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報告だけの仕事を済ませ、自宅へ急ぐ午後3時。 風が冷たくなり始め、冬の訪れももう間近と迫った季節に、は早くも冬用のコートを着ていた。 タクシーから降り、マンションの中に入ると、寒さが一気に和らいだ気がする。 玄関を開けると、温かな空気が出迎え、同時に、いつもは無いはずのピアノの音にも出迎えられた。 「ただいまアーサー。CD聞いてたの?」 「おかえり。CDじゃなくて、俺が弾いてた」 「え?」 「休みだったから、買い物行って、中古のキーボード買ってきた」 「そうなの?じゃあ、聞かせて。私、着替えてくる!」 コートを脱いで寝室に走るに、アーサーは小さく笑みを零すとリビングに戻る。 戻ってきたは、ソファに腰掛ける彼の隣に座り、彼の指が動き出すのをワクワクしながら待った。 綺麗な手とは言えないが、男らしい大きな手が、ゆっくりと鍵盤の上をなぞる。 静かに動き出した指は、その動きとは対象に軽快な音を奏で、は少なからず驚きを覚えた。 ちらりと彼の顔を見上げると、その顔は楽しそうで、彼女も思わず頬を緩める。 響き渡る音は、もよく知る馴染みの曲で、きっと誰もが1度は聞いた事があるもの。 アーサーらしい曲。 その曲の物語も、題名になっている主人公も、何処か彼に似ている気がした。 優しい午後の日が差し込む部屋で、彼の微笑を見上げながら、彼が奏でるピアノの音色に包まれる。 それは、幸せな時間だろう。 機から見ても、恋仲にある二人には、とても良い雰囲気に違いない。 彼が弾いているのが、童謡「もりのくまさん」でなければ。 「アーサーらしいね……」 元保父志望で専門学校も出ているのだから、そういう曲を弾けても不思議は無い。 洒落た曲や、難しい曲を弾かれるのも悪く無いが、こちらの方が彼らしいので、別にそこら辺は気にしなかった。 ちらりと振り向いて微笑んだ彼に、柔らかく微笑み返すと、はゆっくりソファに身を預けて目を伏せた。 もりのくまさん 「お嬢さん、お嬢さん!」 「ん……うーん?」 体を揺り動かされ、はゆるゆると目を開ける。 目に飛び込んできた緑に、内心首を傾げていると、上から誰かがホッと息を吐く。 ぼんやりとした頭で、目の前にあるのが草だと理解しつつ、はのろのろと顔を上げた。 「気がついたか?」 「アーサー…………な、な、何その耳!?どうしたの!?」 傍にいた人がアーサーだった事に安心するのも束の間。は彼の頭にある、二つの丸い耳に飛び起きた。 茶色い毛が生えた耳は、見るからにフサフサしているが、今は触りたいとか考えている場合じゃない。 「どうしたの?なに、そのタヌキみたいな耳!?どうして?!」 「タヌキじゃない。くまだ」 「は?」 「それと、俺はアーサーという名前じゃない。この森に住む、もりのくまさんだ」 誰だ!私のアーサーの脳を改造したのは!! 至極真面目な顔で『もりのくまさん』を自称するアーサーに、は目も口もあんぐりと空ける。 タヌキ呼ばわりされて、少し気分を害したらしいアーサー…否、もりのくまさんは、ゆっくりと立ち上がると彼女に手を差し出した。 「何でこんな森の奥まで来たのかは知らないが、ここは危険だ。早く逃げろ」 「逃げるって…ごめん、私、現実から逃げたい」 「……何があったかは知らないが、きっと、今に良い事がある。希望を捨てるな」 「励まされても……」 彼の手を取って立ち上がりながら、は微妙に顔を引き攣らせる。 くまさんの頭にある耳を、まじまじと観察してみるが、作り物とは思えないほどリアルだった。 「あの、その耳、ちょっと触ってもいい?」 「……状況が理解できていないのか?俺はもりのくまさんで、お前は人間だ。捕食対象なんだぞ?食われたいのか?」 「いっつもベッドの上で私の事食いまくってるじゃん」 「アンタ何言ってんだ!?いいから帰れ!森の出口は向こうだ!