小説目次 | ||
09.01/15
Happy Birthday to Rika! 辺りには死臭が漂い、倒されたばかりのモンスターは少し痙攣した後で命の灯火を消した。 先頭を歩くセフィロスと、その後ろを歩く。 の後ろには部下が数十人並んで歩いている。 部下を率いての戦闘は慣れた物で、大して強くも無いモンスターを相手に剣を奮う。 視界に入る長い銀髪が一定の横揺れで眠気を誘うが、欠伸を噛み殺して後を付いて歩く。 ミッドガル付近にモンスターの巣が出来た報告を受け、住民の被害者が出る前に討伐。 モンスターだって生きているのに、被害が出る前に駆除するなんて、人間は傲慢だ。 自分も青い頃はそう考えた物だが、慣れてしまうと考える事すらなくなる。 「そろそろ、到着する。気を引き締めろ」 「イエス・サー」 「・・・・・・欠伸をしていただろう、先程」 「気の責です」 セフィロスのジト目から視線を反らし、『ほれ、さっさと歩け』と言わんばかりに前を指す。 注意する事を諦めたのか、セフィロスは前に視線を戻して足を進める。 そこから少し歩いた先で、彼の気配が変わった。 数キロ先に、巨大なモンスター。 岩の塊が集まったようなソレに、前を歩く彼の表情を見ようと足を速めて隣に立てば、真剣な眼差しの中に少しの喜び。 見た事ないのモンスターが居て、嬉しいんだね。 でも後ろに部下が居るから、大喜び出来ないんだよね。 ポケットの中に入ってる携帯、何時写メ撮ろうかと、出すタイミング計ってるんだね。 新しいモノ、大好きだもんね。 TVで流れる新商品も、我先にと買って来るもんね。 新商品の痔の薬買って来た時には、正直『アホか、コイツ』と思ったけどね。 でもその後で、会社の椅子が壊れて尻に部品突き刺さった時に、重宝したよね。 あの時の君は、まさか椅子にカンチョーされるなんて思ってなかったんだろうね。 私も思ってなかったさ。目の前で、尻を抑えて涙目になってる君を見るまでは。 一緒に暮らしていると、どうしても相手の妙な部分まで見てしまう。 だが、新商品が好きで、見ると買って来る、と言うのはまだ可愛い方だろう。そう言う人間は、沢山居る。 実際だって、期間限定物に弱くて、お菓子の限定物を見るとつい買ってしまう。 セフィロスの場合は、それがモンスターでも適用されるだけの話。 「写メなら、気付かれる前にね」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・撮らん」 「撮っとけ撮っとけ。じゃないと、他の場所でジェネシスがあのモンスターに遭遇したら、絶対見せて来るって」 「・・・・・・少し待っていてくれ。決行時は、空にファイアを放つ」 「ラジャ。セフィロスが様子を見に向かう!その間、全員ここで待機!」 聞こえない様に会話をし、セフィロスを見ると行きたそうな顔。 自分が言うまで絶対奴は動かないと背中を押してやり、部下に待機命令。 足を止め、それぞれ辺りを警戒しながら、木陰に隠れて暫くの休憩。 セフィロスは自分達を残して、近距離で写真を撮ろうと1人向かって行った。 待機の間、は空にファイアが放たれたら行動開始だと仲間に告げ、行動の時を待った。 5分、10分と時間が過ぎ、随分遅いと思い木の影からセフィロスの様子を窺う。 見れば、既に彼は戦っているではないか。 「ちょ、なに勝手に1人で戦ってんの!?全員、出撃!!」 慌てて全員がセフィロスの加勢に向かう。 彼1人でも大丈夫だろうが、如何せん相手がでかい。 森に音を吸収されたのか、戦闘の音は全く聞こえなかった。 自分の失態に舌打ちしながらは走っているが、彼女達が到着する前に、セフィロスはモンスターを倒したらしい。 ズン・・・・・・と地鳴りがし、モンスターが倒れた。 よかった、1人でも大丈夫だったんだ。 安心したと部下達は、走る速度を落とす。 セフィロスは倒し終わった後で、こちらに向かって歩き始めた。 ───が。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・なに、してると思う?」 「・・・・・・さあ?」 丁度隣にいた部下に、指しながら問い掛けるが、彼も『わかりません』と言った表情。 セフィロスと一緒に暮らしている自分だってわからないのだから、彼もわからないだろう。 なんせ、セフィロスは、以前流行したウォーキングフォームで歩いているのだから。 俗に言う、ウォーキングエクササイズ。両手を上に上げて、シュシュと言いながら歩く、アレ。 それを、何故、今、やっているのか。 体を捩じりながら歩いてくるセフィロスに、部下だけではなくの顔も引き攣る。 途中までそのエクササイズで歩き、今度は何を思ったか、体を地面にベタリと付けて、匍匐前進。 そう、匍匐前進なのに。 「やたら速ェェ!!!」 サカサカサカサカと移動するセフィロス。 軍で習うその移動手段は、尤も素早さがない移動手段。 なのに、彼の移動速度は半端ではなく速い。 こちらに向かって来るセフィロスが怖くて、逃げ出す部下。 1人逃げ出すと、集団心理と言う物だろうか、次々に逃げ出す部下達。 いや、部下だけではなくて、も逃げてしまう。恋人なのに、逃げてしまう。 「いやー!!