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この世界のマテリアは、私達の世界での魔道書みたいなものなの 呪文の詠唱、魔力の操作、それによる魔法の発動。 その3柱が文字か宝石かの違いで存在してるという事。 微弱だけど、魔力を増幅する作用も多少持っているわ。 だから 貴方はマテリアを絶対に使っちゃ駄目 微弱な補助力と、それへの耐性しか持ち合わせていないマテリアに、の魔力を注いだら マテリアは壊れて砕けてしまう。 仮にマテリアが耐えられたとしても、手加減の上に更に手加減をしての魔法なんて、下手をすれば暴発だって・・・ 貴方は強い 貴方の魔力は大きい もう、昔の私達でも追いつけないぐらい、貴方の力は強大になってしまった マテリアは装備してもいい。 でも、それを使って戦うような事は絶対にしないで じゃなきゃ 貴方は・・・・ 私達は、貴方を戦わせるためにこの世界へ導いたんじゃない 忘れないでね Illusion sand - 08 夕食時、ようやく復活したザックスにおかずを半分奪われながら、は慣れない料理を味わっていた。 出された食事を口にしては、味があることに驚き咳き込んで老人扱いされ。 水を飲んでは、ザラつきのないそれに咽て病人扱いされ。 何か口にして、改めて次元の狭間から出られたのだと実感するのも束の間。 馬鹿にしたような笑いをするザックスに食事を横取りされないようにするのに必死だった。 「、その肉団子食わないならもらうぞ」 「ザックス、貴方さっき4つも取ったではありませんか」 「旨めぇ~。やっぱ運動の後は肉だよな」 「良いと言う前に取らないでください」 「あ、このニンジンはいらないや。他の野菜もらい~」 「アンタのおかずじゃないだろうが」 「パン足りねぇ~。半分くれ」 「さっきあげただろうが!大概にせねば切り刻むぞ小僧!!」 「何だよ~?女の子はもっと遠慮して小食で済ますもんだろ?」 「小食どころか、私はさっきからニンジンしか食えていません」 「野菜はいいぞ~?美人に磨きがかかるからな」 「そうですか。ではこのニンジン、君にあげよう」 「に・・・ニンジンは・・・いいや」 「遠慮はいりません。さぁコレを食べてその美貌に磨きをかけるがいい」 「お前ら静かにしろ・・・。 ザックス、お前は自分の食事だけを食え。人のをとるな」 「へぇ~い・・・」 「セフィロス・・・どうせならもっと早く言ってください」 「・・・・・そうだな」 溜息混じりに吐いたの言葉に、セフィロスが彼女の皿を見ると、そこには一片の人参が寂しそうに残っているだけだった。 確か、今日の配給のメニューは肉団子5個。 パンが2枚。 野菜の炒め物が少々。 スープは・・・既に空。 セフィロスの記憶では、の皿にはニンジンは4片しか無かったはずだ。 「・・・・・足りるか?」 「いえ、全く」 「だろうな・・・」 配られる兵糧はあらかじめ一人当たりの分量が決まっている。 いくら戦いが終わり、ミッドガルに戻るだけと言っても、くれと言って出してもらえるわけではなかった。 すでに食事を終え、とザックスのやり取りを笑いながら見ている兵達。 本来であれば、まだ体調が万全ではないは、きちんとした食事を取らなければならないところである。 それが、夕食にニンジン4片だけとは。 冗談にしては、明らかにやりすぎである。 何処からどう怒ったら良いのか、セフィロスは大きくため息をついてザックスを睨んだ。 が、その瞬間、火を囲む兵の中に、切なげな腹の音が鳴り響く。 やはりの分の食事を貰ってきた方が良いだろうか。 そう思いながら彼女の方を見たセフィロスの目には、あきれた顔でザックスを見るの姿があった。 二人分の食事を平らげたはずのザックスは、悲しげなため息をつきながら自分の腹を摩る。 旺盛すぎる彼の食欲に、とセフィロスは顔を見合わせ、同時に大きなため息をつく。 「どれだけ食う気だ・・・」 「だってよぉ、俺今日に扱かれまくったんだぜ?まだまだ足りないっつーの」 「私の方がよっぽど足りませんよ」 「ハハハハハ。あ、セフィロス~♪その肉食わないならくれよ!」 「草の根でも食っていろ・・・」 「俺はウサギか!!」 「針ネズミの間違いでしょう・・・」 「あ~、それ良く言われる」 「・・・かまっていられん・・・」 「同感です」 居候の身の上、我侭や要求をする気がないは、諦めて最後のニンジンを口に含んだ。 