さっさと逃げろ!」 ほんのり顔を赤くして怒ったもりのくまさんに、は小さく笑みを零すも、半ば強制的に歩かされる。 見た目も声も、手の感触も、まるっきりアーサーなのだが、彼は何があってもそれを否定したいようだ。 少しそっとしておけば、そのうち満足して帰ってくるかな……? そう思い、は彼に示されるまま、森の出口がある方へ歩いていった。 しかし、どうした事か。 自分以外の足音に振り向けば、逃げろと言ったくまさんが後から追いかけてくるではないか。 「アーサー、寂しいならそう言ってよ」 「勘違いするな。落し物だ」 やれやれ、やっぱり遊んでほしいんじゃないか。と、思って声をかけただったが、もりのくまさんは眉間に皺を寄せると、何処からかライフル銃を出して差し出してくる。 曰く、の落し物らしい。 「待って。待ってアーサー。そこって普通、白い貝殻のイヤリングじゃないの?」 「もりのくまさんだ。アンタ、イヤリングなんかしてたのか?そっちは見てないな」 「いや、してないけどさ?もりのくまさんって、女の子に貝殻のイヤリング渡すためについてくるんじゃなかったっけ?」 「何だそれ?アンタが落としたのは、この銃だろ」 覚えが無いよ……いや、ある。これは昨日の任務で使ってた、支給品の銃だ。 その証拠に、WROのロゴと、のナンバーが銃身にしっかりと刻まれている。 「わ、私のに間違いないよ。ありがと。でも……やっぱりちょっとおかしくない?」 「俺にはアンタの言う事の方がおかしい」 会話不可能? もうこれは諦めて彼に合わせるしかないと考えると、は苦笑いを浮かべて頭をさげる。 もう、これは本当に彼をそっとしておいて、帰ってくるのを家で待ってる方がいいかもしれない。 いや、もりのくまさんが落とし物を届けてくれた後なら、一緒に踊った方がいいのか? 「ごめん、本当にありがとう、もりのくまさん」 「ああ」 「お礼に、一緒に踊ろう?」 「アンタ頭おかしいのか?」 今のアーサーに言われたくないよ! そりゃぁ、イヤリング届けたお礼が一緒に踊る事なんて、どれだけ童話の中の少女は高飛車なんだと思った事はある。 だが、せっかく話を合わせてくれた人に、その途端掌を返すなんてあんまりじゃないか。 怪訝な顔で一歩引いているアーサーに、は悔しさで顔を赤くしながら、彼を睨みつけた。 「何睨んでるんだ?………わかった。踊ればいいんだろ?」 仕方ないと言いたげな顔で、もりのくまさんはの手を取ると、ゆっくりステップを踏み出す。 頬を膨らませただったが、そういえば、彼とこんな風に踊た事はなかったと思った。 ダンスなんてした事は無い。 誘ったにも関わらず、途端不安になった彼女だったが、アーサーは彼女の手を取って上手にリードしてくれた。 軽快にステップを踏んで、一歩下がったらくるりとターン。両手を上げて左右に一歩ずつずれ、回りながら背を向けあう。 隣り合ったら握った拳を頭の上につけ、腰から上を左右に揺らし、両足で3歩前に飛ぶ。 くまさんが先に3歩跳ねて下がると、は回れ右をして、彼の前まで2歩跳ねる。 彼と手を取り合い、ワルツのようにステップを踏んだら、カニ歩きで傍にある木の周りを1周した。 盆踊りよりはマシだよね……。 無表情でお遊戯をするもりのくまさんにリードされながら、の目は5日前の魚のようになっていた。 もう、今の彼には何も期待すまい。 そう心に決めながら、は彼にリードされるままお遊戯を続ける。 彼のズボンの尻の部分に、尻尾らしき毛玉がある事にさえ、全く驚かなかった。 春のように温かな森の中、無表情な男と二人っきりで踊りながら、の心には秋の風がビュウビュウ吹いていた。 と、踊りが終盤に差し掛かった頃、傍にあった草むらがガサリと揺れた。 踊りを止め、振り向いたは、ガッサガッサと揺れる草むらを凝視する。 「アーサー、何かいる」 「俺はもりのくまさんだ。くそっ。やっぱり出てきたか。だから早く逃げろって言ったんだ」 「え?」 