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Illusion sand 番外編もしもシリーズ01 Family Fantasy 略してFF 皆様初めまして。 私は神羅の英雄セフィロスと、士官学校の鬼神と呼ばれたの娘。名をと申します。 日頃は父と母の馴れ初め話(Illusion sand本編)をご拝読下さり、真にありがとうございます。 この度は、皆様に我が家の日常をお楽しみいただければと思い、この短編で主人公となりました。 出来ればもう少しご挨拶したい所ですが、そろそろ私の起床時間が迫っておりますので、家族の紹介は追々させていただきたいと思います。 それでは、平凡で取り留めの無い日常ではありますが、私の一日をお楽・・・・ 「姉さーん!」 「ぐぇっ!!」 目覚ましが鳴るより先に、は腹部与えられた衝撃で目を覚ます。 寝起きの身体に72のダメージを食らい、悲鳴を上げた彼女は腹を押さえようとするが、布団が邪魔をしてそれは出来なかった。 またカダージュが起こしに来たのかと目を向けたは、腹の上に跨ってニコニコしている小さな弟を、布団諸共ベッドから転がり落とした。 「うわっと!酷いよ姉さん!」 「お前がそれを言うか」 酷いのはどっちだこの鬼ッ子め。 そう心の中で呟きながら、は落ちた布団を拾う。 妙にずっしりと重いそれに、何か引っかかっているのかと彼女は布団を広げ、そこにいた別の弟に固まった。 が丁度使っていた辺りに、ムササビが跳んでいるような体勢でしがみ付いている黒髪の子供。 カダージュより少し長めの髪と、ピンクのパジャマ。そして自分の寝床に入る子と考えれば、一人しかいない。 「ヤズー・・・いつの間に・・・」 「ずるいよヤズー!僕だって姉さんと一緒に寝たいのに、一人だけ!」 「んー・・・・?・・・んー・・・」 呆れると、頬を膨らませるカダージュに、ヤズーは布団にへばりついたまま薄く目を開ける。 二人の顔を交互に眺め、寝惚けた返事を返した彼は、そのまま何事も無かったかのように眠り始めた。 「もう!ヤズーはすぐ寝るんだから!!」 「んー・・・カダージュ・・・五月蝿い・・・」 「どうでもいいから二人とも部屋から出て行きなさい。じゃないと・・・」 「うわぁああああああん!!」 隣の部屋から聞こえた鳴き声に、は『やっぱり』と朝一番の溜息をつく。 リビングから父と母の声がして、すぐに父が廊下へ出た気配がした。 カダージュが開けっ放しにしたの部屋のドアを、少し前髪に寝癖が出来ている父が通り過ぎる。 『ロッズ』と父が呼ぶと、泣いていたもう一人の弟ロッズはピタリと泣きやみ、『父さーん』という声とバタバタという足音が聞こえた。 扉が閉まる音と共に、カダージュは慌ててベッドの下に頭だけ隠れ、ヤズーは布団を捨ててのパジャマの中に頭を突っ込んだ。 本人達は隠れているつもりなのかもしれないが、頭隠して身体隠さず。 毎朝の事ながら、は呆れつつ、事の成り行きを見守る事にした。 「おはよう。、こっちにヤズーとカダージュが・・・・」 「おはよう父さん」 ロッズを抱えての部屋に顔を出した父・セフィロスは、我が子の姿に言葉を途切れさせる。 『またか・・・』と娘に視線で問えば、は無言で頷き返した。 セフィロスに抱かれていたロッズは、二人を探して部屋の中をキョロキョロ見回し、すぐに二人を見つける。 手足をばたつかせたロッズをセフィロスが下ろすと、彼は真っ先にヤズーの元へ走った。 のパジャマに頭を突っ込んだまま寝息を立てるヤズー。 ロッズはベッドの上によじ登ると、寝ている彼の足首をガッと掴み、ズルズルと引っ張った。 が、半分起きたヤズーは、足をバタつかせて抵抗を始め、ロッズが手を滑らせると、這ってのパジャマの中に戻る。 泣きそうな顔になったロッズは、負けじとヤズーのパジャマのズボンを掴み、力いっぱい引っ張り始めた。 「ヤズゥー!朝だぞ!朝ぁ〜・・・うぅ〜・・・」 「泣くなよ・・・寝る」 「泣いてねぇよ!寝るなよぉ〜!」 ジロリと睨むヤズーに、ロッズは口をヘの字にしながら反論する。 また寝始めようとするヤズーに、ロッズは腕の力を強めるが、掴んでいたのがパジャマだったため、彼の体はまったく動かなかった。 