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何故こんな事に。はソファに座って、己へと真っ直ぐに視線を向ける人物をちらりと窺い見る。魔晄のような色だとテレビで称されていた瞳からは感情が窺えず、テレビで見るよりも幾分か穏やかなようで、そうでもないような表情からも何も読み取れない。

何か言わないと、何か話さないと、じゃないと彼はこのまま立ちっぱなしだ。話題を考えるが、何も思いつかない。取り敢えず、今やって欲しい事を慌てて考え、朝起きてからまだ何も食べていないし飲んでいない事に気付いたは、喉を潤し心を落ち着ける為、彼に頼む。


「えっと……じゃ、じゃあ、キッチンでコーヒーでも淹れて貰える、で、しょうか……?」
「承知しました」


キッチンはこちらでしょうか? 顔を向け、キッチンの場所を聞く彼に『そうです』と覇気のない返事をする。彼はに背を向けると、長く伸ばした銀髪──ゆるく三つ編みにしていて、歩く度揺れるソレはまるで尻尾のようだ……と思っても、睨まれそうだから絶対に口にする事はない──を揺らしながらキッチンに向かった。

彼の姿が消えてから、取り敢えず長い溜息を吐いて額に手を当てる。視界に入った服の袖を見て、そう言えばまだ自分はパジャマのままだった事に気付いた。しかもノーブラでノーメイク。完全にオフモードで、客人を招くような格好ではない。

いや、彼は客人ではない。家政婦──男だから、ハウスキーパーと言った方がいいだろうか?──で、神羅カンパニーから派遣されて来たのだ。別にが神羅カンパニーに家政婦を派遣してくれと頼んだ訳ではない。

朝、連打されるチャイムの音に叩き起こされ、寝ぼけながら扉を開けると、そこには神羅カンパニーの英雄・セフィロスが立っていた。え、これ夢? と数度瞬きしているに、セフィロスは淡々とした声で自分が何故の家の前に居るのかを説明した。


「神羅カンパニーの商品についている3枚のバーコードを貼って送ると、抽選で1名の方に英雄セフィロスの○○○≠ェ貰えるキャンペーン当選おめでとう御座います」
「……へ?」
「本日より3日間、家政婦として働かせて頂きます、セフィロスです」
「えっ、え、えっ? は? えっ? な、なんで家政婦なんですか!?」
「俺が知るか。……業務命令です」
「一瞬素になった!? 一瞬素になりましたよね!?」
「では、お邪魔します」


──こんな具合で家に入り、そして今が頼んだコーヒーをキッチンで淹れている。てっきり直筆のサインや生写真が貰えるのかと思えば、まさかの本人登場。誰もこんな展開望んでいないし、まず先に当選者の都合を聞いてから訪れるのが普通じゃないかと思っても、既にセフィロスは家の中。盛大にもうひとつ溜息を吐く。

世の女性達同様に、も神羅カンパニーの英雄であるセフィロスに憧れていた。長く美しい銀髪と、不思議な色をした瞳。独占取材で見せた美しい剣筋。喋る声は心地良く、神様が居るとしたら彼に対して随分奮発したな、と思った程だ。

だからキャンペーンを知って応募したのだが、憧れている人がまさかの家政婦。──恐らく、少し前に流行ったドラマ家政婦の日だ≠参考に神羅カンパニーはこの企画を立ち上げたのだろう。

家政婦の日だ≠ヘ、多額の借金を背負っている女性が借金返済の為に家政婦になるのだが、その先々の家で殺人事件が起こり、何故か毎度彼女が第一発見者となって容疑者として疑われ、トリックを暴いて事件を無事解決させるドラマ。

雇われた先にて毎度毎回殺人事件に遭遇している彼女は、履歴書の特技欄に事故物件生産≠ニでも記入出来そうな気がする。

彼女が猛勉強して警察にでもなった日には、配属先が殺人事件ばかり起こる治安の悪い場所になりかねないと思っては見ていた。しかし参考にするべきドラマが何故これなのだ、神羅カンパニー。


「お待たせ致しました。コーヒーです」
「あ、有難う御座います……。セフィロスさんもどうですか?」
「それは業務命令ですか?」
「……えーっと……喉が渇いていたらどうぞ、と言う厚意であって、命令ではないので、飲まなくていいなら別にいいんです……」
「……いえ、頂きます」