彼女が首を傾げた途端、草むらの中から何かが飛び出してくる。 足元に出てきたそれに、驚いて後ずさっただったが、そこで動く小さな生き物に目を丸くした。 「キャォォン!」 そこにいたのは、掌ほどの大きさの、小さな小さなベヒーモス。 小さな口で吠える姿は、少しだけ可愛らしい気がするが、小さくともベヒーモスはベヒーモス。可愛い気がするだけ、だった。 「危ないから、今のうちに殺っちゃおっか」 「馬鹿か!さっさと逃げるぞ!」 大人になってからでは対処するのが大変だ。 そう考えて、ライフルの標準を合わせただったが、引き金を引く前にもりのくまさんに腕を引かれる。 「え?でも、大きくなる前に……」 「あれはベヒーモスの主だ。小さい体で油断させて、すぐに巨大化する」 「ぬ、主って、そんなの聞いた事…」 ない、と言いかけただったが、振り向いた先にどんどん巨大化していくベヒーモスを見つけ、言葉を飲み込む。 敵意と食欲の混じる目でギョロリと睨まれ、一気に冷や汗が出るのを感じた。 「ああああアーサー、どうしよう、私一人じゃ勝てないよ!」 「もりのくまさんだ。とにかく、戦える場所まで逃げる。離れるな」 「でも、アーサー丸腰じゃん!」 「もりのくまさんだ!って、さっきから言ってるだろ!」 怒鳴りつけると、もりのくまさんはの手を引いたまま大きな木の根元にある穴へ滑り込む。 土の上を滑る体は、悲鳴を上げる間もなく穴から抜けて、そこにあった1本道を走り出した。 後ろからは、ベヒーモスの雄叫びや足音、バキバキと木が折れる音が聞こえてくる。 走る二人は、真っ暗な森の中に入り、コウモリや蜘蛛がいっぱいいる道をまっすぐに突き進んだ。 「キノコ!森の毒キノコ!手を貸してくれ!」 アーサー、さっきからずっと思ってたけど、やっぱり今のアーサー、頭おかしいよ。 そう思っていたは、突如森がざわめき出したのを感じ、辺りを見回した。 何が起こるのだろう。 そう考えていると、突如目の前の土が盛り上がり、轟音と共に何かが現れた。 「もー。もりのくまさんってばどうしたのー?俺、今昼寝の途中だったんだけどー。ってゆーか、その子誰?」 「毒キノコ、ベヒーモスの主が現れた。手をかしてくれ!」 現れたのは、毒々しい色のキノコの着ぐるみ(本物?)を装着しているガイだった。 そこはかとなく、しいたけの香りがしているのはさておき、彼のキノコ姿は可哀想なぐらいよく似合っている。 「無いでしょコレは……」 菌類になったガイに、はボソリと呟くと、額を押さえて項垂れる。 事情を知った毒キノコのガイは、それは大変だと言って、ベヒーモスが来る方を振り向いた。 暗い森の木をバッタバッタと倒してやってくるベヒーモスは、もうすぐそこ。 どうにかしなければ、すぐに追いつかれてしまう。 「わかった。俺が足止めしてあげる」 そう言って、毒キノコはベヒーモスの方へ走っていった。 彼一人でどうするつもりなのか。犠牲になんて出来ない。 慌てて引きとめようと口を開いただったが、彼女の目の前で、毒キノコは走りながら、自分の傘をもぎ取った。 それって武器だったんですか? もぎ取った瞬間、傘の裏から胞子らしき粉末が大量に溢れ、キラキラと光っている。 ベヒーモスの前で立ち止まった毒キノコは、大きくふりかぶると、ベヒーモスの口めがけて自分の傘を投げつけた。 ドドメ色の円盤となった傘は、真っ直ぐベヒーモスの口に入る。 ゴクリとそれを飲み込んだベヒーモスは、次の瞬間白目を剥き、口から泡を溢れ出させた。 「やった!?」 「まだだ!」 巨体を左右に大きく振ったベヒーモスは、次の瞬間ブルブルと全身を震わせると、紫色の煙を口から出す。 真っ白な目と、口から吐く泡は変わらないが、先ほどより危険度が増した気がするのは気のせいか? 「ボーっとしてる場合か!行くぞ!」 もりのくまさんに手を引かれ、はまた走り出した。 ちらりと振り向いてみれば、役目を終えた毒キノコは、現れた穴に入って帰っていく。 