小説目次 
木羽の体内から魔獣鬼の細胞が消え去って数ヶ月。
kkkビルの地下で、ある女が妙な薬を作っていた。
ボコボコと音を鳴らす三角フラスコ内の薬。
何度彼に薬を盛っても、どんな薬を盛っても変化が見られなかった。
だがこの薬ならばきっとイケる!野望を抱き、彼女はその薬が冷えるのを待った。





「一体どうしたら、こうなるんだ」

会議室で、木羽 豹馬は誰ともなく話し掛ける。
その声には疲れが混じっていた。
木羽がいつも座って居る上座ではなく、他の班長の席。
丁度木羽から見て右側。1班班長である三蔵の席に座って居る。

「大方予想はつくだろ」
「まあな」
「面倒な事になった」
「・・・・・・自分と喋るっつーのは、不思議な感覚だな」

自分と喋る、でお気づきになっただろうか。
木羽は、今自分と喋っている。
しかも、その“自分”に該当する人間は、1人ではない。
会議室には、8人の木羽。
1班から8班の班長達の席に、それぞれ木羽が8人座って居る。
傍から見れば、非常に奇妙で不可思議で気持ちの悪い現象とも言えるだろう。
原因はわかっている。開発班のハロルド=ベルセリオス。
彼女はいつもよくわからない薬を鬼狩りの面々に盛っては楽しんでいた。今回もそうなのだろう。
前までは魔獣鬼の細胞の責で薬が効かなかったのだが、今は違う。
薬が切れるまでここで待機する事にした彼等。

「なんっつーか、あれだな」
「あ?」
「せめて、区別出来るようにしないか?」
「髪の色でも変えるか」
「三蔵の席に座ってる俺は、そのまま緑にしておけ。2班から、順番に色変えろ」
「そうするか」

2班班長の席に座って居る木羽は呪を使って、髪を赤にする。
3班は銀、4班は黒、5班は茶色、6班は青、7班は金髪、8班はミルキーピンク。
過去に木羽が染めた色ばかり。
だが、全員の視線が8班班長の席に座るミルキーピンクの木羽に視線を送った。

「懐かしいが、15、6だから許される色だな」
「28、9にもなった男がする色じゃねぇのは確かだ」

確かに30手前の男がミルキーピンクの頭をしていたら、流石に引く。
そう思いながらそれぞれが適当に時間を潰そうとした時。
ガチャリ、と会議室の扉が開き、そこにはクラウドと
一斉に8人の木羽の視線を受け、硬直するとクラウド。
大勢の木羽の視線に耐えられず、が思わず勢いよく扉を閉めた。

・・・・・・・・・なんか居た、なんか居た、なんか居た、なんか居た!しかもいっぱい!
「き、気の責だろ?機関長が増殖する筈なんかない。きっと、きっと皆が機関長のコスプレしてるんだ」
「だ、だよねー?見間違いだよねー?なーんだ、驚いて損しちゃったぁ!」

扉に額を当て、ブツブツ言っている
クラウドは硬直から解け、『気の責だ、見間違いだ』と言うのだが、2人揃っての見間違いなどある筈がない。
2人は深呼吸をし、顔を見合わせて頷いてからゆっくりとドアを開く。

「「「「「「「 いらっしゃいませー 」」」」」」」
「「 出たーーーーーー!!ドッペルゲンガーーーー!! 」」
「んなワケないだろ。入るならさっさと入れ」

呆れたように1番近くに居たクラウドの席に座って居る金髪の木羽が言う。
2人はビクビクしながら中に入ると、1人1人顔を確かめる。髪の色は違うが、皆木羽。皆同じ顔。

「なんて言うか・・・・・・」
「怖い」
「・・・・・・、素直過ぎる」
「だって、怖いものは怖い」

クラウドの背中に隠れて8人の木羽を見る
言葉を選ぼうとしていたのに、が台無しにしてしまった。
一体何があったのか聞こうと思うが、どの木羽に話し掛けていいのか戸惑うクラウド。
取り敢えず、緑のをオリジナルと言う事にして、クラウドは彼を見る。

「一体何があったんですか?」
「ハロルドに薬を盛られたらしい。起きたら分裂していた」
「それは・・・・・・ご愁傷様です」
「区別が付きやすいように、髪の色を変えてみた」
「いい年した男がミルキーピンクってのも、どうなんですか?」