きっと神羅カンパニーから、彼が何か命じられた時、『承知しました』か『業務命令ですか?』と言うように言われていたのだろう。相変わらず無表情のセフィロスはの分のコーヒーをテーブルに置くと、キッチンに戻って自分の分を淹れに行く。

もしあのドラマを参考にしていたならば、背後に立つと背負い投げをされるのだろう。ソルジャーの彼に背負い投げされた日には、100m以上飛ぶ可能性がある。怪我ではすまない、下手したら死んでしまう。故に、は絶対にセフィロスの背後には立たないと決意していた。

これから3日間、こんな日が続くのかと思うと、折角の当選でも憂鬱になってしまう。1日で十分なのに、3日間。これまた運がいいのか悪いのか、も丁度3連休。彼が家政婦の仕事をしている間は、一緒に居る事になってしまうのだ。

だったら出掛ければいいじゃないかと思うだろうが、ここ何日間の忙しさを癒す為、は3日間家に引きこもる事に決めていた。どこにも出掛けない、人とも会わない、3日間私はダラけ切るのだと、何があっても決めていた。その為に食料を買い込んで、ゆっくり寝ようと思った朝にこのハプニング。サプライズよりもハプニング。


「所で……」
「うひっ!?」
「驚かせてしまいましたか」
「す、すみません、考え事してたので……。えっと、なんですか?」
「失礼ですが、お名前は様で合っていますか」
「合ってます」
「これから3日間、朝7時から夜の9時までこちらで過ごさせて貰う事になっているのですが、その間様はお仕事に向かわれますか?」


神羅の英雄に敬語を使って話されるのは、何か申し訳ないような、土下座して謝りたいような気分になりつつ、今迄仕事が忙しく、やっと取れた3連休なので3日間ビッシリ家に居て過ごそうと考えていたと説明。

彼は眉をピクリと動かし『そうですか』と立ったままでコーヒーを口に含んだ。2人掛けのソファに座っていたので、『あ、どうぞ』と端に寄って席を勧めると、少しの間の後にの隣に腰を下ろした。


「えっと、それで、家でまったり過ごすんだ! と連休前に決意していたので、私はどこにも出掛ける予定がないのです。……なんか、気を抜けない状況を作ってすみません。なんだったら、私、寝室に引きこもってますけど……?」
「……いえ。どこぞの馬鹿がテレビの影響で思いついたとんでもない企画を遂行すると言う、本来ならばソルジャーの仕事ではないどうでも良い任務を請け負っている以上、放棄する訳にはいきませんので、空気のように扱って下さい」
「…………本当、お仕事お疲れ様です……」


若干愚痴の篭った言葉には同情し、労わりの言葉を掛けてからセフィロスの淹れてくれたコーヒーを取る。安い豆を買っているので、英雄が日頃飲んでいるコーヒーよりも美味しくはないだろう。私なんかが当選して申し訳ないとコーヒーを啜り、ふと、隣に座っているセフィロスを見た。


「あの、敬語外して下さい。なんか、英雄であるセフィロスさんに敬語を使わせているって、土下座して謝罪したくなるので」
「……業務命令ですか?」
「業務命令と言う事で、お願いします」
「承知しました。では、いつもの口調で話させて貰おう」
「その方が気が楽です」


とても、本当に、心の底から。口には出さず続く言葉をコーヒーと共に飲み込んで、は喋り方を崩したセフィロスにほっと息を吐く。朝食はどうする? と隣から聞こえて来て、は即答した。冷蔵庫にスーパーで買った弁当があるから、それを食べると。すると隣から妙な視線と空気が流れて来る。


「……何か?」
「買った弁当? 朝から?」
「3日間まったり過ごす予定だったので、スーパーのお弁当と、カップ麺と、冷凍食品を買い込んであ──」
「却下。3日間、俺が食事を作ろう」
「えっ!? そんな、いいですよ!?」
「良いのか。では楽しみにしておけ」
「や、そっちのいいじゃなくて! そんな手間を掛けて頂かなくても!」
「業務命令ですので」
「……左様で御座いますか」