先ほどまでより、心なしかベヒーモスの足は遅くなったが、その叫び声は4倍ぐらい恐ろしいものになっていた。 暗い森を抜け、キラキラと輝く小川に沿って走ると、広い平原に出る。 ここが、もりのくまさんが言っていた戦える場所か。 そう考えると、はくまさんが手を放すと同時に、追いかけてくるベヒーモスに向かってライフルを構えた。 引き金を引くと同時に、何故か弾が5発も出て、ベヒーモスの腹に命中する。 ダメージを受けて悲鳴を上げたベヒーモスに、もりのくまさんは……何故か、穴を掘っていた。 「ちょ、アーサー、何してるの!?」 「もりのくまさんだ。此処に、俺の最終兵器が隠してある」 「最終兵器?」 それって、アーネストさん? いや、まさか父親を生き埋めになんてするわけがないだろう。 きっと彼の剣か何かが入っているに違いない。 そう考えると、はまたベヒーモスに向かって引き金を引く。 が、今度は全く弾が出ず、何故だと考えていると、銃口からニョロリと羊羹が出てきた。 「よし、出てきた!」 「本当?」 銃口に詰まった羊羹を振るい落としながら、はもりのくまさんの方へ振り向く。 穴の中に手を突っ込んだ彼は、微かに口の端を上げると、中に入っているものを勢い良く取り出した。 それは、鬼のような形相をした、ロベルト兄さんでいらっしゃいました。 「これで戦える」 その前に殺される。 土だらけのロベルトは、冷たい目でを睨みつけると、もりのくまさんの手を乱暴に叩き落として穴から這い出た。 手には、何とも凶悪そうな、突起物が沢山ついた長い槍が握られている。 「頼む、ツチノコ。あのベヒーモスの主を倒さないと、森が平和にならない」 ツチノコとな。 この二人、本当に仲が良いのだろうかと思いつつ、はそっとロベルト……否、ツチノコに場所を譲る。 無言で槍を構えたツチノコの顔は、プライドを傷つけられて怒った時の、ロベルトの顔だ。 こうなると、彼は絶対に止らない。容赦も慈悲もへったくれもない。 「無理しないでね、ツチノコ……」 「僕はロベルトだよ」 「え!?す、すいません」 低い声で言った彼に睨まれ、は慌てて頭を下げる。 視界の端に、満足そうに頷くもりのくまさんがいたが、もはや今の彼の行動について、何かを言う気は起きなかった。 「行け、ツチノコ!」 アーサーの声に答え、ロベルト(ツチノコ?)は、ベヒーモスに向かって一直線に向かっていく。 慌てて銃を構え、援護に回ったの横で、もりのくまさんは何やらぶつぶつ言い始めた。 「もりのくまさん、何してるの?」 「召喚魔法だ」 言ってもりのくまさんは得意気に赤いマテリアを差し出して見せる。 煌々と光るマテリアだが、その表面には何故か彼の父親の顔がプリントされていて、は無言で戦闘に集中しなおした。 「俺の全力で召喚する。出て来い、第六天魔王・俺の親父!」 この人、父親の事そんな風に思ってるんだ。 もりのくまさんの言葉を適当に聞き流しつつ、は果敢にベヒーモスへ攻撃をしかけるロベルト(ツチノコ?)を援護する。 怒るロベルトの猛攻は凄まじいものがあり、ベヒーモスは早くも血塗れだった。 そんな彼らの真上。 遥か天上に、突如暗雲が立ち込め、稲妻を孕みながら渦を捲き始める。 確かにこれは魔王かもしれないと思いつつ、忙しなく引き金を引くだったが、次の瞬間、暗雲の中から巨大な何かが凄まじい速さで落ちてきた。 閃光と共に鼓膜が破れるかと思うほどの轟音が響き、衝撃と爆風が襲ってくる。 眩んだ目をうっすらと開け、そっと様子を見たは…… 「酷い」 ベヒーモスとロベルト(ツチノコ?)がいた場所を踏み潰してグリグリしている、巨大な足を見た。 「親父、助かった」 足に向かって笑顔で言ったもりのくまさんは、仕事は終ったとばかりにマテリアを仕舞う。 だが、気を抜いてしまったせいか、くまさんはマテリアを手から滑り落とし、ロベルト(ツチノコ)を埋めていた穴にそれを落としてしまった。 