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■■ Rika様 Happy Birthday! ■■






ミッドガル零番街に聳え立つ、不夜城と言う名に相応しい神羅ビル。
このビルの持ち主・プレジデント=神羅の息子であるルーファウス=神羅。
金髪碧眼、整った顔立ち、頭も良くて大金持ち。天は彼に二物も三物も与えた。
だが、彼には人間として1番重要な物が与えられていない気がする。
そう、それは───性格

「恋人としての誕生日を祝う為に迎えに来た。喜びたまえ」

早過ぎるだろう、この馬鹿ボンが。
時計は午前5時半を指している。ベッドの中、気持ち良く夢の中だったのに。
誕生日を祝ってくれるのは嬉しいよ、嬉しいさ!嬉しいけど、アホですか?
この早い時間に、一体どこの店が開いてると言うんですか。
以前プレゼントされたソファに腰掛け笑みを浮かべながら言う彼の為に、これまた彼からプレゼントされたコーヒーメーカーで最高級のコーヒーを淹れながら言葉をグッと飲み込んだ。
この部屋にある調度品や家具は殆ど彼から送られた物。
初めて家に来た時、スラムにある100ギルショップで買い揃えた物を見た瞬間、携帯電話を取り出してどこかに電話を掛け、数十分後にタークスのツォンさんがダンボール2個分にもなる調度品を持ってきて、全て入れ替えて去って行った。
ツォンさん、ご苦労様です。

「どーぞ」
「ああ、有り難う」

コーヒーを飲む姿は格好いいのに、この人なんでこんなにアホなんだろう。
いや、頭はいいんです、頭はいいんです。
私に比べれば、もう素晴らしく頭はいいんですよ!
頭の使い方が間違っているだけで。

「さあ、早く用意したまえ。出掛けるぞ」
「出掛ける?どこに・・・」
「まずは朝食だ」

寝起きに何食わされるんだろ、私。
流石に朝食に最高級ステーキとかは勘弁願いたいな。
そう思いながら、モソモソと用意を始める。
ここでジャージとかに着替えたらすっごい嫌そうな顔するんだろうな、と思いつつ前に彼から貰ったワンピースドレスを身に纏う。そして着てからまだ顔も歯も磨いていない事に気が付いて、そのまま洗面所に向かった。
服が濡れないように昨日着ていたシャツを上から着て顔を洗い、歯を磨いて髪をセットする。

「用意、出来ました」
「───ッ!?・・・・ああ」

お前、寝てただろ。
寝てたよな?
人に用意させときながら、寝てんじゃねぇよ!!
心の中で盛大に突っ込みを入れるが口には出さず、ルーファウスと共にそのまま家を出る。
外で待っていた車には、運転席にタークスのレノが乗って居た───が、ハンドルを抱えるようにして寝ている。

「・・・・・可哀想に」
「起きろ、レノ」
「んぁ?!あ、ああ、おはようさんだぞ、と」
「お早う御座います。すみません、なんかもう」

思わず自分が謝ってしまうと、彼は手を上げて振る。
『あんたの責じゃないぞ』と言っているのだろう。
こんな朝早くから扱使われるタークス、大変ですね。
車に乗り込むと、そのまま神羅ビルに。
神羅ビルに入ってヘリポートに向かい、そこからヘリでジュノンへと飛び立った。

「新鮮な野菜と魚貝類を使ったパスタを用意させている」
「うわー、嬉しいー」
「・・・・酷く感情が篭っていなかったのは気の責か?」
「寝起きだからよ」

ステーキじゃなくて良かったと心から思いながらも、パスタを食べる為にミッドガルからジュノンへ移動する事もなかったのではないか?と思う。別にファーストフードのハンバーガーでも良かったんだけど、そう言えばきっとレストランの高級なハンバーガーを食べに連れて行かれるのだろう。
ジュノンのヘリポートに着くと、そのままレストランに連れて行かれた。
レストランでは朝早くからバタバタと人が動き回っていて、1歩店内に入ると店の支配人らしき男が席に案内してくれた。
時計はまだ6時20分を指している。店の人も可哀想に・・・。
案内された席はジュノンの海が一望出来る席。
ルーファウスにエスコートされ、席に着いて海を眺める。
キラキラと朝陽を反射する海は非常に美しく、寝不足の目に沁みた。
シェフが持って来てくれたパスタを食べつつ、ルーファウスと話しながらの朝食。
遠くのテーブルでレノが突っ伏して眠っているのが見える。
食事を終えると、彼が先に立って会計を済ませに行った。

「レノさん、レノさん、行くみたいですよ」
「んー・・・・ふぁ・・・」
「寝不足ですか?私もです」
「あー。まあ、副社長も必死なんだぞ、と」

言っている意味がわからない。
寝不足なのかと言う問いかけに、ルーファウスも必死だ、と言う彼。
ルーファウスが一体何に必死なのか。
そもそも必死なルーファウスなんて見た事がない。彼が必死になっている姿も想像が付かない。