その代わり、ズボンはパンツと一緒に下がり始め、遂にズルンと彼の足から抜けてしまった。 パンツは膝で引っかかり、うっすらと蒙古斑が残るヤズーのお尻が朝日に照らされる。 ヤズーの尻を晒して満足したのか、ロッズは奪ったズボンをヤズーの足元に置くと、ベッドの下に潜るカダージュをターゲットにした。 ロッズは起したり引っ張り出したりする事から、ズボンを奪う事に目的を変えたらしく、すぐにカダージュのパジャマのウエストに手をかける。 「やめろよロッズ!エロー!」 「エロじゃねぇよ!」 じゃぁ何だよ・・・ 毎朝の事で慣れてしまっているは、二人の遣り取りを聞きながらヤズーのパンツを上げてやる。 同じく慣れている父セフィロスも、子供達を置いてリビングに戻ってしまっていた。 尻が出ていても気にせず眠り始めるヤズーにズボンを履かせ、はベッドから出る。 彼女がベッドから降りた瞬間、バッと起き上がったヤズーは、先回りするように洗面所へ走って行った。 放って置けば叩き合いの喧嘩になるロッズとカダージュを引き剥がし、は二人の手を取って廊下に出る。 するとカダージュはの手を離し、母がいるキッチンへ走っていった。 洗面所で先に歯を磨いているヤズーは、のコップに水を入れ、撫でろと言わんばかりに見上げてくる。 せっかくならロッズの分も用意してやればいいのにと思いながら、彼女はロッズに歯ブラシを手渡しながら、ヤズーの頭をワシワシと撫でた。 自分の歯を磨きながら、片手で二人の弟の髪にブラシをかける。 長くてサラサラしているヤズーの髪はさておき、短いロッズの髪はあちこちがはね、鳥の巣状態だった。 ある程度ブラシが通るまでにはなったが、それ以上はの手に負えない。 父か母が何とかするだろうと考え、二人を洗面所から追い出すと、自分の髪を整え始めた。 母親譲りの黒髪に、そっくりの顔。そして、瞳孔こそ普通に丸だが、父親と同じ青緑色の瞳。 生まれた時の写真は、片目が母と同じ色だが、その後色々あってこの色になったらしい。 その色々というのが一体どういう事なのか、残念ながら私も詳しくは知らない。 だが、噂によると英雄セフィロスの娘という事で、生まれたばかりの私は前神羅カンパニーへの反抗組織や、変な科学者達に誘拐されたりしたらしい。 生まれてすぐに人生の不幸を一気に食らったようなものだとは、父の言葉だ。 だから後の人生は穏やかなものだろう。安泰だ。と、よくわからない言葉を言ったのは母だ。 そういう訳で、昔どんな色であったにせよ、今の私の瞳は青緑色。 一体どういう経緯で瞳の色が変わるのだと、小さな頃の私は思っていたが、魔光を浴びた人は皆瞳が青緑になるそうだ。 母と同じ黒い瞳の色に惹かれないわけでは無いが、父と同じ色である事も気に入っている。 気に入る・気に入らないは別に、この色になってしまった以上他にどうもこうも出来ないというのもあるが。 6歳の時、3人の弟が出来てからは更に気にしなくなった。 父の銀髪、青緑の瞳をしたカダージュ。 母の黒髪、父の青緑の瞳・・・そう、私と同じ配色(?)をしたヤズー。 父の銀髪、母の黒い瞳をしたロッズ。 面白いぐらい皆色がバラバラで、それまで周りの子とは違う瞳の色に少しばかり悩んでいた子供の私は救われた。 ただ、家族6人が並んでいる図が、白(銀)黒ばっかりで喪中っぽいという悩みも生まれたが・・・。 髪を結い終わったは、弟達に見つからないよう、こっそり自室へ戻った。 学校の制服に着替え、身だしなみを整えると、扉が静かにノックされ、着替え終わったヤズーとロッズが入ってくる。 二人に両手をとられ、少し引っ張られながら、は台所で母から食事を受け取るとリビングへ向かう。 既に朝食を終え、新聞を見ながらコーヒーを飲んでいる父の元にロッズは走り、いつものようにその膝の上に乗った。 頬にご飯粒をつけるカダージュは、箸を持ったままテレビに映るヒーローアニメ『突撃!神羅君』に夢中だ。 事実をこの上なくパロディにしたこのアニメは、神羅君という架空のキャラクターが、ソルジャー誕生の時代から、新生神羅が出来上がるまでの冒険の物語だった。 