がクラウドの背中からミルキーピンク(以下・桃木羽)に言う。
クラウドは隣で『なんと言う事を』と言う視線をに送っているが、彼女は気付かない。
桃木羽は軽く微笑んで立ち上がってから、の元に向かう。
怖がる彼女の腕を掴んで自分の元に引っ張ると、両手で頬を挟んでグリグリと揉み始めた。

「わかっていても、人に言われるとムカッと来るもんだよな、
「うぎーーー!!」

ムニムニムニムニムニ。
頬をひたすら揉まれると、それを同情的な目で見ているクラウド。
どうして言う前に一瞬でもいいから考えないのか。そう思いながらも、助け舟は出さない。

「で、お前等はここに何しに来たんだ?」

赤い髪の木羽こと、赤木羽がクラウドに問い掛ける。
そう言えばと、思い出したようにクラウドは鞄の中からビニール袋を出す。
そこにはシュレッダーに掛けられた書類らしきもの。

「なんだ、それは」
「書類です。機関長に“戻来”で元の形に戻して貰おうと思って」
「あ?」
「部屋に行っても居なかったし、ココかと思って来てみたら機関長が増殖してた
「・・・・・・聞くが、なんの書類だ?」
「医療班からの定期検診のお報せです。去年の日付けになってたんで、シュレッダーに掛けちゃったらしくて」
「ああ、成程。んじゃ、今回はお前は悪くはない、と」

銀木羽がニヤリとクラウドを見て、彼は思わず体を引かせる。
その細切れになった書類をに渡せ、と言う銀木羽。

、お前の好みの俺に渡して、直して貰え」

銀木羽が何を考えたのか直ぐに理解した青木羽は(本人だから当然だが)笑いながら言う。
桃木羽からやっと解放されてクラウドから書類の細切れを受け取ると、全員の顔を見回す。
好みの、と言われても、全てが同じ木羽で髪の色が違うだけだ。

(赤いいな、暖かそうで。銀・・・・・・セフィロスさんと被るよね。
 黒、きっと地毛は黒だろうけど・・・・・・茶色、まあ、普通かな。
 青は寒そうだな・・・金の木羽さん、まぶしい。ミルキーピンクは、ない。ありえない)

袋をギュ、と握り締め、は歩いて行く。
やっぱり、この人にはこの色が似合う。

「これ、直して下さい」

袋を差し出されたのは、緑の木羽。
そう、いつもの彼の色。

「俺でいいのか?」
「この色の木羽さんが、いいんです」
「そうか」

木羽は書類の入ったビニール袋を受け取ると、それを机の上に出して呪で戻す。
1枚の書類に戻り、それをに渡す。

「有り難う御座います!」
「さて、暇だからゲームでもするか」
「へ?」

緑の木羽がそう言い、は書類を見ていた視線を木羽に向ける。
楽しげに笑う彼。頭に“?”を浮かべながら他の面々を見ると、彼等も緑の色に戻している。
直後、木羽が一列に並び、『さて、書類を直したのはどの俺だ?』と問い掛けて来た。

「え、えーーーー!?」
「当たるまで、帰さないぜ?」
「ちょ、8人も居たら違いがわからない!」

困ると、で遊ぶ木羽。
クラウドは壁に寄りかかり、そう言えばドラクエ4のアリーナの章・闘技場でこんな戦いもあったなーとボンヤリ考えつつ、に付き合ってやる事にした。
結局、は木羽を見つけられず、薬の効果が切れて木羽が1人に戻るまで遊ばれ続けた。




Rikaへ捧げます
木羽の素敵イラストを、有難う御座いました!
Rikaさんのサイトの木羽のページにあった、木羽レンジャー。
話にしたら、どんな感じかと思って書いてみました。
本当は彼等をkkkの中でバラバラに行動させ、それぞれに悪戯でも仕出かそうかと思ったんですが、被害者が多数になりそうだったので、敢えてクラウドと夢主さんに被害者になって貰いました(笑)
ここにセフィロスも入れて、扉を開いた瞬間彼が後ろに飛びのく姿も書いてみようかと思ったんですが・・・・・・収集がつかなくなりそうだったので、セフィロスの登場がなしに・・・・・・(笑)
宜しければ、お受け取り下さいませ!
08.06/01 草薙 五城

草薙五城様よりいただいちゃいました〜!
木羽さんが沢山いる会議室、是非入ってみたいです。うん、その後どうなるかはわからないけど、入ってみたいです(笑)
この薬でセフィロスが2人、セフィロスが3人、セフィロスが4人・・・パラダイス!
五城さん、素敵な夢をどうもありがとうございます!!

五城さんのサイトへはリンクページより行けます。

2008.06.04 Rika
小説目次