こうして食事を奪われるのは容認できないが、衣服や食事を与えてもらえるだけ幸せだろう。 今朝も昼も、体力を考慮して点滴しかもらえなかったのだから、食事の許可は軍医からの譲歩である。 少量ならかまわないが、沢山食べるのは胃に悪いので控えるようにとの言葉をもらった。 だが、ニンジン4片は食事の内には入らない。 これ以上不平を洩らす気は無いが、明日の朝からはザックスから一番離れた場所に座って食事をしようと、は強く思った。 「さん、よかったら俺の残ってるやつ、少しだけどあげるよ」 「俺も。それじゃ少ないだろ?」 「抜け駆けかよ!さん、俺のもあげる!」 「俺も!」 一人の兵が言い出したのを切欠に、それまで笑ってみていた兵達が次々との皿に料理を乗せ始めた。 返事をする間も遠慮の言葉を言う前に、皿の上に次々と乗せられていくニンジン。 渡されるのはすべてニンジン。 ニンジン・・・のみ。 「・・・・ありがとうございます」 「いいっていいって!俺たちさぁ~、みんなニンジン嫌いなんだよな」 私は残飯係りか? 「そうそう。セフィロスは平気みたいだけど、拒否されるしさぁ」 そりゃぁこれだけの人数に毎度渡されたら拒否するだろうよ・・・ 「さんがニンジン好きで助かったよ」 好きだなんて一言も言ってねえ 「遠慮しないで食べてね」 遠慮できる雰囲気じゃないだろうが・・・ くれるのは嬉しいが・・・全部ニンジンて・・・ 「皆さんのお役に立てて・・・光栄です。どうもありがとうございます」 人受けのいい笑顔を作った途端、兵達は顔を赤らめ鼻の下を伸ばしながら微笑み返す。 隣に座るセフィロスが無表情で見てくるのもきにせず、は皿の上のニンジンにフォークを突き刺した。 昔、仕事柄身に付けたものだが、この愛想笑いとうものはどこへ行っても人受けが良いらしい。 便利なものだ。 ただ、これからずっとニンジンばかり食べさせられる気がするのは・・・危惧ではないのだろう。 私は馬か・・・? 含む所があるにしても、折角貰ったものに感謝しない事は無い。 は訴えかけるようにザックスを見つめ、目を背けらるのも気にせず、皿の上のニンジンを平らげた。 夕食を終えた兵達は、片づけを終えるとぞろぞろとテントの中に入り込む。 それを手伝い終えたは、毛布一式を持つセフィロスに呼ばれ、トラックの荷台へと連れて行かれた。 戦いの後始末が終わるまでの数日、此処で寝るようにと言われた。 流石に男所帯に女を寝かせるわけにはいかない。 全員生存しているセフィロスの班のテントには場所も無く、かといって別の班に連れて行けるわけがない。 彼らが使っているテントの傍にあるトラックの中であれば、何かあってもすぐに来れるからと言う理由だ。 昼間の運転手耳たぶ凍結事件・・・・ではなく、運転手覗き見事件で、気を配っての事だろう。 此処ならば、誰かがトラックに近づいてもセフィロスやザックスがすぐに気がつく。 気付かなくともならば平気だろうとは思うが、やはりここでも上層部や他の兵達への体面は必要だった。 「何かあったら呼べ」 「はい。どうもありがとうございま・・・」 グ~キュルキュルキュルグゴゴゴゴゴゴゴキュルッキュ~・・・・ 「・・・・・・・・」 「・・・・・・・・」 「・・・・・・・・」 「・・・・・・・・」 「・・・・・・・・何だ・・・今のは・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」 「・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・やはり足りなかったか」 「・・・・・・すみません」 見かけからは想像も付かないような、今まで聞いたことも無い腹の音を出したに、セフィロスは驚くを通り越して呆れ顔になった。 赤面まではいかないものの、恥ずかしさに泳ぐ彼女の目は、彼をを捉えようとしない。 誤魔化せるかと思ったが、やはり駄目だったらしい。 当然だが。 ああ、このまま何処か・・・世界を廻る旅に出てしまおうか・・・・。 いや、そのまえにザックスに拳骨の1発でも与えねば気が済まない。 「枕元に奴の荷物があるだろう」 『奴』とは、間違いなくザックスの事を指しているのだろう。 