しかも、この中には自分の父親であるセフィロスを模した「英雄チェフィロス」というキャラや、現神羅社長ルーファウスを模した「ルーたん隊長」なるキャラもいる。 他にも、その頃活躍した人々がモデルのキャラが多数存在しているのだ。 子供向けのアニメにはなっているが、その実内容はかなり濃い歴史物のような感じ。 前神羅が崩壊し、新神羅が出来上がった時の「神羅戦争」を、子供でもわかりやすく教えてくれる番組だ。 だから、その頃の事を良く知らない大人でも、見ている人が結構いる。 今回は話のクライマックス。 ルーたん隊長が、父親のプレジデントパパと戦う事を決意する話だ。 『パパは悪い事をしたんだ。このままじゃ世界が滅んじゃうよ。だから止めなくちゃ!』 『ルーたん・・・そうだね!プレジデントパパを止めよう!僕も一緒に行くよ!』 『神羅君・・・ありがとう!』 『行こうルーたん!世界を守るんだ!』 『そういう事なら、この英雄チェフィロスも力を貸してやるぞ!』 『俺だって!このジャックスだって力になるぜ!なぁエンジェル!ジェネシー!』 『おう!』 『もちろんさ』 『レノノだって、ルドたんだって、力になるぞ!』 『・・・・』 『チョンもルーたん様と一緒に行きます』 『皆、ありがとう!!』 チャ〜ラチャラチャチャチャラリラリ〜♪ チャラリラ〜リ〜ラ〜リ〜ラ〜♪ ルーたんと神羅君が決意し、仲間が集った所で、馴染み深い神羅賛歌が流れてエンディングが始まる。 その途端、カダージュは食事を再開し、父はバサリと新聞を閉じた。 テレビの中では、神羅君の仲間達が仲良く手を繋いで道を歩くエンディングが流れ、は毎度の事ながら画面の中のチェフィロスと父セフィロスを見比べる。 我が父親ながら、随分とまぁプリティーにデフォルトされちゃったものだ。 その視線に気付きながらも、セフィロスはロッズに席を譲り、空のカップを手に母がいる台所へと歩いて行く。 次回予告が入ると、またカダージュは手を止めて画面に釘付け。 ロッズは自分の食事に夢中で、ヤズーはの目玉焼きに醤油をかけている。 「姉さん」 「何?」 「子供向けのアニメは綺麗に作られてるけど、実際はもっとドロドロだったと僕は思うよ」 「子供らしくないこと言うな8歳児」 「だって本当の事だもん。絶対父さんはあんな台詞言わないよ」 「そうだけど・・・」 年のわりに大人びすぎている弟に、はもっと夢見がちでいいのにと思いながら苦笑いする。 こういう冷めた所は父親そっくりだと思っていたは、次回予告のオマケのジャンケンで、真剣な顔でグーを出したカダージュに笑みを零した。 彼の隣では、味噌汁を啜りながら、真剣な顔で父が置いて言った新聞を読むロッズの姿。 子供らしく、読んでいるフリだけならまだ可愛げがあるが、ロッズの場合は本当に真剣に新聞を読んでいるのだ。 ただ、それも父が読んでいた記事の中から、一つだけ読むだけなのだが・・・それにしても子供らしくない。 一体何処の世界に、朝から新聞片手に朝食をする8歳児がいるのか。 此処に一人いるが。 普通の子供は自分とカダージュだけ。 平和だが平凡ではない家族に、今更ながら普通の家庭を羨ましく思いながら、は箸を置いた。 「カダージュはまた神羅君に夢中ですか」 「ああ。毎週毎週、よく飽きないものだ」 「チェフィロス君が此処にいますからね」 「・・・・」 「すみません」 「・・・・・」 じろりと睨むセフィロスに、は謝りながらも、洗物をする手を少し止めて口元を押さえる。 小さく溜息をついた彼は、色違いで3つ並んだ弁当箱に神羅君ふりかけをつけると、小さな箸入れと一緒にそれぞれの色の巾着に入れた。 「随分綺麗にまとめたものだ・・・」 「何をです?」 「神羅戦争」 「ああ・・・そうですね」 一番ドロドロのグチャグチャだった時期を、子供向けとはいえ綺麗さっぱりまとめた今回の神羅君に、も微かに目を伏せる。 プレジデント神羅、宝条、ハイデッカー、スカーレット、パルマー。 神羅の実権を握っていたこの5人を相手に、世界を巻き込む戦いを起してから、既に15年以上が経つ。 神羅戦争と言っても、目に見える争いは短期間で、水面下での争いの方が長かった。 どちらにしろ、規模の割りに短い闘いではあったが。 当然ながら、子供向けアニメでは、その上っ面の争いしか見せていない。 