どうやら当選者の食事も、キチンと作るように言われていたようだ。神羅カンパニーよ、英雄に他にやらせる事あったんじゃないか? は完璧な家政婦を務めようとする彼を見て、つくづく思う。ソルジャーって、意外と暇なんだろうか、と。


「では、朝食の準備を始める。準備が出来なかったから、簡単な物になるが」
「お弁当に比べれば……」
「少し待っていろ」


待っていろ、の時点で命令形なのだが、敬語を外してくれと言ったのは自分だし、こっちの方が彼のイメージにあっている。はお願いします、と朝食の準備に向かうセフィロスを横目で見送りつつ、テレビの電源を入れる。

テレビはニュースを次々と流しているが、どの内容も殆ど平和な物。ウータイとの戦争が終わってそんなに経っていないが、達一般市民にはあまり関係のない話だった。なんせ、神羅カンパニーがあって、ソルジャーや神羅兵がいるから、市民が徴兵される事はない。

まあ、ソルジャーが家政婦の真似事を出来るくらいには平和なのだろう、平和が1番。は1人そう自己完結して、テレビのチャンネルを変えた。





「朝食が出来た。……何を泣いている」
「あっ、有難う御座います。待っている間に、ドキュメンタリーの再放送をやっていて……」


つい見てしまいました、とは鼻をかみ、ゴミ箱にティッシュを捨てる。エンディングとして、音楽に合わせ主人を最期まで守り通し命の灯火を消した犬と、愛犬に守られた主人の思い出の写真を流していた。ああ、と短く呟き、継いだ言葉。


「ジークの所の犬か」
「え?」
「俺の同僚の飼っている犬だ。頭が良くて、人の言う事を聞く。ついでに芝居もする。この番組ではアホっぽそうな顔をしているが、普段はもっと凛々しい顔をしている。与えられた役柄を忠実にこなすと、自慢していたな。ドキュメンタリーに出たと言っていたが、これか」
「まさかのヤラせ!?」


ちょっと待っていろ、と携帯電話を取り出してどこかにメールをする。再現VTRではなく、テレビでは実際の映像と言っていたのに。感動を返せとが項垂れている間、来た返信に写真が2枚添付されていて、セフィロスは携帯を彼女の前に差し出した。

そこに写っていたのは、死んだ筈の忠犬。1枚目は凛々しい顔で、2枚目はテレビに出ていた時の顔。背景は同じで、今撮られた物だと直ぐにわかるが、表情の使い分けが完璧だ。


「私、もう何を信じればいいか……」


ノンフィクションのドキュメンタリーの筈が、まさかのフィクション物だった。視聴率さえとれれば偽っても許される物なのか、と遠い目をしているに、もう1度朝食が出来たと告げてセフィロスはトレーに朝食を乗せて持って来た。このトレーはの家にあったものではないので、きっと持参して来たのだろう。

並べられた朝食は、家にあったパンや卵などで作られた簡単な物。ただの焼いたパンと卵なのに、盛り付けも綺麗にされていて、いつも乱雑において居る自分とは大違いだとは関心する。時々洗うのが面倒で、皿を使わずチラシの上に置く事すらもあるのに。

有難う御座います、と礼を言ってから作って貰った朝食を食べる。パンはそのまま焼いた物の味だが、卵には味がついていて、の口に合った。自分で作るよりも口に合うのは、セフィロスの方が料理が上手で、その上自分と似た好みをしているからだろうか。

思わずふにゃりと顔が緩んで、近くに立って様子を見ているセフィロスに『美味しいです』と感想を伝えると、何故か目を丸くして驚き、『有難う』と礼を言って、ベッドメイクをしてくるとその場を離れた。

なんとなくセフィロスの反応がさっきまでと違う気がして、首を傾げながらパンを齧った時、ははたと気付く。そう言えば、まだ自分はノーブラでノーメイク。ノーメイクはもう今更として、ノーブラ。パジャマは厚手の物で、中に着いるタンクトップがカップ付きなので透ける事はない。

……が、さて、昨日脱いだブラジャーはどこに? 正解は、眠気に勝てず、胸を締め付ける感覚が苦しくて、いつも寝る間際に脱いで片すのだが昨夜は脱衣所まで持っていく気力がなく、明日休みだから良いかと、ついベッドの下にぽーいと投げ捨てた>氛氈B