セフィロスに言われ、敷かれた寝具の枕元を見れば、確かに彼の荷物を入れた袋が転がっていた。 だらしなく口が開けっ放しの袋からは、彼の服や荷物が零れ、床に転々と散らばっている。 「中に菓子が入っていたはずだ。好きに食え」 「・・・・ありがとうございます」 それはザックスが許可する事ではなかろうか・・・? というか、そんなものがあるなら初めから自分の食事を奪うなよ・・・。 そう思いながら、許可をくれたセフィロスに礼を言うと、彼は彼女に一瞥し、トラックを降りていった。 早速転がっているザックスの荷物から菓子と思われるものを出すと、は遠慮も迷いも捨てて袋を破った。 大きいものから小さいものまで、随分沢山の菓子があるものだと考えながら次々と中を物色していく。 普通、戦いに行くのなら、飴玉の一つや二つはもって行くにしても、ここまで大量に持ち込む人間などいないだろうに。 遠足に行く子供のようだと考えながら、手に取った袋からクッキーを取り出し眺めた。 焼き菓子など、本当に久しぶりだ。久しぶりなんてもんじゃない。 旅に出る前、主君の茶会に呼ばれてよく食べた記憶があるが、それ以来・・・・・ 『、バッツがね、ファリスとクッキー作ったんだって!食べてみようよ!』 『あの二人がお菓子作りなんて、珍しいわよね。ね、食べましょう』 『そうだな、せっかくだ。どれ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 『、黙っちゃってどうしたの?・・・って、あぁ!泡吹いてる!!』 『大変!HPが0になってるわ!レイズかけなきゃ!!』 ・・・・・主君にお呼ばれして以来、クッキーは食った覚えが無い。 二人が作ったアレはあれはクッキーじゃなかった。 間違いなく即死効果付きの最新兵器だった。 もしアレがあったら・・・神竜もエクスデスも一発だったろうに・・・。 何処からとも無く仲間の怒鳴り声が聞こえてきそうで、は小さく笑みを零した。 こんな事を考えられるほど、今の自分には余裕があるらしい。 ふと、長らくクッキーを眺めていた事に気がつき、二度目の笑みを零すとはそれを口に含んだ。 サクリという食感と同時に、砂糖の甘さとバターの香りが口の中に広がる。 安っぽい味だと思った。 昔食べた味を思い出したわけではないが、育ちのせいでそう思ってしまうのだろう。 だが悪くは無い。 美味いと思った。 そう感じられることが嬉しい。 そう思える感覚が身体に残っていた事が嬉しい。 懐かしさを感じられることが嬉しい。 これが生きているのだという実感だろうか。 此処に来て、ようやく感じられたのだろうか。 手に持つクッキーの半分を口に含むと、は残りの菓子は手をつけずそのままザックスの荷物の中に仕舞った。 遠慮というものは、残念ながら夕食の事のおかげで微塵も無い。 もし見られても、怒りながら気にせず食えと言われるだろうが、それ以上口に入れてしまうのが勿体無いと思った。 たった1枚だけと思うかもしれない。 だが、今はそれで腹も心も十分満たされた。 「ありがとう」 呟いた言葉は、誰に対してか、何に対してかわからなかった。 今も自分を支えてくれる仲間の魂か 助けてくれたこの世界の二人か 今日すれ違った、他人と呼ばれる兵達か 戦う運命へと導いた過去の仇敵 自分を生み育てた世界 受け入れてくれた新しい世界 己の運命 ただ全てのものに感謝した 「さて・・・どうするか」 緩む頬を押さえる事も無く、柔らかに微笑みながらは小さく呟いた。 いずれ、近い未来、セフィロス達の下を離れる日が来るだろう。 その後、まず何をしようか。 世界を見てまわりたい 人の中に紛れてみたい 花でも育ててみるか? 此処ではきっと、芽を出し、土に根を張り、葉をつけて、花を咲かせてくれるだろう。 ああ、そうだな。 花の種を撒きながら世界を廻るなんて最高かもしれない。 いつかその中で生を終わらせることが出来たら言う事無しだ。 私の体 狭間を抜けて辿り着いた時の流れる世界 ここでは死ぬ事が出来るだろうか ただの人のように、時に従い老いる事は…… |
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2006.04.23 Rika |
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