「愛されてるな、
「・・・?」

クシャ、とレノに頭を撫でられ、彼は伸びをしながら先を歩く。
やはり意味がわからないままだと思いながら、はレノの後をトボトボと追いかける。
今度はどこに連れて行かれるのかと思えば、ヘリでミッドガルに戻るそうだ。
本当に朝食の為だけだったと、は遠くなって行くジュノンを見た。


ミッドガルに戻ったら、映画館貸切で私が以前から見たいと思っていた映画を2本続けて見せてくれて(尻が痺れました)
玄関にあったブーツが少し傷ついていたと、新しい物を数足買ってくれて(ついでに他の靴も買ってくれました)
服も色々買ってくれちゃって(今月ピンチだったから、凄い嬉しかったけども)
普通の恋人らしいデートではなかったけども、ルーファウスがきちんと自分を見ているんだな、と言うのがわかった。
楽しい時間はあっと言う間で、既に時計は午後8時。
ミッドガルで1番高いとされているレストランに連れて行かれ、そこでディナー。
ワインを開け、グラスを傾けて乾杯。

「今日は、有り難う」
「いや・・・・楽しかったか?」
「うん」

起きる時間は早過ぎだったけどね、そう思いながらワインを一口。
嬉しそうに細められたルーファウスの目に、ドキリと心臓が強く鳴る。
自信満々の笑みを浮かべたり、嘲笑する事はあっても、あまり嬉しそうに笑う事などない。
自分と付き合いたいと告白された時も、神羅カンパニーの副社長で断ったら殺されそうだったからと言う失礼な理由で受け入れた。それを彼が知っているかどうかは微妙だが(聡い人だから、気が付いている可能性だってある)

「レノとは何を話していたんだ?」
「レノさんと?」
「ジュノンで、だ」

何か話したっけ?
ナイフを動かす手を止めて考える。
そう言えば何かを話したような、話していないような・・・。

「あ、ルーファウスが必死になっている所を想像出来ないような話?」
「・・・・わからんな」
「必死になってるルーファウスを見た事がないって言う話───じゃないや。それは私の頭の中で考えていた事で口には出してない」
「・・・まあ、あまり必死になるなんて事はないがな」
「レノさんが『副社長も必死なんだぞ』って言ってたんだ」

その言葉に一瞬目を開いて、少し視線を外してから自分を見直した。
今の間って、何?そう思いながらナイフを動かして肉を食べやすいサイズに切り、口に放り込む。

「そうだな、確かに・・・必死だな」
「え?何に?」
君の心を落とすのに

噛み砕いた肉をルーファウスの顔にぶちまける所でした。
なんとかそれを留めて飲み込み、動揺を悟られぬよう軽く小首を傾げて見せる。

「気が付いていないと思ったか?」
「微妙だな、と思ってた」
「そうか。だが、私にはどうでもよかったんだ。が傍に居る、傍に居てもいい位置に私が居るなら、と」

ワインを一口飲んで、彼は青色の瞳で自分をじっと見据える。
ここまで黙って見詰められたのは初めてだった責か、心臓が徐々に高鳴って来た。

「人間は欲深い物だ。今度は君の心が欲しくなった」

盛大に溜息を吐いて、前髪を掻き揚げる。
レノの言っていた意味が徐々にわかり始めた。
必死になっているのは、自分を落とす事。

「長期戦は覚悟の上だ」

覚悟を決めるのは、今度はこちらの番か。
は彼の表情と強い言葉にそう思いながら、最後の肉を口に入れた。
今現在の心臓の状況を考えると、長期戦とまではいきそうもないけれど、彼がここまで言ってるのだからそれは黙っておこう。少し意地の悪い事を考えつつ『デザートは何かな』と口元を拭うの瞳には、強気な笑みを浮かべるルーファウスが映っていた。






Rika様へ捧げます

お誕生日夢としてRika様に捧げます、ルーファウス夢です。
Rika様には誕生日に素敵8班夢を頂いたり、アーサーのイラストを頂いたりと大変お世話になりました!
そのお返しにと思ったのですが、恩を仇で返すような出来栄えとなってしまいました;
ルーファウスが思った以上に勝手に動いて下さって、もう、流石副社長です。
Rika様の作品の足元にも及びませんが、宜しければお受け取り下さいませ!

08.01/14 草薙 五城

草薙五城様から、誕生日プレゼントにいただいた、ルーファウス夢でした!
頭が良いのにアホで、必死なのに微妙に空回り。でも抑えるところはしっかり抑えている憎くてカッコイイルーファウスに、Rikaさんはフォーリンラブですよ。
こんな素敵な夢をいただけるなんて、感無量でございます!
五城様、どうもありがとうございます!!
そんな素敵な五城様のサイトリンクページより行けます。
2008.01.15 Rika
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