「し、しまった!」 くまさんの叫びと同時に、穴の中から何かが割れる音がした。 すると、なんと言う事だろうか。 霧のように消えかけていた魔王の足が、凄まじい臭気を放ち始め、暗雲に絡んでいた雷が地面に落ちてきたではないか。 「ひぇ!ちょ、アーサー、どういう事!?」 「もりのくまさんだ。召喚獣を帰す前に、マテリアが壊れたんだ。魔王が怒ってる!」 壊れたんじゃなくて、壊したんでしょ? しかし、そんな事を悠長にツッこんでいる場合ではない。 怒り狂った魔王は、意識が朦朧とするような臭さの足でダンダンと地面を踏みつけ、落ちてくる雷も激しさを増している。 「どうにかしてよアーサー!アーサーのお父さんでしょ!?」 「こうなった親父は、もう誰にも止められない。王国の姫アレンを生贄に差し出すか、伝説の勇者アベルを生贄に差し出さなきゃ駄目だ」 「どっちも生贄じゃん!もう、どうするの!?アーサーの馬鹿ーー!!」 叫ぶと同時に、一際大きな雷が二人目掛けて降ってくる。 轟音と共に襲いかかる青い光に、の視界は真っ白な世界に変わった。 「、大丈夫か?」 「え?」 気がつくと、視界は真っ暗な室内へ変わり、無表情のアーサーが顔を覗きこんでいた。 呆然と彼の顔をみつめたは、遠くで鳴り響く雷鳴と激しい雨音に、ゆるゆると周りを見回す。 そこは、慣れ親しんだ我が家のリビング。 灯りのついていない室内は、外の薄明かりに青白く浮かび上がっていた。 「うなされてたぞ」 「…………くまさん?」 「は?」 いきなり熊呼ばわりされたアーサーは、微かに怪訝な顔になって彼女を見下ろす。 彼の頭に、あの茶色い耳が無い事を確認したは、あれが夢だったのだと知って、ホッと息を吐き出した。 が、何故だろう。 夢だとわかったとたん、アーサーに対して物凄い怒りがこみ上げてくる。 勝手に妙な夢を見たのは自分だとわかっているが、その夢の原因を作ったのも彼のような気がして、はアーサーをギッとにらみつけた。 「何考えてるのアーサー!!もう少ししっかり考えてよね!全部アーサーのせいなんだよ!」 「は?」 「くまくまくまくま何度否定するの!?どう見たってアーサーでしょ?!そんなにもりのくまさんになりたいの!?」 「、何言ってるんだ?」 「大体、何で人が話通りに進めようとするとい違う方向に行くわけ!?何でイヤリングじゃなくてライフルなのさ!アーサー、私の事そんな風に思ってるの!?」 「・・・・・・・」 起きたと思ったらいきなり怒ってくるに、アーサーは意味が分からず口を閉ざす。 自分が原因の嫌な夢を見たのだとは予想できるが、あんまりにも支離滅裂すぎる言葉に、一体どんな夢を見ていたのかと彼女を凝視した。 「しかもロベルトだって埋めちゃっててさ!凄い怒ってたじゃん!ツチノコなのかロベルトなのかハッキリさせといてよ!私睨まれたんだよ!?」 「・・・・・・・・・」 お前はロベルトの事をそんな風に思ってたのか? 夢は、本人の願望や深層心理が映し出されるものだ。 つまり、彼女が今怒っている内容も、彼女自身の心の奥底にあるものなのだが……。 「アーサー、聞いてるの!?」 「ああ。聞いてる」 「もう、本当に最悪!二度とあんな夢見せないでよね!」 「……気をつける」 言ったら言ったでややこしい事になりそうなので、アーサーは彼女が落ち着くまでそっとしておく事にする。 プリプリ怒るに、アーサーは話を聞いているフリをしながら相槌をうつが、頭の中では今日の晩御飯を何にしようかと考えていた。 | ||
草薙五城さんへのお誕生日プレゼントに、勝手に書かせていただきました〜。 リクも何も聞かず、思いつくままにアーサー夢です(笑) 乙女度は低いですが、楽しんでいただければなぁ〜と思います。 2009.10.26 Rika | ||
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