彼女を止めようとしたものの「礼節がなっていない人間がいては軍規が乱れる要因となります」とピシャリと言われ、アッサリ引き下がってしまった。 やはりあの女性教官、アベル教官以上だ。 その後、その女性教官が「鬼神」と呼ばれていると聞いたが、何の疑いも無く信じてしまったのは、無理も無い事かもしれない。 と彼らが再開の挨拶が出来るまで、もう少し・・・ End | ||
草薙五城様へ、お誕生日プレゼントの第8班夢でしたー・・・って長!(汗) 本当は長くても前編・後編の2話に分けるはずだったのですが、第2話あたりでアーサーが暴走を始めてしまい、気付けば・・・(笑) こんなに長くなってしまって、すみません(汗) オリキャラで夢を書くのは初めてだったのですが、楽しく書かせていただきました! 何より、オリキャラでリクをいただけたのが、本当に嬉しかったです。どうもありがとうございます! 長男アーサーと次男ロベルトが好き放題動いてしまって、途中大丈夫なのかと書いていて思ったのですが、可愛い我が子は何をしていても可愛いもので・・・自分の親馬鹿さ加減を自覚しました(笑) ガイが微妙に出張っているのは、ネタバレ部分を削除した跡です(笑) ショート連載ぐらいの長さになってしまいましたが、よろければお受取くださいませ。 五城様、嬉しいリクエスト、どうもありがとうございました! 2007.11.17 Rika | ||
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