「あああああ!!! セフィ、セフィロスさん! ちょっ、ちょっと待ってー!!! 見ちゃ駄目ー!!!!」
「これは手洗いか?」
「見る所か、もう持ってる……!! いいです、いいです、遠慮します! 洗濯は自分でしますから、本当……!!!」


憧れの英雄に下着を洗って貰うとか、どんな拷問だ……! はセフィロスの手から下着を奪うと、羞恥から真っ赤な顔をして慌てて洗濯機の置いてある脱衣所へと急ぐ。あそこには忙しさから放置してあった洗濯物がわっさり。勿論下着もある。1枚や2枚ではない。

幾らなんでも、女性ではない家政婦に洗って貰う訳にはいかない。は慌てて洗濯物を洗濯機に突っ込んで洗剤を入れ、回し始める。色柄物と白物も下着も混ざっているが、そんな事を言っている場合ではなかった。彼女的に。


「上からの業務命令です。だから気にしなくていい」
「そこだけ敬語なんですね……。気にするなと言っても、気になりますよ……」
「では、トイレ掃除でもしてくるか」
「トイレ掃除もいいです、遠慮します! 洗濯とトイレ掃除は、お願いですから本気で止めて下さい! 業務命令です!!」


もはや半泣きの状態では頼み込む。幾ら上からの業務命令で色々やるように言われていたとしても、女性として触れて欲しくない部分は色々ある。そこの所もちゃんと教育しておけよ、神羅カンパニー!

もし今回の当選者の感想を聞きたいと言う事があるならば、そこをきっちり説明してやろう。もし次があるなら、これ以上自分のような精神的な被害者を出さないように。──と言うより、家政婦サービスはこれきりにした方が良いと助言しよう。はそう心に決めつつ、途中だった食事に戻った。




◇   ◇   ◇





、風呂が沸いた。入れ。上がったら夕飯にする」
「有難う、セフィロス」


最終日の夕方頃、セフィロスは風呂のお湯を止めてリビングのソファにてゴロゴロしているに声を掛けた。夕飯はいつも風呂の後。初日の昼から一緒にとり始めた食事は、これが最後となる。

3日間、思えば長いようで短かった。時間を長く感じたのは、初日の半日程だけだったかも知れない。終わってしまう関係に寂しさを覚える。しかし偶然引き当てたセフィロスを家政婦に出来ると言う特権故に、こうして色々と語り合う事も出来た。

ソルジャーの仕事の大変さ、味の好み、テレビ番組の好みなど、普通ならば直接聞く事が出来ないだろう話も沢山聞けた。も色々と話したが、それも今日で終わり。明日からは、またニュースでセフィロスの姿を見る事になるだろう。隣に居て、隣から声が聞こえて、なんて事は恐らくもう2度とない。

セフィロスが洗った湯船で鼻の辺りまで浸かり、明日からの1人の時間に息を吐くと、ボコボコと泡になって消える。だが明日から仕事も始まるから、少しは寂しさは紛れる筈。3日間、良い夢を見せて貰ったと思って感謝しようと風呂から上がり、タオルで水気を拭いてパジャマを纏う。

髪は濡れたまま、タオルでぐるりと包んで風呂場から出ると、に気付いたセフィロスが近づき、タオルを解いて丁寧に水気を取ってくれる。自分でやる時よりも丁寧な拭い方。


「明日からセフィロスはもう居ないんだね。寂しいね」
「……そうだな。だがこの3日間、中々悪くなかった」
「ソルジャー辞めても、家政婦出来そうな仕事っぷりだった」
「考えておこう」


くつりと笑い、もういいぞ、とタオルを脱衣所に持っていく。夕飯の支度はすっかり整っていて、はソファに腰掛けてセフィロスを待った。テーブルに並ぶ夕食は、最後だからだろうか、昨日よりも豪勢になっている。

リビングに戻って来るとソファに腰を下ろし、作った献立の説明をひとつひとつ行っていく。マメな人だな、と思いながらはそれを聞き、途中で目を閉じてセフィロスの声に集中する。テレビ越しに聞く声ではなく、隣から直に聞く声を忘れないようにする為に。