怖い、怖いって、セフィロス!!!」 悲鳴を上げながら逃げるが後ろを振り返ると、今度は政宗を持ったままで腰に手を当て、スキップして追いかけて来るではないか。 足取り軽やかなのに、無表情なのが物凄く恐ろしい。 鼻歌でも歌えそうな足取りなのに無表情だなんて、どれだけ顔の筋肉使ってないんですか、セフィロスさん。 涙目になりながら逃げる達だが、セフィロスはスキップのままで最後尾を走るを追い抜き、ついには先頭の人間も追い抜いた。 そして、先頭から数メートル離れた所で政宗をポイと捨て、足を開いて中腰になると、両手を交互に突き出して前進を始める。 「っ!!!!」 どすこい、どすこいと言う掛け声と共に、部下が1人、2人と飛んでいく。 勢いのついた部下は足を止める事が出来ず、セフィロスに突っ込んで行き、彼の張り手で飛ばされた。 そう言えば先日、スモウレスラーなる格闘家が出てる番組を見ていたなぁ。 遠い目をしながらそれを思い出し、走る勢いをなんとか殺してセフィロスを回避。 部下が全て地面に落ち、は慌てて全体化のマテリアをつけたケアルガで回復。 これで死ぬ事はないだろうと部下を見てから、中腰の体勢から戻ったセフィロスの背中を見た。 す、と視線がに向かい、ビクリと体を強張らせる。 彼は先程の視線のように、自然に体を戦闘体勢に。 いつもの政宗の構えではなく(先程、ポイと捨てていたから、手元にはない)拳での戦闘体勢。 体を前後に揺らした彼の次の行動。 それがには嫌でもわかってしまう。 右手で鼻を擦って、 「ほぁちゃぁ!」 甲高い声を出すんだね。 映画の影響を、受けすぎだよセフィロス。 キャラ、壊れすぎだよ、セフィロス。 どうやって止めていいのか、わからないよ、セフィロス。 思わず涙を流しそうになるが、このままだと自分も危ない。 状況をきちんと把握しなければと、は冷静にセフィロスを見た。 見ているだけで、本気で泣きそうになるけれども、きちんと視線を向けた。 「・・・・・・あれ?」 目は据わって居るが、時々視線がブレ、しかも意識が混濁しているように見える。 セフィロスは戦闘の時、あんな風に目線をブレさせる事はない。 もしや、幾度となく仲間内で見た事のある光景を、まさか彼が? コンフュで混乱したと言うのか、あの英雄が。 油断していなければ、掛かる事はないだろう混乱に、恐らく彼は写メを撮っている時にコンフュを掛けられたのだと予想する。 だったらあの奇怪な行動も理解出来た。混乱の末の奇行。良かった、セフィロスはコンフュに掛かっているだけで、壊れてはいなかった。 ───しかし彼が壊れていななったからとて、一体あの状態の彼をどうやって正気に戻せばいいのか。 エスナのマテリアは持って居ない。回復マテリアならあるが、治療マテリアはセフィロスが持っている為、持ち合わせてはいなかった。 万能薬を使おうにも、今の状態でセフィロスが飲んでくれる気もしない。 仕方ない、一発ぶちかますか。 しかし、どうやって? 今の状態で掛かっていけば、先週休日に見た古い映画の武術のように、ボコボコにされてしまうだろう。 自分が恋人だとわかっていて、今、奴は構えているのだろうか。 もしそうならちょっと関係考え直そうかな、等と考えながら、思い出した1つの映画。 その格闘映画を見た翌日の夕食時。 御誂え向きにも、傭兵と魔女の戦いを描いた恋愛映画があったではないか! 「セフィロス!」 「ふぁちゃぁ!!」 「魔女でも・・・・・・いいの?」 少し首を傾げて不安げに聞いてみると、彼はその映画を思い出したのか、構えを解いた。 そして、両手を広げて自分を迎えようとしている。 映画のヒロインを思い出し、セフィロスに向かって走る。 彼の体に自分を預け、だが腰を引かせたままで上半身だけを彼に預ける形に。 それに気が付かず、そっとセフィロスの右手がの髪を梳いた。 「魔女でも、い───ぐふぉぁ!!!!」 抱きつく時に、背中に腕を回すのではなく、彼の肩に手を置いた。 そんなセフィロスの腹部に、の膝蹴りが見事に決まる。 セフィロスの肩を掴んで一気に自分の体を持ち上げ、右膝を決めたのだ。 ヨロリと体がよろけたが、その一発で正気に戻ったのか、セフィロスは腹部を押さえながら前屈みになったままでを見る。 「俺は、一体・・・・・・何を、していた?」 色々してくれていましたさ。 その言葉を飲み込み、セフィロス正気に戻った事でどっと疲れが出て、はしゃがみ込んだ。 今度からは、治療のマテリアも持つとしよう。 そう思いながら盛大な溜息を吐くと、一連の行動がコンフュによる物だとわかり、彼女に同情的な目を向ける部下を見て、首を傾げるしかないセフィロスだった・・・・・・。 | ||
● Happy Birthday! to Rika様 ● お誕生日おめでとう御座います! いつもいつも、素敵な萌えと、腹筋が痛くなるような笑いを提供して頂き、感謝で一杯です。 これからも、素敵なRikaさんのままで居て下さい。 09.01/15 草薙 五城 草薙五城さんから、誕生日プレゼントにいただきました〜! コンフュなセフィロスに、惚・れ・な・お・し・ま・し・た! 五城さんのサイトへはリンクページより行けます。 2009.01.15 Rika |
||
小説目次 |