神羅戦争により、プレジデント神羅を初めとする神羅上層部の殆どは死んだ。 それも、戦死となっているのはプレジデントとスカーレットだけである。 体脂肪の率が知れないパルマーとハイデッカーは、病死と見せかけて暗殺された。 宝条だけは、何をどうしたのか生き残って、その後幾つか騒動を起してくれたが、14年前にセフィロスとの子供を誘拐した事で捕まり、処刑された。 実際は、完全に堪忍袋の緒が切れたセフィロス夫妻が、ルーファウスの全面許可の元、研究所諸共塵にしてしまったのだが、表向きは処刑という事になっている。 その頃の上層部で残っているのは、都市開発部門統括のリーブと、ミッドガルの市長ぐらいだろう。 彼らは今も元気に働いているが、ミッドガルの地下に作られたディープグラウンドの埋め立て工事が主な仕事となっていた。 亡きプレジデント神羅が残してくれた遺産と言う名の悪行は、規模が規模だけにまだその尻拭いが終っていない。 そういう意味では、まだ戦いは終わっていないのだろう。 平穏な生活は、今も昔も上っ面だけだが、それでも以前よりは随分世界は変わっていた。 昔神羅を脅かしていたアバランチ達も、「騒ぐのは魔光に代わる新しい技術を開発してからにしろ」というルーファウスの言葉に、今や完全な技術屋集団だ。 そうなるには、神羅も相応の態度が必要となり、今は共同で魔光エネルギーに代わる技術を開発している。 前神羅を叩き潰した新神羅の頭がルーファウスだった事が、向こうの態度を大分緩和させていた。 とはいえ、だからと言って両者の溝が完全に埋まったわけではなく、そうなるにはまだ相当な年月が必要になるだろうが。 大義名分を抱え、それを成し遂げたとはいえ、あの戦争はそれほど綺麗な理由で起きたわけではない。 1stソルジャー達は己の秘密を知って激怒し、ルーファウスは受け継ごうとしていた座の全貌に失望と憤慨。 はそれらの理由で怒り、それに加えて自分を実験台にしようとした宝条と、それを許可したプレジデントに呆れた。 事の次第を知ったザックスは当然神羅から離れ、結果、神羅は最も敵にしたくない人間達を怒らせて敵にしたのだ。 つまり、あの神羅戦争は彼らがブチ切れた結果。 理由はどうあれ、事の顛末だけを聞けば、なんともお粗末なものである。 と言っても、歴史が動く時は大半が陳腐な理由であったりするのだが。 そして、その陳腐な理由で動いた歴史の裏は、例に倣って結構ドロドロだったりする。 「懐かしいですね」 「ああ。随分長い時が経つが・・・・・・・、お前は本当に変わらないな」 「それはお互い様でしょう」 「そうだな。しかし・・・皺の一つぐらい出来ても良さそうだが」 「貴方も、少しぐらい髪が薄くなっても良いでしょうに・・・」 「それは勘弁願いたいな」 ジェノバの細胞を色濃く受け継ぐセフィロスと、生まれた世界の力を宿す。 お互いがお互いの理由により、この十数年全く年をとらないことに笑みを零し、二人は相手の顔や頭をまじまじと見る。 「・・・・・・・本当に、白髪一本混ざってませんね」 「お前も、シミの一つも無い・・・」 変わらなさ過ぎるのも、少し気色悪いかもしれない。 相手は元より、自分の体にも少しだけ嫌な感じがしながら、見た目だけは20代の夫婦は、お互いに年をとった証を探そうと顔を近づける。 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 「二人とも、朝から何してるの・・・・」 食べ終わった食器を手にやってきたは、子供の前で初めてイチャつく姿を見せる親の姿と、その甘さの欠片もない雰囲気に、なんとも言えない朝を迎えるのだった。 | ||
前々から書きたいと思っていた、パラレル娘夢・・・の、ハズが、何故か普通の家族夢に(汗) 初期構想で娘の相手だったはずのルーファウスは何処に・・・・。 連載中の7夢で、もしもゲーム沿いのような未来を迎えなければ・・・というパラレルでした。 タイトルはアレです。適当に考えました(笑) 2008.01.02 Rika | ||
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