「食べる前に寝るな」
「寝てないよ」
「……どうぞ召し上がれ」
「うん。頂きます」


セフィロスの作る食事は、全て美味しかった。これももう2度と食べられないのだろう。味わってゆっくり食べなければ。はいつもより食べるペースを遅くし、一口一口を味わって食べる。彼の手料理の味を忘れないように。

のそんな様子に気付いていながらセフィロスは何も言わず、彼女のペースに合わせて食事を進めていた。初日や2日目の食事の時とは違い、静かな夕食。テレビを付ける事もなく、互いが触れ合う程近くに居ると言う空気だけを感じながら。





時計の針は、9時を少し過ぎた所を指している。2人は今、玄関に居た。セフィロスの家政婦の仕事は、9時で終わっている。明日からは顔を合わせる事なく、それぞれの仕事に戻るのだ。

セフィロスを見送るのも、これで最後。は背の高い彼を見上げ、3日間有難う御座いました、と頭を下げる。礼に口角を上げ、『業務命令ですから』といつものセリフを口にする。

しかし見返して来るの瞳には、初日の半日後以降このセリフを言った時に浮かべる楽しげな目はなく、どこか寂しさを感じさせる視線だけが送られて来た。


「もう会う事はないけど、応援してるから」
?」
「3日間、本当に有難う。とても楽しかった」


礼と共に告げられた言葉に、セフィロスは彼女の言葉に込められた意味に気付いて小さく息を吐く。はっきり言っていない自分も悪かったかと反省し、俯き加減になってしまったの頭にポンと手を乗せると、髪が乱れるのを気にせず彼女の頭を撫でた。

それに目を丸くしたは、そろそろと顔を上げると、2日目から見るようになった柔らかい笑みに首を傾げる。何故そんな穏やかな顔をして自分を見つめて来るのか、もう2度と会えないのに。浮かぶ疑問は、直ぐに解決された。


「家政婦として俺がここに来る事は、もうない」
「うん……」
「だが、俺≠ェここに来る事に、何か問題があるか?」
「……うん?」
「明日は、お前が夕飯を作れ。そうだな……仕事が終わり次第、連絡を入れる。携帯の番号は?」
「へ? え、あ、え?」


突然言われた言葉に理解が追いつかず、携帯の番号は? と聞かれたので、慌てて携帯を取りにリビングに戻る。携帯はテレビ台の上に放置してあり、それを掴んで玄関に行くと、の手から携帯が奪われ、の携帯でどこかに電話を掛けている。どこに掛けたのか、それはセフィロスの携帯が鳴った事で直ぐにわかった。


「出ない時は、留守電にメッセージを入れておいてくれ。メールアドレスは明日教える」


が言葉を理解しきる前に話は終わり、ちゃんと鍵を掛けて寝るんだぞ、とセフィロスは扉の向こうに消えて行く。おやすみ、と挨拶を残して。もおやすみ、とは言ったが、まだ頭が先程の会話の意味を噛み砕いてはくれない。

セフィロスは、家政婦としてここに来る事はないと言っていた。だから、それはもう2度と会う事がないと言う意味だと思っていた。しかし、明日はが夕食を作り、セフィロスがそれを食べに来る。つまり、家政婦期間の終了が全ての終わりと言う事ではなく、セフィロスはこれから先も友人として付き合いを続けてくれる。

それに気付き、3日間の夢の終わりが、意外な形での始まりとなった事を理解したは緩む表情を抑えられず、完全に眠りに落ちるまで、にやついた顔は戻る事はなかった──。




●Rikaさん、HAPPY BIRTHDAY!● お誕生日おめでとう御座います!
お祝いしたいと言う気持ちが抑えきれず、押し付けるように贈らせて頂きます……!
家政婦がブームだったので、セフィロスを家政婦にしてみました。
書いた後で、なんでセフィロスの家の家政婦にしなかったのだろうとも思ったんですが……後のカーニバルでした(笑)
宜しければ、お受け取り下さいませ……!

2012/01/15 草薙 五城


五城さんより、2012年の誕生日プレゼントにいただきましたー!
感想はメールでさせていただきましたので、こちらでは割愛で。
五城さん、素敵な夢をどうもありがとうございます!!
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